さらに、積極的なAIの搭載も発表された。単純な時流に乗ったAIの搭載ではなく、『複数のAIを協力させるAIオーケストレーション』、『ハルシネーションを発生させない生成型AIと知識型AIのハイブリッド型AI』を搭載すると浮川初子専務がおっしゃっているので、これは本当に有効なものになりそうだ。
詳しく解説していこう。

MetaMoJi ClassRoom 3
https://product.metamoji.com/classroom/
コンシュマー向けのMetaMoJi Noteを休止し、ビジネス向けのGEMBA NoteとClassRoomに活路を見い出した
まず、我々一般ユーザーのMetaMoJiファンにとっての現在位置を、あらためて解説しておこう。
MetaMoJiはジャストシステムの創業者で、ATOKや一太郎の開発者でもある浮川和宣、初子夫妻がジャストシステムの会長、副会長を辞任後に2009年10月に創業した会社。その後、MetaMoJi Noteを2012年にローンチ。
MetaMoJi Noteの画期的なところは、非常に高速に動作するベクターベースのノートアプリとして、iPadの利用に完全にマッチするアプリケーションだったことにある。まだApple Pencilのなかった時代、先の太いスタイラスでも文字が書きやすいように俊敏に拡大縮小が可能(5000%の拡大縮小が可能)だったことには驚かされた。
また、日本語手書き文字認識システムmazec(マゼック。漢字かなの混ぜ書きが可能なことから)を搭載しており、手書きメモをテキストに変換可能。キーボード不要で、スタイラスだけで、図や文字を書けるという特別なデジタルノートだった。
当初は買い切り型のアプリとして始まり、クラウド機能のサブスクなどを追加した。しかし、これは筆者の推測になるが、上手く収支を挙げられなかったのではないだろうか? 同社の主力商品は、建設業界の現場業務向けデジタルノート『GEMBA Note』や、学校向けデジタルノート『MetaMoJi ClassRoom』へと移り変わっていく。商品ラインナップとしては、それらB to Bの商品は大きな成果を挙げているようなので、MetaMoJiファンとしては嬉しい。
しかし、MetaMoJi Noteは7年前から、MetaMoJi Note 2は4年前からアップデートされておらず、iPadOSの進化にも追従しておらず、Split ViewやSlide Overといった機能や、ファイル共有機能の一部が使えない。筆者も、原稿の文字校正などにはずっと使ってるが、不自由だった。MetaMoJiの企業としての成功は喜ばしいが、MetaMoJi Noteユーザーとしては困っていた……というのが実際だ。
それが、復活の兆しが見えたというのは非常にいいニュースだ。
自宅でひとりででも学習できる『メタモジドリル』をMetaMoJi ClassRoom 3に搭載
今回の発表はいくつかのフェイズに分かれていて少々複雑だ。
まずは、MetaMoJi ClassRoom 3にこの春から実装される『メタモジドリル』について説明しよう。

こちらは、学校の授業で使うMetaMoJi ClassRoomに対して、学校でも家庭でも使えて、必要ならひとりで自宅学習にも使える問題集だ。

これにはAIが使われていて、学習者ひとりひとりに最適な問題を出題することができ、学校で使う場合には先生が画面越しに個別指導することも可能だ(リアルタイム巡視)。この機能は遠隔教育や不登校支援にも有効。
つまずいている子どもを自動検出する『つまずき検知機能』もあるので、先生はどの子どもをサポートすればいいのかも分かりやすい。

まず2026年4月からは小学校の漢字、計算、情報についてを提供。今後、3段階に分けて小中学校9年分のドリルを提供する予定とのこと。

そんなに大量の問題を作るなんて大変ではないだろうか? どこかの問題集を作っている出版社と提携したのだろうか? と思って、問題の供給について質問してみたら、なんと問題は生成AIで作成するという。もちろん、後述する『ハルシネーションを発生させない生成型AIと知識型AIのハイブリッド型AI』を使っているので、問題にAI特有の間違いが入る可能性もないとのこと。
原田メソッドの原田隆史氏が協力した『目標達成ノート』『習慣ノート』
今回の発表の大きなポイントは、『生涯の学びを支援する環境』の開発構想が発表されたことにある。
こちらは、原田メソッドの考案者原田隆史氏に協力を仰ぎ、『目標達成ノート』『習慣ノート』というカタチで作られていく。

