みんなが知ってる名品の原点にあったのは、オーダーというパーソナルなコラボ。

登山家が極寒の頂を目指すために託した装備、文豪が探検に臨むため求めた一着……。個人のオーダーは、やがて時代を超えて受け継がれる名品へと昇華した。それは、ブランドと顧客が交わす最もパーソナルなコラボレーションである。

1.文豪の探検心を形にした、サファリの傑作|Willis & Geiger / THE HEMINGWAY BUSH JACKET

アフリカの大地を愛した文豪アーネスト・ヘミングウェイ。その探検のために「ウィリス&ガイガー」が仕立てたのが名作[ヘミングウェイジャケット]である。伝統的なサファリジャケットからウエストベルトを排し、ゴムシャーリングへと改良した意匠は、快適な可動域と洗練されたシルエットを両立。眼鏡用や弾薬用など用途に応じたポケットを備え、背面のアクションプリーツが機動性を高める。生地は赤タグ時代のブッシュポプリンを糸の段階から再現。ひとりのために作られた名品は、いま多くの人たちを魅了している。9万9000円(クローチアTEL03-6455-0548)

洗練は、一足のオーダーから|John Lobb / Lopez

1950年、ビスポークブティック「ジョンロブ」は、ひとりの顧客からのオーダーを受け、[ロペス]を誕生させた。英国靴特有の重厚感は控えめ、軽やかかつ洗練されたデザインは無国籍の趣すら漂わせる。楕円形のサドルデザインや程よい幅のシルエット、手縫いによるモカの表情など、細部に至る精緻な作りはブランドの卓越したこだわりが反映されている。以来、時代を超え、ノーザンプトンで190の工程を経て作られるこの逸品は、ブランドを象徴するアイコニックモデルとして現在も愛され続けている。26万9500円(ジョン ロブ ジャパンTEL03-6267-6010)

大統領夫人の依頼から生まれた、書くジュエリー|ST DUPONT / Classic

1973年、ケネディ大統領の妻ジャクリーン・ケネディから、自身の愛用するライターに合わせたボールペン制作の依頼が舞い込む。こうして「エス・テー・デュポン」初の高級ボールペン[クラシック]が誕生することになる。ライターのローラー部分に着想を得た縦ギヨシェ装飾とタイムレスなデザインは半世紀以上愛され続け、特定の個人へのオーダーから生まれた高級筆記具として、その後のラグジュアリーペン市場を切り拓くきっかけとなった。リバイバルモデルは、スリムで使いやすさを追求した逸品である。6万8200円(エス・テー・デュポン info@st-dupont.jp)

-40度に耐えた名品は、いま都会を温める|WOOLRICH / ARCTIC PARKA

[アークティックパーカ]は、アラスカとアメリカを結ぶ石油パイプラインの建設作業員向けに開発された防寒着が起源である。マイナス40度の極寒な気候に耐えるため、当時は最先端であったラマークロス(60/40クロス)やコヨーテファーを採用し、耐久性と保温性を両立した名品だ。レギュラーフィットのボディ、ダブルジップや多彩なポケット、取り外し可能なファートリムなどのディテールは現代的なアップデートを遂げている。ブランドを象徴するアイコニックダウンとして、幅広い層に愛され続ける。14万8500円(ウールリッチ 二子玉川店TEL03-6431-0150)

革靴史に刻まれた不朽の名作|Alden / 563 TASSEL MOCCASIN

本国のカタログには必ず最初に紹介されるタッセルローファーの元祖「THE ORIGINAL TASSEL MOCCASIN」。その誕生は1948年、俳優ポール・ルーカスの依頼に始まる。快適な履き心地を求め改良が重ねられ、1950年代には全米に浸透し、やがてアメリカントラッドを象徴する存在へと成長した。1957年には「ブルックス ブラザーズ」の特別仕様も製作され、最高級紳士服と結びついたことで、その地位は不動のものとなる。偶然から生まれた一足は、革靴史に名を刻むと同時に、今なお上質な佇まいを放つ普遍の定番である。21万7800円(ラコタTEL03-3545-3322)

登山家の信頼によって生まれた、ダウンパーカの原点|Eddie Bauer / KARAKORAM

1952年秋、アメリカの登山家チームは、世界第2位の高峰であるカラコルム山脈のK2への初登頂を計画。その際の寒冷地用高所装備品を「エディ・バウアー」に依頼し誕生したのが[カラコラム]だ。前立てのボタンや格子状ダウンパックなど、細部に至る精緻な設計は登山家のな声を忠実に反映した実戦仕様。以降、世界各地の8000m峰遠征や科学探検に携わり、アメリカ登山界のトップアウトフィッターとしての地位を確立。ブランドのアイコニックなジャケットは、エクスペディションダウンパーカの元祖にして、究極の逸品である。4万9500円(水甚TEL058-279-3045)

(出典/2nd 2025年11月号 Vol.214」)

この記事を書いた人
なまため
この記事を書いた人

なまため

I LOVE クラシックアウトドア

1996年生まれ、編集部に入る前は植木屋という異色の経歴を持ち、小さめの重機なら運転可。植物を学ぶために上京したはずが、田舎には無かった古着にハマる。アメカジ、トラッド様々なスタイルを経てアウトドア古着に落ち着いた。腰痛持ちということもあり革靴は苦手、持っている靴の9割がスニーカーという断然スニーカー派。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

東洋エンタープライズが手がける「ゴールド」。高品質な素材選びに一切の妥協なし。

  • 2026.10.20

1965年に創業した日本屈指の老舗メーカー東洋エンタープライズ社が手がける〈ゴールド〉。同社が得意とするヴィンテージへの膨大な知見と技術力の高さを活かしつつも上質にモダナイズしたものづくりに定評がある。着用時のシルエットはもちろん、高品質な素材選びに一切の妥協をしないこと。それこそがシンプルな服に深...

