育てがいのある紺ブレが生まれた経緯とは。
1802年、第3代アメリカ合衆国大統領トーマス・ジェファーソンの時代に創立したウエストポイント陸軍士官学校。ダグラス・マッカーサーなど錚々たる卒業生たちが在学時に着用してきたチノパンの素材が、通称〝ウエストポイント〟だ。厳密に言うと、単糸で左綾のチノ素材に対し、ウエポンは双糸で右綾となる。すなわち、特別なもの。いま、その生地を再現するのは容易なことではない。
90年代にウエポンと同じ糸の番手、同じ打ち込み本数で織り上げていたデッドストック生地が時を経て日本の機屋(はたや)で発見された。しかも染める前の生機(きばた)の状態で。果たして、これらの偶然は必然だったのか……。
D.C.ホワイトのクリエイティブディレクター、石原協さんの頭に浮かんだのはラルフ ローレンのネイビーチノが見せてくれていた白っぽい褪色感だった。同様の雰囲気が再現できる方法をつきとめ生機を濃紺に染め上げた。時を経るごとに愛着が増していく、前代未聞のウエポンの完成だ。
さて、このレアな生地をどういう形で世の中に送り出していくのか。生まれてきたのが、こちらの紺ブレである。もともと石原さんは、ドレス畑で作り手として活躍してきた男だ。ボタンなどの副資材はどうする。縫製はどうする。あらゆるところに想いを込めて、「いま、着たい紺ブレ」が生まれた。
経年変化する紺ブレ「WEST POINT OFFICER BLAZER」
3つボタン段返り、パッチ&フラップでアメリカントラッドを意識。ウエポン素材を用いながら、首周りに美しくフィットする仕立て、段返り部分の立体感あるロールなど、紺ブレの重要点を見事に踏襲。ラペル、袖、裾、ポケットなど各所のステッチは縁から6mm幅で走る。味な素材と丁寧なテーラリングの交差点がここに。5万5000円
【ポイント①】アメカジ好きも唸る本物の“ウエポン”。
適度なハリと上品な光沢感が持ち味。今春、デッドストックのウエポン生地から1000 着の紺ブレを生産した。今秋発売の250着で販売終了となる。
【ポイント②】オリジナルのメタルボタン。
光沢を抑えた横方向に刻みの入った意匠はヴィンテージボタンから着想。コロンブスの帆船サンタマリア号があしらわれる。
【ポイント③】肩へ自然に沿うナチュラルショルダ—。
袖付けの際、アームホールの前後には可動域を考慮してゆとりを持たせながら、肩線から続く最上部はフラットにしてナチュラルショルダーに。
【ポイント④】褪色やパッカリングにも期待。
右側の1着は3 〜4 回ほど洗いをかけたもの。90年代ラルフローレンの紺チノのように白く色が抜けていくのが味わい深い。
紺ブレと合わせたいアメトラの定番アイテム。
「もっと自由な発想で。別にウチのアイテムで全身を揃えなくていい」とD.C.ホワイトは言うが、紺ブレと好相性なアイテムが揃っていて、自ずと手が伸びる。そんな紺ブレに合わせたくなる秀逸なアイテムをピックアップして紹介する。
1.The Reefer
ミリタリースペックのピーコートは重くて硬いが、こちらの接結ダブルフェイスのメルトンは軽くて柔らかい。ラペルや袖口、裾などの端は接結されたダブルフェイスを裂いて内側にしまい、ハンドステッチ。8万5800円
2.Ivy B.D.
アメトラ、アイビー好きのバイブル『TAKE IVY』。そこに出てくる横向きで緩やかなAラインを描いているBDシャツ。だらしなく見えることなくリラックス感を漂わせた、そのシルエットを目指して製作。2万2000円
3.Blazer Stripe Tie
1837 年に英国で創業した織物メーカー、アブラハムムーン&サンズがジャケット用に提案しているストライプ柄の生地スワッチ。そこから選んだ生地(ウール60%、コットン40%)をタイにしている。1万4300円
4.Classic Rugger
今作のために厚みがありながらも柔らかい生地をオリジナルで製作。横と縦の両軸でサイズを設計し、スタンダートショート、スタンダードロング、リラックスショート、リラックスロングの4サイズを用意。2万2000円
【問い合わせ】
S & O コネクト
TEL03-6447-5095
www.mida2018.jp/dc/
(出典/「2nd 2022年12月号 Vol.189」)
Photo/Norihito Suzuki Text/Kiyoto Kuniryo Hair&Make/Daisuke Yamada
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