アウトドアに革命を起こした3大名品を知っているか? 「カラコラムパーカ」を掘り下げる

日本からは撤退していた比類なきヘリテージブランドがアイコンモデルを引っ提げて再上陸を果たした。アウトドアブランド「エディー・バウアー」は、1920年にアメリカ・シアトルで創業した。ウール全盛の時代に軽くて暖かいグースダウンを封入したアメリカ初のアウトフィッターの発明は業界に衝撃を与えた。さらに、そこから端を発した偉大なブランドヒストリーは1世紀を超えても止まることはない。そんなエディー・バウアーの3大名品の1つ「カラコラムパーカ」を見ていこう。

極限の地を目指すエクスプローラーたちの命綱「カラコラムパーカ」誕生

第二次世界大戦で数多くのフライトダウンスーツやスリーピングバッグを提供したブランドの規模は格段に成長し、次のフェーズを迎えていた。1952年秋、あるアメリカの登山家チームは世界第2位の高峰であるK2の初登頂を計画し、その際の寒冷地用高所装備品をエディ・バウアーに依頼したのだ。

当時、最高の登山用品は主にフランス製だったが、それをアメリカに輸入するには高価でわずかな予算しかなかった登山家たちには手の届かないものだった。エディーはその依頼を快く受け入れ、登山家たちとアメリカ製による世界最高のエクスペディションアウトフィッターの開発に挑戦。完成したプロトタイプはK2を擁するカラコラム山脈から名付けられた。

1953年から2010年まで、12山の8000m峰登頂、40以上の主要遠征隊にダウンギアを提供。エベレスト山のアメリカ人初登頂では全身を覆うすべての装備を手掛けた

翌1953年に第三カラコラム遠征隊はそのカラコラムパーカを身に纏い、K2の頂を目指した。残念ながら、登頂は成功しなかったが、極限状態のなかでも隊員たちを無事に帰還させた功績は世界に高く評価され、同年より自社カタログでも販売をはじめると瞬く間に人気を集めた。

1963年にはアメリカ人によるエベレスト初登頂に貢献するなど、30年にわたって、あらゆる大陸の壮大な初登頂を含む、世界中のアメリカ人登山家および科学探検家のための最高のアウトフィッターとして、地位を確立することになる。

現行カラコラムパーカをチェック!

前立てに並んだ無数のボタンや格子状のダウンパック、一体型フードが、まさに「最高峰」の風格を漂わせる、エクスペディションダウンパーカの元祖にして究極。いまだブランド随一の人気を誇るハイスペックモデルが細部に至るまでヴィンテージを再現して蘇った。4万4000円(水甚TEL058-279-3045)

KHAKI
BLACK

【ディテール①】ボタン

1970年代前半にスナップボタンへと変更される以前の初期型ボタンフライ仕様を踏襲している。

【ディテール②】ドローコード

ウエスト部分にはドローコードを装備したヘビーデューティなデザイン。

【ディテール③】フード

一体化したフードが特徴。

【ディテール④】ラベル

カラコラム山脈をモチーフとしたネームは60年代に採用されたデザインを再現したもの。

ヴィンテージも気になる! 用途に合わせたあらゆる仕様変更が実施された形跡

上:1950s

カラコラム専用ネームを使用する以前の50s製。フードがコンマージッパーで脱着可能なレア仕様。当時のカスタムとも考えられるが、オーダーによる仕様だろう。参考商品(コズミックジャンパーTEL042-726-0610)

下:1960s

カラコラム専用ネームが付くので50s後期から60s製と推測。両サイドにカーゴポケットが付きテーパードが強いシルエットが特徴。冷気や雪の侵入を防ぐ裾リブもタイト。3万2780円(グレースTEL03-6416-3457)

1960s

着丈がダウンパック一段分長くなったスペシャルレア。さらに通常は存在しないチンストラップも付いている。共生地で作られるので特別なオーダーと思われる。13万2000円(ミスタークリーンTEL090-2206-1755)

1970s

三角EBロゴのスナップボタンとカラコラムネームが同居する希少種。おそらくネームが黒タグに変わる過渡期のもの。カラコラムネームが付くスナップボタン仕様のモデルは1970年代前半までと推察する(参考商品)

右:1970s

顔を覆うフードやハンドウォーマーポケットなど極寒地仕様となるカラコラムエクスペディションパーカ。このボリューム感はブランド内でも随一。6万円(ビーチ電話番号非公開)

中:1970s

スナップボタン留め仕様の新たなカラコラムがヘビーデューティカラコラムパーカ。ナイロン×コットンのシェル地。1万7000円(コズミックジャンパーTEL042-726-0610)

左:1970s

右と同じスタイルだがリップストップナイロン地をシェルに使用するウルトラライトカラコラムパーカ。70s中期頃のもの。3万2780円(アイアンドアイ ストアTEL03-6424-4994)

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/「2nd 2024年2月・3月合併号 Vol.202」)

この記事を書いた人
2nd 編集部
この記事を書いた人

2nd 編集部

休日服を楽しむためのマガジン

もっと休日服を楽しみたい! そんなコンセプトをもとに身近でリアルなオトナのファッションを提案しています。トラッド、アイビー、アメカジ、ミリタリー、古着にアウトドア、カジュアルスタイルの楽しみ方をウンチクたっぷりにお届けします。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

「アイヴァン」からニューヨークに実在する通りの名前を冠した新作アイウエアコレクション登場

  • 2025.11.21

ニューヨークに実在する通りの名前を冠した「アイヴァン」の新作コレクション。クラシックな要素をサンプリングしながらも現代の空気感を絶妙に捉え服と同等か、それ以上にスタイルを左右する究極のファッショナブルアイウエア。 Allen 2023年、NYに誕生した「ビースティ・ボーイズ・スクエア」。その付近で出...