原毛から生地まで。一貫生産を守る英国生地の名門「ムーン」とは?

  • 2026.10.19

服を突き詰めていくと辿り着くのが生地。トラッド好きなら一度は耳にしたことがあるであろう英国の名門が「ムーン」だ。羊毛から紡績、染色、織布を一貫して行う英国最後の生地メーカーが誇る伝統のモノづくりに迫る。(写真は、生地の製造において重要な“織り”の工程。タテ糸とヨコ糸をゆっくりと交差させ、チェック柄が...

「BEORMA」140年の伝統を受け継ぐ、英国屈指のレザークラフト

  • 2026.10.21

英国トラッドを語るうえで欠かすことのできない存在がレザークラフトだ。140年の歴史とクラフトマンシップを受け継ぎ、現代のスタイルにも馴染む唯一無二のプロダクトを生み出す〈べオーマ〉は、その筆頭となりうる存在だ。 熟練職人の魂宿る伝統のレザークラフト 英国中部の小さな町・ウォルソール。革加工・馬具産業...

気鋭のアイウエアブランド「CUBITTS」が描く、クラシックとモダンの共鳴

  • 2026.10.19

18世紀から20世紀にかけて眼鏡産業の世界的な中心地であったものの戦後、衰退の一途を辿ったロンドン。この地で2013年に創業した「キュービッツ」は当時を彷彿とさせるクラシックスタイルをモダンに昇華させた独自の世界観を築く気鋭のブランドだ。 伝統と現代とを繋ぐアイウエアの研究所 「キュービッツ」は伝統...

世界最高峰のニットメーカー「JOHN SMEDLEY」が編むもの。

  • 2026.10.20

イングランド中部、リーミルズの自社工場で240年以上前からニットウエアを作り続ける〈ジョン スメドレー〉。1784年に創業した同ブランドが編んできた歴史と伝統が息づく場所で彼らが編むものとは。 240年の伝統と魂が息づくファクトリー 英国のトラッドブランドとして群を抜く歴史を持つのが〈ジョン スメド...

Pick Up おすすめ記事

メイド・イン・ノーサンプトンを貫く英国靴の筆頭「Crockett & Jones」のモノづくり

  • 2026.10.21

革靴の聖地であるノーサンプトンにて1879年に初声をあげた〈クロケット&ジョーンズ〉。英国靴を語る上で欠かすことのできない同ブランドのモノづくりの現場に足を運んだ。 一足の革靴に宿る147年の歴史と誇り 革靴産業の一大拠点として名を馳せる英国・ノーサンプトン。中世から靴職人が集まり、17世紀には軍用...

金子ノブアキが着る【REDKAP × FREAK’S STORE】

  • 2026.10.21

長い歴史を持つワークウエアブランド〈レッドキャップ〉と〈フリークス ストア〉のコラボアイテムを金子ノブアキが今の感覚で着こなす。年齢を重ねたからこそ楽しめる服のこと、ブランドが持つ哲学のこと、そしてこれから大切にしていきたいこと。45歳を迎えた金子さんに、ファッションと生き方について話を聞いた。 タ...

気鋭のアイウエアブランド「CUBITTS」が描く、クラシックとモダンの共鳴

  • 2026.10.19

18世紀から20世紀にかけて眼鏡産業の世界的な中心地であったものの戦後、衰退の一途を辿ったロンドン。この地で2013年に創業した「キュービッツ」は当時を彷彿とさせるクラシックスタイルをモダンに昇華させた独自の世界観を築く気鋭のブランドだ。 伝統と現代とを繋ぐアイウエアの研究所 「キュービッツ」は伝統...

東洋エンタープライズが手がける「ゴールド」。高品質な素材選びに一切の妥協なし。

  • 2026.10.20

1965年に創業した日本屈指の老舗メーカー東洋エンタープライズ社が手がける〈ゴールド〉。同社が得意とするヴィンテージへの膨大な知見と技術力の高さを活かしつつも上質にモダナイズしたものづくりに定評がある。着用時のシルエットはもちろん、高品質な素材選びに一切の妥協をしないこと。それこそがシンプルな服に深...

東京・入谷にできた靴づくりの新聖地「THE ZINE FOOTWEAR CLUB.」にメディア初潜入!

  • 2026.10.18

「ブラザーブリッジ」や「シュアブーツ」を手がける「ザ ジン フットウェア」。店舗と企画・縫製工場がひとつになったいわば“本拠地”を入谷に新設した。メディア初公開となる、その全貌に迫る。 メーカーでもあり店舗でもある新拠点 弊誌の読者であれば、おそらく「ブラザーブリッジ」という革靴ブランドはご存知であ...