年表で読み解く、アウトドアファッションの歴史とブランド。【①創成期~1960年代】

野外活動や局地など特定のフィールドに向けたアウトドアアパレル。その優れた機能服はいかにしてデイリーユースとなっていったのか? アメリカと日本のシーンを中心にその変遷を追ってみる企画の第一回目はアウトドアアパレルの創成期に迫る。まだアウトドアファッションの概念がなかった時代、どんなブランドが誕生していたのだろうか?

【~1950年代】エスタブリッシュメントの嗜みから庶民のレジャーへ。

本来フィールドスポーツやアウトドアアクティビティは英国からの入植者、つまりはアメリカ建国に携わったエスタブリッシュメントの嗜みとして高尚な分脈に位置したものの、戦後の高度成長期を経てレジャーの一環として庶民へと浸透。マウンテニアリングやハンティングといった野外アクティビティが急速に市民権を獲得していく。また、製造ラインのハイテク化が進み、大量生産体制へと完全移行したのも’50年代に入ってからのこと。それまではカスタムオーダーがゆえの少量生産がメインであり、決して安価なカテゴリーではなかったと思われる。

1897年

米国ワシントン州シアトルにて、ゴールドラッシュへ向かうハンターたちのための小さな衣料品店としてフィルソンが創業。

1911年

メイン・ハンティング・シューズ

創設者レオン・レオンウッド・ビーンによりメイン州フリーポートにてエル・エル・ビーンが設立され、通称ビーンブーツこと[メイン・ハンティング・シューズ]が開発・販売される。

ラバー製のボトムにレザートップを縫い合わせるという画期的なデザインは100年以上ほぼ変わらない。アメリカ・メイン州の本店には最初のビーンブーツを縫ったというミシンが奇跡的にまだ綺麗な状態で残っている。

本店に置かれた最初のビーンブーツを縫ったミシン

1912年

森林伐採場で働く人のための衣服としてフィルソンから[マッキノー ウールクルーザー]が登場。現在にも続くロングセラーであり、ゴールドラッシュに沸いた1897年デビューというアウトドアファッションの元祖とも言えるアイテムだ。

アメリカを代表する作家でありアウトドアをこよなく愛したヘミングウェイはビーン・ブーツとフィルソンのマッキノークルーザーを愛用していたと山口淳著『お洒落名人 ヘミングウェイの流儀』に記されている。彼を語るうえで欠かせない2大アイコンなのだ。

1920年

アウトドアガイドであったエディー・バウアーが自分の名前を冠した小さなお店をシアトルにオープン。

1932年

チャールズ・ダナーと5人の職人たちによりウィスコンシン州チペワフォールズでワーク&アウトドアブーツブランド、ダナーが設立される。

1936年

スカイライナー

アメリカで初めて特許を取得したダウンジャケット、[スカイライナー]を開発。

防寒着といえばウールが主流だった1936年にデビューしたエディバウアーの[スカイライナー]は、元祖ダウンジャケットとして後のアウトドアアパレルに絶大な影響を残したエポック作だ。

スカイライナーのタグ

1944年

エル・エル・ビーンよりトートバッグの原型とも言える[ボート・アンド・トート]が発表される。

ブランドの代名詞でもある[ボート・アンド・トート]の源流は氷を運搬するためのアイスバッグにあったと伝えられ、量産しやすいシンプルな作りと優れたコスパ、堅牢性に重きを置いていた。

【1960年代】文明や管理社会を拒絶したヒッピームーブメントの隆盛。

’50年代に起こったビートニク運動以降、新たな世代のユースカルチャーとしてヒッピームーブメントが起こり、彼らはより人間的でプリミティブな生き方を選んだ。その一環としてパックひとつで山へと入るバックパッキングが盛んとなり、アメリカ西海岸を中心に多くのガレージブランドが設立される。通称ヒッピートレイルをはじめ、アメリカ3大トレイルルートと呼ばれるパシフィッククレストトレイル(PCT)、アパラチアントレイル(AT)、コンチネンタルディバイドトレイル(CDT)ルートが制定されたのもちょうどこの頃だった。

