

革靴のOEMって情報がないからこそ面白い!
大平さん 革靴のOEMってデニムの年代判別方法のように情報があるわけではないから非常に難しいですよね。でもそこが面白いというか……。
堀口さん そうですね。どこ製かわかった時は、謎が解けたみたいにスッキリする感じがある(笑)。その分野に詳しいマニアの方がいたりするから教えてもらったりしながら、何足も革靴を見て、経験を重ねてようやく判別や推測ができるようになりますよね。
大平さん なかでもオールデン製の「ブルックス ブラザーズ」は革靴のOEMにおいてよく聞く有名なワードですが、「ブルックス ブラザーズ」のOEM先はオールデン以外にもたくさんありますよね。
堀口さん そうですね。近年ものにはなりますが、アメリカだったらアレンエドモンズもありますね。あとは英国が多い気がしますね。エドワード グリーン、チャーチ、クロケットアンドジョーンズだったりはよく聞きます。
大平さん たしかにそうですね! 英国のシューメーカーに製造を依頼するアメリカブランドでいうとやはり「ラルフ ローレン」も外せないですね。堀口さんが挙げた英国の3ブランドもそうですし、アルフレッド サージェント製も聞いたことがあります。
堀口さん 「ダブルアールエル」のブーツはジョセフ チーニー製のものもありますよね。そう考えると、「コールハーン」もエドワード グリーン製やグレンソン製があったり、英国製が多いのかも。
大平さん その印象は強いですね。やはり歴史的な面でも英国・ノーザンプトンで作る、というのはある意味箔が付くといいますか、そういう面もあるのかもしれませんね。
堀口さん そうかもしれませんね。「ブルックス ブラザーズ」や「ラルフ ローレン」のような一流のブランドは、靴も一流のシューメーカーに作らせる、というのが一般的だった気がします。カントリーシューズのような英国的な靴を作らせる、というのが一般的かもしれませんが、意外とロングウイングのようなアメリカ的な靴も英国製のものが出てきたりするので、靴の型は関係なく、英国のシューメーカーを頼っていたという面があるのかもしれません。
大平さん “英国製”というのが、革靴の製造におけるある種のステータスだったのかもしれませんね。アメリカにもハノーバー、ボストニアン、フットジョイ、ランコート、クオディだったり、シューメーカーはたくさんありますが有名ブランドのOEMとなると、やはりオールデンとアレン エドモンズが挙がりますね。
堀口さん フットジョイなんかはアメリカの田舎の靴店のオリジナルを製造していますが、有名ブランドのOEM先となると、たしかに英国に比べるとアメリカのシューメーカーは少ないですよね。「実はここが作っている!」なんて話がまだまだ眠っているのかも知れませんが。
大平さん 堀口さんはこれまで多くのヴィンテージ靴を見てこられたと思うのですが、「これは珍しい!」と感じたものはあったりしますか?
堀口さん ちょうどいまお店にあるんだけど、トリッカーズ製の「アラン マカフィー」かな。アッパーにオーストリッチを使ったスリッポン。「アラン マカフィー」は英国の老舗ビスポークブランドで、主にOEMはチャーチが担っていました。後にチャーチに吸収されているし、例に漏れずチャーチ製かと思いつつ、オーストリッチはどう見てもチャーチ製じゃないのではないかと感じていて。そこで、英国靴に強いマニアの方にトリッカーズ製だと教えてもらいました。その後、答え合わせ的にアウトソールの質感やヒールの高さ、ライニングの印字からみて、自分の持っている情報と照らし合わせながら、トリッカーズ製だと確信しましたね。
大平さん ノーザンプトンのシューメーカー同士で“横のつながり”というか、そういうのがあるんですかね。チャーチからトリッカーズに製造をお願いする、みたいな。
堀口さん どうなんでしょうね。工場のキャパの関係もありますし、「いま工場がキャパオーバーなので、トリッカーズさんお願いします!」みたいなやりとりがあったりして(笑)。完全に妄想ですけど。
大平さん こうやって妄想するのも面白いですよね(笑)。自分が過去に見たことがあるものでいうと、アッパーとライニング、インソールはジョセフ チーニー製なんだけど、アウトソールはエドワード グリーン製と推測されるものがありました。その靴自体は英国の老舗テーラー「イード&レイヴェンスクロフト」のものだったのですが、一足の靴をふたつの英国の名門シューメーカーを作らせたのだとしたら凄すぎますよね。
堀口さん それはヤバいですね。ちなみに大平さんはどこ製かを判別する時に靴のどこを見るんですか?
大平さん 印字、インソール、アウトソール、ヒールの作りであったり総合的に判断する感じです。堀口さんは?
堀口さん 同じですね。総合的に判断するしかないかと。あとは先ほども言ったようにマニアの方に聞いてみることもあるし、最近はチャットGPTに一度投げてみる。
大平さん そんなことできるんですか⁉
堀口さん 判別をしてくれるというわけではなくて、「このブランドの革靴を製造していた工場は?」といった質問をすると、そのような内容が書かれたブログなどがピックアップされえるので、それぞれの情報を比較、検討してみます。もちろん間違ってるなと思うこともあるんだけど、情報の収集にはかなり役立ってますね。
大平さん そんな方法があったのか〜。改めて、こうやってヴィンテージ靴について話すのは楽しいですね。今日はありがとうございました!
堀口さん こちらこそありがとうございました!

両店で買えるOEM靴
おふたりが営むショップで実際に買うことのできる「◯◯の◯◯製」=“OEM靴”を厳選して紹介する。
Chett

カナダの老舗ブランド「ダックス」のチャーチ製。1970年代のものと推測され、アザラシ革がアッパーに使用されている。木型は当時使用されていた「50ラスト」が採用されていると推測され、かなり希少な1足だ。2万4900円

英国のビスポーク靴メーカー「ピール&コー」のエドワード グリーン製。同ブランドはビスポーク専門であったが、「ブルックス ブラザーズ」と提携して既成靴も展開。インソールにはブルックス ブラザーズの刻印入り。2万9900円
SUPER 8 SHOES

アカナダの老舗シューメーカー「ハート」のジョセフ チーニー製。意外と知られていないが、ヴィンテージ靴において、カナダには面白いブランドが多く存在するのだとか。表情豊かなシボが特徴的な外羽根Uチップ。3万6300円

対談の中でも登場した「アランマカフィー」のトリッカーズ製。ダチョウの革であるオーストリッチの重厚感ある革を使って軽快なスリッポンを作っているというバランス感が堪らない。ヒールがやや高いエレガントな1足。8万8000円
【問い合わせ】
SUPER 8 SHOES
TEL03-6804-2174
Chett
https://chett.shop
(出典/2nd 2025年11月号 Vol.214」)
Photo/Nanako Hidaka Text/Kihiro Minami
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