シルエットと機能を極め、純正を凌駕するカスタムソフテイル

近年の日本のカスタムシーンにおいて、独自のソフテイルフレームで最も大きな功績を残したといえるのが、「シュアショット」製作の〝DST〟。「ダイナ・ソフテイル」を意味するマシンネームの通り、エボリューションのダイナをベースとしたフルスクラッチだが、そこには純正のソフテイルフレームでは実現しえないカスタムトリックが隠されている。

ダイナをベースにしたオリジナルソフテイル

カスタムのコンセプトは、現代のカスタムベースの主流となるヴィンテージハーレーと比べ、ハイパフォーマンスなエボリューションエンジンでサス付きのリジッドシルエットを作るということ。さらに、シュアショットの象徴的なスタイルであるナローかつシャープなフォルムを、機能を犠牲にすることなく作り上げることである。

純正のソフテイルを使うのではなく、なぜにダイナベース? と考えるのが普通だが、細さとスイングアームのサスペンション機能を軸に考えた時にダイナベースに辿り着いたのだ。まず、ピボット位置がミッションケースにつくダイナフレームは、ソフテイルフレームに比べてピボットが前側にあるためスイングアームを長く取ることができ、サスペンション機能を活かしやすいというメリット。さらに、リジッドフレームをモチーフとしたソフテイルフレームの三角形のスイングアームは、必ずスプロケット/チェーンラインの外側にスイングアームがあるが、プロアームを採用することにより、チェーンラインを跨いでスプロケットの内側に繋がるリアセクションの作りはリジッドフレーム以上の細さを実現できるというわけだ。

しかし、ダイナフレームは高剛性な反面、骨格が大きく、思い描くテーマを実現するために大胆なモディファイが必要となった。カスタムベースとして不人気な理由のひとつである骨太な角パイプのメインチューブは、フレーム下部から繋がる2本のチューブを活かし、サスペンションの受けとなる部分を含めた3本の丸パイプで作り直した。そして、ドゥカティの片持ちスイングアームをモディファイしたオールアルミのリアセクションによって、純正ソフテイルフレームに比べて大幅な軽量化に成功。リアセクションの作りをただのプロアームでなく、サブフレームを加えてリジッドフレームらしいラインを生み出しているディテールも見所である。それは、奇抜により過ぎることなくハーレーらしさを残しながら新しいカスタムを生み出すビルダー相川さんのカスタムマナーが表れている。

「すべてのディテールに手を加えながらも、カスタムのマニアではない一般の人が見ても、奇抜過ぎずカッコいいバイクだと感じてもらえるスタイルを意識しました。そして、オートバイとして当たり前の機能をしっかりと活かすこと。その上で軽量化やサスペンション機能など、純正ソフテイルフレーム以上の性能をもつカスタムを目指しました」

細部までオートバイの機能性と向き合い、斬新なアイデアや走行性能、造形美のすべてを追求し導き出したDSTは、カスタムソフテイルの最高峰の答えのひとつといえるだろう。

DST オリジナルソフテイルフレームを大解剖

軽量かつスリムな車体と、正しく機能するサスペンション機能を求めて、ダイナをベースに製作したオリジナルソフテイルフレームのフルスクラッチ。スイングアーム/サブフレームとなるリアセクションを剛性の高いアルミ材「7N01」で製作して生み出された。軽快な操作性と純正以上のストローク量を実現する“走るショーバイク”は、「横浜ホットロッドカスタムショー2021」にて“BEST OF SHOW MOTORCTCLE”に輝いた。

タンクはアルミシートメタルからのワンメイド。地の質感を残すため、ヘアラインの上にRODS DESIGNによるマットキャンディオレンジでペイント。ロゴとピンストライプはリオスタジオが担当。

ヘッドライトにワンオフのカバーを備えるナセル風のデザインに注目。ハンドルはボバーをイメージした低めのシルエットでオイルラインが目立たないようにデザインされている。

エンジンは97年式FXDLをベースとして、S&Sサイドワインダーキットを組んだ排気量1690ccストローカー。シリンダー、ヘッド、プッシュロッドをブラックで統一。

極めてナローなフロントエンドのシルエットでキャリパーとの干渉を避けるために、ホイールはスポークを右側にオフセットした削り出しのワンメイド。スポークホイール 感を出すために4ピースで製作。

大神戸共栄圏のナロートリプルツリーとアウターを採用した39φフォーク。ナセルとアルミカバーはワンメイド。ウルティマ製の強化クラッチを油圧式に変更したモディファイも見所だ。

等長を図るエキパイから繋がる2in1マフラーは、可動するリアセクションからはステーを出せないためコンパクトなフォルムで製作。サイレンサーはボリュームあるテーパードシルエット。

シートまわりのディテールは、シートをメインフレームに、シートカウルをスイングアームにマウントしているため、サスペンションが動くとシートがカウルの内側に入り込むように設計。

プロアームのスイングアームであるため、シート下のロッドから繋がるパイプはすべてリジッドフレームのようなシルエットを作るためのサブフレームである。軽量かつ高強度を保つためにアルミ合金「7N01」を採用。さらに、リア回りのナローなフォルムを追求するためプロアームがドリブンスプロケットの内側のラインを通るように設計されている。

ドゥカティのプロアームを流用したソフテイル構造がDSTの最大の見所。従来はピボットのすぐ上にサスペンションが取り付けられるが、 サスペンションの動きとリジッドフレームのシルエットを両立するため、フレーム上部にタンクをえぐるようにレーシングブロス製のモノサスをセット。構造上、リアの荷重がすべてネックに向かってかかるので、メインチューブは3本のパイプで強化している。

ダイナはミッションケースにピボット位置があるため、通常のソフテイルフレームよりスイングアームを長くとれるのが特徴。さらにシート下にオイルパンを備えるためシート下の自由度が高いこともダイナをベースに選んだ理由だ。エンジン、ミッションにはラバーマウントのダイナフレームの弱点である横揺れを防ぐためのスタビライザーをセットしている。

(出典/「CLUB HARLEY 2024年10月号」)

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