アメリカのカルチャーと深く結びつくアイテムは、米国製だとテンションが上がる
庄子 そういえば阿由葉さんって昔からトラッド好きだったんですか?
阿由葉 いや高校の頃はストリートっぽい服装がメインでしたよ。高校生ラップ選手権の全盛期でヒップホップが流行ってたから、僕もジョーダン履いてBBキャップ被ったりしてましたし(笑)。
早野 今からは全然想像できませんね。それがなんでまたドレス志向に?
阿由葉 服飾系の専門学校に入学してからですね。周りが黒づくめのモードな服装ばかりで、なんだか恥ずかしくなってしまって。でも自分はそっちにも染まりたくなかったから、色々模索した結果、スーツ屋でバイトしていたこともあって、スーツにタイドアップして通学してました。で、授業が終わったらそのままバイトに行くっていう。
庄子 僕と同じで結構浮いてたんじゃないですか?(笑)
阿由葉 下手したら生徒じゃなくて職員と思われてかもしれません(苦笑)。でもきっとその日々が今に繋がってるんですよね。実は今日着ているのも成人式用に購入したラルフのスーツ。お直し屋さんに組上のジャケットの肩パッドを抜いてもらったりして、紺ブレとして転用してます。
早野 人に歴史ありだなぁ。実は僕は生まれてすぐにロサンゼルスに移住して、11歳頃まで向こうに住んでいたんですけど、それもあってか小さい頃から父のお下がりの紺ブレを着てたんです。
庄子 小学生でブレザーを!? 超ファッションエリートじゃないですか! 僕なんて目じゃないくらい早熟だなぁ。
早野 いえいえ、その時はお洒落だなんて意識はなくて、ただただ着させられてただけですから。自分の意志で紺ブレを購入したのは18歳の頃。その時はもう日本に帰国していて、ファッションに目覚めて色々迷ったあげく、トラッドスタイルがお洒落だなって。プレステとブルックスの紺ブレのどっちを買うか悩みに悩んで、結局ブルックスを購入したんですけど、もしあの時プレステ選んでたら、多分今こうしてふたりと紺ブレ談義してませんでした(笑)。
庄子 ゲーマーになってたかもしれませんね(笑)。
阿由葉 最初に買ったブルックスの紺ブレって今も着ることあるんですか?
早野 残念ながら結構太ってしまって、着たくても着られないんです(苦笑)。でも大筋の好みはその頃と変わってないかもしれません。このなかで最初の紺ブレに選ぶとしたら、「Jプレス オリジナルス×シオタ」。色々語りどころはあると思うんですけど、やっぱり“米国製”っていうのはキラーワードだなと。
庄子 うわぁ、わかるなぁ。
早野 普段は生産国なんて特段気にしないほうなんですけど、それでもこういうアメリカのカルチャーと深く結びつくアイテムは、やっぱり米国製だとテンションが上がる。
阿由葉 たしかに問答無用で惹かれるところはありますね。
早野 それと自分でも担当している「インディビジュアライズド クロージング」の米国製ブレザーに触れたりしていて気づいたんですけど、やっぱり向こうで仕立てられたブレザーって、着用すると不思議としっかり“米国製”に見えるんですよね。
庄子 それもわかる気がする。
早野 ロジカルに説明するのは難しいんですけど、多分インチの文化とセンチの文化の違いなのかなって。アメリカはインチの国だから、センチ文化の日本工場とは違って、細かい部分の調整が少し不得手な気がする。でも逆にそれが言語化しにくい“アメリカっぽさ”に通じているんじゃないかと思うんです。紺ブレはその違いが特に色濃く反映されるアイテムだなと。
庄子 僕は王道で、阿由葉さんは汎用性で、早野さんは生産背景。世代は同じでも紺ブレ選びは三者三様でしたね。
阿由葉 でもこういう多角的な視点でお気に入りを吟味できるのも、紺ブレの懐の深さかもしれませんよね。合わせるアイテムがアバウトでも成立しちゃうっていう意味でも懐の深さを感じるし、世代に関係なく男服の定番として親しまれてるのは納得です。
庄子さんチョイス「紺ブレ買ったぞ! という満足感に直結する正統派」
段返りの3つボタンやボックスシルエット、フックベントといった、王道アメトラの意匠を踏襲しつつ、日本の職人によって精緻に仕立てられた逸品。独自素材“ペピンメリノトロピカルウール”のおかげで肌触りもスムース。J.PRESS ORIGINALS 6万9300円(J.プレス&サンズ 青山TEL03-6805-0315)
阿由葉さんチョイス「紺ブレの枠に収まりながらアメトラ一辺倒を脱却できる振れ幅がある」
シングルながら、ボタンを閉めるとまるでダブルのように打ち合わせが被る代表作[セミダブル]。裏地をはじめとする副資材を省いたアンコン仕立てで、驚異的な軽さを実現しながら、パターンワークの妙で構築的な見映えに。la favola 7万9000円(ラファーヴォラTEL050-5218-3859)
早野さんチョイス「メイド・イン・USAという言葉には理屈抜きで惹かれてしまいます」
J.プレス USAで展開されている定番ブレザーのパターンはそのままに、スビンコットンとシェットランドウールを掛け合わせた独自のホップサック生地に衣替え。段返りの3つボタンをはじめとする伝統的意匠を抑えつつ、米国内で縫製。J.PRESS ORIGINALS × CIOTA 13万9700円(customerservice@ciota.jp)
※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。
(出典/「2nd 2023年12月号 Vol.200」)
Photo/Ryota Yukitake Text/Masato Kurosawa
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