決して真似できない新境地。18金とプラチナが交わる「合わせ金」のリング

  • 2025.11.17

本年で創業から28年を数える「市松」。創業から現在にいたるまでスタイルは変えず、一方で常に新たな手法を用いて進化を続けてきた。そしてたどり着いた新境地、「合わせ金」とは。 硬さの異なる素材を結合させるという、決して真似できない新境地 1997年の創業以来、軸となるスタイルは変えずに、様々な技術を探求...

雑誌2ndがプロデュース! エディー・バウアー日本旗艦店1周年を祝うアニバーサリーイベント開催決定!

  • 2025.11.21

エディー・バウアー日本旗艦店の1周年を祝うアニバーサリーイベントを本誌がプロデュース。新作「ラブラドールコレクション」や本誌とのコラボなど、ブランドの情熱が詰まった特別な9日間を見逃すな! 来場者には限定のブランドブックを配布! 今回のイベントに合わせ、「エディー・バウアー」をもっと知ってもらうため...

今っぽいチノパンとは? レジェンドスタイリスト近藤昌さんの新旧トラッド考。

  • 2025.11.15

スタイリストとしてはもちろん、ブランド「ツゥールズ」を手がけるなど多方面でご活躍の近藤昌さんがゲストを迎えて対談する短期連載。第三回は吉岡レオさんとともに「今のトラッド」とは何かを考えます。 [caption id="" align="alignnone" width="1000"] スタイリスト・...

グラブレザーと、街を歩く。グラブメーカーが作るバッグブランドに注目だ

  • 2025.11.14

野球グローブのOEMメーカーでもあるバッグブランドTRION(トライオン)。グローブづくりで培った革の知見と技術を核に、バッグ業界の常識にとらわれないものづくりを貫く。定番の「PANEL」シリーズは、プロ用グラブの製造過程で生じる、耐久性と柔軟性を兼ね備えたグラブレザーの余り革をアップサイクルし、パ...

Pick Up おすすめ記事

スペイン発のレザーブランドが日本初上陸! 機能性、コスパ、見た目のすべてを兼ね備えた品格漂うレザーバッグに注目だ

  • 2025.11.14

2018年にスペイン南部に位置する自然豊かな都市・ムルシアにて創業した気鋭のレザーブランド「ゾイ エスパーニャ」。彼らの創る上質なレザープロダクトは、スペインらしい軽快さとファクトリーブランドらしい質実剛健を兼ね備えている。 日々の生活に寄り添う確かなる存在感 服好きがバッグに求めるものとは何か。機...

時計とベルト、組み合わせの美学。どんなコンビネーションがカッコいいか紹介します!

  • 2025.11.21

服を着る=装うことにおいて、“何を着るか”も大切だが、それ以上に重要なのが、“どのように着るか”だ。最高級のプロダクトを身につけてもほかとのバランスが悪ければ、それは実に滑稽に映ってしまう。逆に言えば、うまく組み合わせることができれば、単なる足し算ではなく、掛け算となって魅力は倍増する。それは腕時計...

今こそマスターすべきは“重ねる”技! 「ライディングハイ」が提案するレイヤードスタイル

  • 2025.11.16

「神は細部に宿る」。細かい部分にこだわることで全体の完成度が高まるという意の格言である。糸や編み機だけでなく、綿から製作する「ライディングハイ」のプロダクトはまさにそれだ。そして、細部にまで気を配らなければならないのは、モノづくりだけではなく装いにおいても同じ。メガネと帽子を身につけることで顔周りの...

【UNIVERSAL OVERALL × 2nd別注】ワークとトラッドが融合した唯一無二のカバーオール登場

  • 2025.11.25

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【UNIVERSAL OVERALL × 2nd】パッチワークマドラスカバーオール アメリカ・シカゴ発のリアルワーク...

雑誌2ndがプロデュース! エディー・バウアー日本旗艦店1周年を祝うアニバーサリーイベント開催決定!

  • 2025.11.21

エディー・バウアー日本旗艦店の1周年を祝うアニバーサリーイベントを本誌がプロデュース。新作「ラブラドールコレクション」や本誌とのコラボなど、ブランドの情熱が詰まった特別な9日間を見逃すな! 来場者には限定のブランドブックを配布! 今回のイベントに合わせ、「エディー・バウアー」をもっと知ってもらうため...