この世代にとって紺ブレは定番品を選んで崩すっていうのが共通項なのかも
西野 もうトラッドの空気感を思い切り打ち消しちゃいたいなって。でもだからこそ紺ブレ自体には王道の空気感を纏っていてほしい。それもあって、今回色々試着しまくって一番ときめいたのが、この「サウスウィック」のダブルブレザーでした。
ミウラ うわ、それ俺もめっちゃ迷いました! 見映えも着用感も本当にデキがいいですよね。メイド・イン・USAっていうのも大きいし。
川辺 たしかにそれはデカい。服好きにとっては米国製ってだけで特別感があるんですよね。間違いなく気分が上がる。
西野 そうなんですよ。生産背景も含めて超王道。生地もメタルボタンも米国製にこだわっているところに萌えます。しかも実際に羽織ってみたらサイズ感、ちょうどいい。タイトでもワイドでもない。誤解を恐れず言えば“ごく普通”。でもそれがいいなって。
ミウラ ベーシックだからこそ自分色に染めやすいと。
西野 そうそう。今日みたいな上下デニムを合わせたバリバリのアメカジに羽織っても、そんなに違和感ないでしょ?
川辺 たしかにこれくらい大胆に遊んでも奇抜に見えないのは、“サウスウィックのダブル”っていう安心感があるからこそかもしれませんね。
西野 あとは純粋にシングルより身幅にゆとりがあるのも、体型が気になり出してる30代~40代には嬉しいかも。着丈が長くてヒップまですっぽり覆ってくれるのも嬉しいし。
ミウラ 体型補正的な意味合いでもダブルはいいのかもね。実は僕も今回試着した中で一番惹かれたのが、「ポロ ラルフ ローレン」のダブルだったんです。なんかちょっとカブるみたいで言いにくかったんですけど(笑)。
西野 ダブル被りだ(笑)。
ミウラ そもそも自分の基本のブレザー像は、ダブルのサイドベンツ。これはまさにその理想像にピッタリだったし、ピークドラペルの広さなんかも結構ワイドめで自分好み。本来はかなりエレガントなアイテムだと思うんですけど、最近は今日みたいに古着のうえにサラッと羽織りたいから、これくらい威厳のある紺ブレのほうがバランスがとりやすいのかなって。
西野 たしかに似合うなぁ。色合いがちょっと明るめのネイビーなのも抜け感がある。
ミウラ ただ僕も西野くんと同じで、これに惹かれたのは変に編集しすぎてないからなんですよね。しっかり王道のアメトラ顔に仕立てられてるからこそ、崩しても成立する。
川辺 うわぁ、なんだかこの流れでかなり言い出しにくいんですけど(笑)、実は僕が選んだベスト紺ブレもダブルなんです。しかも「ポール・スチュアート」の。
西野 みんなアメトラの名門のダブル! なんか話し合って決めたみたいですね(笑)。
川辺 しかも理由も結構似ていて、これならしっかりアメトラ風味は残しつつ、自分流に崩しやすいのかなって。
ミウラ 金ボタンじゃなくてコッパーボタンってところがヒネリを感じていいですね。
川辺 構築的に見えるんですけど、腕とか胸周りの内蔵物はかなり軽くされていて、ワンサイズ大きめを選べばラフに羽織れそう。以前敬愛するパリの名店「ハズバンズ」の創業者、ニコラ・ガバールさんにお会いした時、ちょうどこんな感じのダブルブレザーにヒールの高いブーツを合わされていて、それがとてつもなく洒脱で。その残像が残っていて、このブレザーならマネできそうだなって。
西野 全員老舗のダブルを選ぶとは(笑)。もしかしたらこの世代にとって紺ブレは定番品を選んで崩すっていうのが共通項なのかも。
ミウラ まだ落ち着かずに遊んでなんぼってことね。
西野さんチョイス「意匠も背景もとことん正統だからこそ思い切って遊べる一着」
西野さんの古巣であるブルックスの製品作りを長年担ってきた名門の定番モデル[パクストン]。ナチュラルショルダー、ピークドラペル、サイドベント、袖の並び4つボタン、ラペルの約7mmステッチと、伝統的な意匠が凝縮。Southwick 14万8500円(シップス 銀座店TEL03-3564-5547)
ミウラシュランさんチョイス「真面目だけど抜け感もあってアレンジする楽しみがある」
重厚になりがちなダブルにあってモダンにも映るのは、幅広ながら鋭利なピークドラペルや浅めの打ち合いなど、独自の感性が落とし込まれているからこそ。ボタンを外してもバランスよく見えるように設計されているのもさすが。POLO RALPH LAUREN 7万2600円(ラルフ ローレンTEL0120-3274-20)
川辺さんチョイス「色気と遊びのバランスが秀逸。ワンサイズ上げて崩して羽織りたい」
数量限定のコレクションラインから展開された力作。ワイドラペルと深めのVゾーンでエレガンスを追求しつつ、胸や肩回りの内蔵物を極力軽くして心地いい着用感に。しなやかなのにハリもある尾州産ウール地も白眉。Paul Stuart 13万2000円(ポール・スチュアート青山本店TEL03-6384-5763)
※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。
(出典/「2nd 2023年12月号 Vol.200」)
Photo/Ryota Yukitake Text/Masato Kurosawa
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