1965年

ジョージ・マークスとボブ・スワンソンによってシェラネバダ山脈の名を取りシエラデザイン社が設立。

自宅ガレージにてテントを製作することからはじまったシエラデザインズ。3年後の1968年に60/40クロスを開発する。

1966年

パタゴニアの創設者でもあるイヴォン・シュイナードが航空技師のトム・フロストとともにシュイナード・イクイップメント社を設立。

いまもパタゴニア本社裏に残る倉庫はシュイナード・イクイップメント時代の作業場兼オフィス。多くのクライミングギアをシンプルかつ軽量化を図り、耐久性を高める改良が行われた。

1966年

ダグラスとスージー・トンプキンス夫妻によりスキー用品を専門的に扱う小売店ザ・ノース・フェイスが設立され、後のダウンパーカの原型となる[シェラパーカ]が開発される。

1968年

ヒッピーコミューンに向けたサバイバルカタログ『ホール・アース・カタログ』がスチュアート・ブランドによって創刊される。

ヒッピーコミューンを支えるためのDIY、自給自足などのハウトゥや関連商品が掲載され、1968年から1974年にかけて刊行されたのがヒッピーたちのバイブル『ホール アース カタログ』だった。

1968年

シェラデザイン社が縦糸にナイロンを配し編み込まれた60/40クロスを開発し、ベストセラー[マウンテンパーカ]を発表。世界的ヒットを記録する。

縦糸にナイロンを配し、コットンの柔らかさとナイロンのハリ感+撥水性を両立させた当時のハイテク素材が60/40クロスだ。

1969年

大学でマーケティングを学んだケネス・ハップ・クロップが店を譲り受け、アウトドアブランドとしてザ・ノース・フェイスがカリフォルニア州バークレーにて設立。

小売店からアウトドアブランドとしてマーケットを拡大した1969年のカタログ表紙。当時バックパッカーたちから絶大な支持を受けたことが伺える秀逸なビジュアル作り。

ちなみにパタゴニアの創業者・イヴォンとザ・ノース・フェイスの創業者ダグラス実は1968年にロングトリップに出かけた旧友。そんな2人が歩いた旅路をある若者が辿ったドキュメンタリー映画『ワンエイティ・サウス』はファン必見!

次回は、1980年代から90年代のアウトドアファッションの軌跡を紹介! お馴染みのブランドのロングセラーアイテムが続々登場し、アウトドアアイテムがファッションとして浸透していく過程をお楽しみに!

この記事を書いた人
2nd 編集部
この記事を書いた人

2nd 編集部

休日服を楽しむためのマガジン

もっと休日服を楽しみたい! そんなコンセプトをもとに身近でリアルなオトナのファッションを提案しています。トラッド、アイビー、アメカジ、ミリタリー、古着にアウトドア、カジュアルスタイルの楽しみ方をウンチクたっぷりにお届けします。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

100本限定生産の「エイトG」大戦モデルは、春にぴったりの履き心地とメリハリのエイジング

  • 2026.04.02

無骨なまでに肉厚なデニムで知られるエイトG。その中でも比較的穿きやすく、この時期にぴったりの一本が、第二次世界大戦期のディテールを落とし込んだ大戦モデルだ。特濃インディゴで染め上げた糸ならではの、メリハリの効いたエイジングは、自分だけの一本になること間違いなしだ! ワイドシルエットが生む、クラシカル...

夏を装いが物足りない時のひと工夫。涼しげな素材と優しい配色で気軽に“レイヤード”を楽しむ

  • 2026.04.16

シャツとジーパン。それだけで成立することは分かっていながら、やっぱりちょっと物足りない、と感じたときに思い出してほしいキーワード。それは、レイヤードだ。ぜひ夏の装いのひと工夫に加えてもらいたい。 涼しげな素材×優しい配色のレイヤード 夏に着るトップスはシャツとインナーだけになりがち。だが、シャツの下...

