お堅くない英国スタイルを好む人のための理想郷。
ソリマチさんのワードローブは 大半がビスポークで誂えたもので、すべて「バタク」製。「いまでは観光地化してしまったサヴィル・ロウが、特に素晴らしかった30~60年代の雰囲気をもった珍しいテーラー」とのことで、日比谷にある店舗を訪ねた。
サヴィル・ロウで修業を積んだ職人たちが手縫いをしている作業場もチラリと覗き見え、重厚な空気感に緊張を覚えながらもオーナーの中寺さんに話を伺う。
「英国と言えば、堅いイメージを持たれる方が多いと思いますが、我々もソリマチさんも基本的にはリラックス感のあるスタイルが好み。1930年代に英国で発案されたソフトテーラーリングの『ドレープ・スーツ』はスーツ史上はじめて『快適性』に目を向け、『柔らかな心地よい着心地』と『きちんとした構築的な仕立て映え』を両立させたもので、それを我々は作っています」
なるほど、ソリマチさんのようにこのムードに共感する洒落者にとっては、これ以上ないテーラーである。
ソリマチさんが特に愛用しているビスポーク服。
かつてGQジャパンの連載で挿絵を担当していた音楽家・加藤和彦さんの影響を受け、オーダーしたカバートコート。英国人にとっては、スーツの上に羽織るなど、定番的なスポーツコートである。
最近オーダーしたというフォックスブラザーズの生地を使ったクラシックスタイルのスーツ。決してビジネススーツには見えないリラックス感のあるビスポークならではのシルエットに仕上げた。
30年代のハンティング系スポーツコートをイメージして製作。スポーティな動きやすいつくりながら、芯地を固くしたりヘビーなサキソニーの生地を採用したりと重厚感も漂う仕上がりに。
加藤和彦さんがサヴィル・ロウでオーダーしたというジャケットから、共布のくるみボタンや胸ポケットのフラップなどの意匠を踏襲。「あくまでソリマチさんの雰囲気で仕上げた」と中寺さん。
映画『007』でショーン・コネリーが着用していたジャケパンが元ネタで、 ラペル細めの60年代風デザイン。いわゆるコンジット・カット。ソリマチさんにしては珍しくやや構築的なデザイン。
シャツもバタクでオーダー。左からタブカラー、ラウンドカラー、レギュラーカラー。フィット感はインナーとしてジャケットの邪魔にならない程度に、ほどよくゆったりとしたサイズ感で統一。
【DATA】
バタク日比谷
東京都千代田区有楽町1-2-14 紫ビル2F
TEL03-5510-6902
営業/11:00~20:00
休み/水曜
(出典/「2nd 2023年1月号 Vol.190」)
Photo/Yuco Nakamura, Yoshika Amino Text/Masatsugu Kuwabara, Shuhei Takano