『習慣ノート』2026年4月からを目処にMetaMoJi ClassRoom 3に搭載がスタートする予定で、具体的目標の達成と、実行して記録、振り返って改善……という流れをサポートする。これにはMetaMoJi独自のAI(後述)がサポートしてくれるという。小学生用の目標達成ノートはMetaMoJi ClassRoom 3に付属する。

『目標達成ノート』は、目標設定と、そのためのプランの立案をサポートしてくれるノートで、各種目標を立てたあとは『習慣ノート』に連動する。大谷翔平選手も使ったというマンダラチャートを体系化した原田メソッドのオープンウインドウ64をアプリ上で使えるようになっている。こちらは次期MetaMoJi Noteに搭載予定だという。

もうひとつ、今後のロードマップには『考える力ノート』という機能が出てくる。これは、前出の『習慣ノート』『目標達成ノート』と同系統のネーミングがされているので、混乱しがちだが、MetaMoJi Noteに搭載予定の思考支援ツールのこと。たとえば、文章作成のために文章の断片を付箋状のメモに書いて、それを並び替えると文章が完成するというツールや、思考を図解で説明しやすくするツールなどのことらしい。

まずマンダラチャート的な『目標達成ノート』で目標をカタチにし、それを『習慣ノート』で日常に落とし込む。そして日々の勉強には『メタモジドリル』を使い、文章にしたり図示したりするために思考をとりまとめるには『考える力ノート』を使う……という関係性だ。
新機能を支える『MetaMoJi AI』
今回の発表にはもうひとつ重要なポイントがある。それは浮川初子専務が語った『MetaMoJi AI』の開発だ。

これは、今後MetaMoJi ClassRoom 3の一部として動作して、次期MetaMoJi Noteでも積極的に使われる模様。これを人の思考能力を向上させるために使うというのがMetaMoJiの方針だ。
AIブームだからとって付けたようにAIを使おうという話ではなく、日本のコンピュータの黎明期からソフトウェア開発を行ってきた初子専務だから、当然のことながらAI的な機能をどう自社製品に搭載するかも考えていたし、生成AIの進歩も常にリサーチされていた。
その上で、今回のMetaMoJiは『複数のAIを協力させるAIオーケストレーション』、『ハルシネーションを発生させない生成型AIと知識型AIのハイブリッド型AI』となっているのが大きな特徴だ。

MetaMoJi AIは、自社のサーバ上で、AI企業各社のAIを操作させ、それを連動、競合させて利用する仕組みとなっている。複数のAIの美味しいところ取りをする仕組みだ。それを初子専務は『AIオーケストレーション』と呼んでいる。
もうひとつは『生成型AIと知識型AIのハイブリッド型AI』。教育分野においてハルシネーションが起こっては困る。たとえば、『鎌倉幕府の成立は1185年』という確かな情報が必要でネット上の古い『1192年』という情報で、ゆらぐようでは困るのだ。そこで、教科書や専門家の知識を持たせた確かな知識型AIに対して、生成AIを組み合わせることで、問題生成などの創造的な部分をサポートするような仕組みで作られている。
やはり、初子専務が率いる確固たるエンジニアリングがMetaMoJiの強みなのである。それはAIを活用する時代になっても変わらないのだと感じた。

今回の発表のまとめ
今回の発表会では数多くのことが発表されて、少々混乱気味だったのであらためて整理しておこう。
まず、MetaMoJiは、『MetaMoJi AI』 という、確かな学習に使えるハルシネーションのないAI技術を開発中だということ。
次に、2024年10月にローンチされたMetaMoJi ClassRoom 3に、2026年4月から『メタモジドリル』『習慣ノート』が搭載されるということ。『考える力ノート』の小学生向け一部機能もこの段階で搭載される。
そして、一番喜ばしいのは2026年春に一般ユーザーも使えるコンシュマー向けの『次期MetaMoJi Note』が登場するということ。ここには『目標達成ノート』や『考える力ノート』なども搭載され、MetaMoJi AIを活かした各種機能が追加されることになりそうだ。
どのような課金体系になるのかなども気になるところだが、長らく待ち続けていた我々一般コンシュマー向けのMetaMoJi Noteが復活するというのは実に嬉しい。期待して待ちたい。

(村上タクタ)
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