開襟シャツに刺繍入りジャケット……老舗デニムブランドが提案する、春夏のアメカジスタイル。

  • 2026.04.01

老舗デニムブランドであるステュディオ・ダ・ルチザンが提案する、春夏のアメカジスタイル。定番ジーンズからHBTのワークセットアップ、開襟シャツや刺繍入りジャケットまで、軽やかな素材と遊び心あふれるディテールで、春夏の装いを彩る。 [5743]ボーリングシャツ 1950年代のヴィンテージ・ボーリングシャ...

これが“未来のヴィンテージ”。綿、糸、編み機……すべてに徹底的にこだわる唯一無二のカットソー

  • 2026.04.27

綿、糸、編み機……。素材から製法まで徹底的にこだわり、唯一無二のカットソーを創り続けるライディングハイ。「FUTURE VINTAGE(未来のヴィンテージ)」を目指す彼らのフィロソフィは如何にして形成されているのか。プロダクトの根幹をなす代表・薄 新大さんの“アイデアの源”に迫る。 More tha...

これまでで一番“アイビー”なクラークス誕生! 2026年春夏の新作にペニーローファーやボートシュー ズも登場

  • 2026.04.27

「クラークス」が2026年春夏の新作として発表した「デザートアイビーコレクション」。ブランドのアイコンである[デザートブーツ]や[ワラビー]、[デザートトレック]はアイビーらしい配色に落とし込まれ、アイビーの定番靴であるペニーローファーやボートシューズも顔ぶれに加わる。英国、アメリカ、日本。各国のカ...

Pick Up おすすめ記事

大人の夏はゆるくてこなれ感があるコーデが気分。“アジ”のあるピグメントTとデニムさえあればいい

  • 2026.04.17

ハナから古着みたいに着られる、アジのある服が大好きだ。「ジムマスター」が今季推すピグメントTとデニムも、加工感が素敵。いい“アジ”を知り尽くすふたりも、どうやら気に入ったご様子です。 「MIA MIA Kuramae」ヴォーンさんは、ピグメントTにオールインワンを着崩して合わす! 色ムラによる古着ラ...

横浜発アメカジブランド「HEATH」による、定番アメカジのマストアイテム5選はこれだ!

  • 2026.04.03

横浜を拠点に、定番からちょっとアレンジの効いたアメカジを提案するHEATH。人気ブランドのアイテムをセレクトするだけでなく、オリジナルのモノづくりにも注力しており、そのコストパフォーマンスの高さには定評がある。今回はその中から絶対に手に入れておきたいマストアイテム5選を紹介しよう。 【横濱デニム】デ...

100本限定生産の「エイトG」大戦モデルは、春にぴったりの履き心地とメリハリのエイジング

  • 2026.04.02

無骨なまでに肉厚なデニムで知られるエイトG。その中でも比較的穿きやすく、この時期にぴったりの一本が、第二次世界大戦期のディテールを落とし込んだ大戦モデルだ。特濃インディゴで染め上げた糸ならではの、メリハリの効いたエイジングは、自分だけの一本になること間違いなしだ! ワイドシルエットが生む、クラシカル...

開襟シャツに刺繍入りジャケット……老舗デニムブランドが提案する、春夏のアメカジスタイル。

  • 2026.04.01

老舗デニムブランドであるステュディオ・ダ・ルチザンが提案する、春夏のアメカジスタイル。定番ジーンズからHBTのワークセットアップ、開襟シャツや刺繍入りジャケットまで、軽やかな素材と遊び心あふれるディテールで、春夏の装いを彩る。 [5743]ボーリングシャツ 1950年代のヴィンテージ・ボーリングシャ...

【連載】ビートルズのことを考えない日は一日もなかった

  • 2024.02.05

80年代、私的ビートルズ物語。 ビートルズ研究と収集に勤しむビートルデイズを始めて早44年(Since1980)。 なにをするにもビートルズが基準だった『昭和40年男』編集長のビートルズ史を、 当時の出来事とともに振り返ります。