スタンダードモデルのMacBook Pro 14インチが、M5搭載にアップデート
まず、MacBook Proだが、M5チップが搭載されたのはMacBook Pro 14インチモデルのみ。
去年の秋は、M4 Pro、M4 Maxも同時に登場したのだが、今年はM5のみの発表となった。そのため、ラインナップは下位モデルがM5、上位モデルがM4 Pro、M4 Maxという変則的なラインナップになっている。M5 Pro、M5 Maxも遅くとも春には出るだろうから、よほど必要に迫られているのでなければ上位モデルを買いたい人は『待ち』だろう。
M4のベンチマークテストでも、M1 Proよりも早いスペックを持っていたから、M5 MacBook Proはかなり高性能なはず。ポートや内蔵ディスプレイ、スピーカーなどのクオリティにも差は少なくなったので、スタンダードのM5 MacBook Proで十分という人も増えているはずだ。
M4 MacBook Proと比較すると、チップセットが変更された以外に差はない。スペック表上でそれ以外に発見できる違いは4TBストレージを選べるようになったことぐらいだろう。とはいえ、M4→M5の進化が大きな変化をもたらしていそう。
最上位モデルのiPad ProもM5搭載に。C1XとN1チップも搭載
iPad Proはもう少し変化が大きい。
M5搭載となった他、セルラーモデムとしてC1X、Wi-Fi、Bluetooth、Thread用のチップとしてN1という、2つの自社設計チップを搭載している。着々と自社製チップへの更新は進行している。これにより、アップルに自社のニーズに合わせて省電力性能を高めた設計が可能になるし、商品更新サイクルも自社でコントロールできるようになる。
描画性能を求める人が多いiPad ProにM4が搭載されるのは大歓迎だろう。
Vision ProがM5版となった意味は?
発売されて2年半が過ぎようとしているVision Proのアップデートにも注目が集まりそうだ。
それほど数が売れる製品ではないので、Vision Proが目立たず、「アップルはVision Proを諦めたのではないか?」という声が外野からは聞こえるが、実際には着々と空間OSの熟成は着々と進行している。我々がWWDCへ取材に行っても、アップデートに関する詳しい解説があったりする。
最初のモデルはテストマーケティングを兼ねたような製品なので、数の販売はもとより狙っていない、。それより、この最初のモデルを使って、空間コンピューティングを多くの人に体験してもらったり、アプリデベロッパーを育成するのが狙いだろう。
生産上の都合で、もうM2が生産されなくなるので、M5の搭載に舵を切ったのかもしれない。チップは基本的には大量生産が必要なので、Vision ProのためだけにM2チップを生産しつづけるわけにもいかないというような事情もあるのかも。
M5搭載によるパフォーマンスアップにより、処理全般の性能アップが図られるのはもちろん、最大120MHzまでリフレッシュレートを上げられるので、モーションプラーを減らすことができるようになったはずだ。
また、Macの外付けディスプレイとして使った時の性能も、M5の搭載によって向上しているという。
その他、新たにダブルニットバンドが用意された。
従来のVision Proの大きな問題は、前側にかかる重量を支えるためにバンドを強めに締めなければならないことになる。上部にバンドが設けられると、装着感はかなり良くなると思われる。
筆者も従来のソロニットバンドに、社外品の頭頂部へのマウントを使うようになってからは、非常に楽に長時間使えるようになっている。
今度のダブルニットバンドは、左右のダイヤルを回すことで頭頂部と、頭後部のバンドの締めつけを調整できるようになっていて、長時間の利用にも配慮されているように思える。また前の重量を支えるためには頭頂部のバンドは少し前に傾いている方が楽。写真を見る限りでは、その点にも配慮されているので、かなり期待できる。
というわけで、筆者もダブルニットバンドは購入した(さすがに本体を更新する資金はないので……)。
M5は第3世代の3nmプロセス。A19 Proと同じくNeural Accelerator搭載が特徴
最後に、一番肝心な部分であるM5チップの説明について解説しておこう。
製造はiPhone 17 Proなどに搭載されるA19 Proチップと同世代の第3世代の3nmプロセスで行われるという。
最大の特徴はこれもA19 Proと同様にGPUをAI処理に使った時にアドバンテージが出るNeural Acceleratorを搭載したことだろう。これにより、GPUベースのAIワークロードの実行を高速化し、M4と比較して4倍を超えるピーク時のGPU演算性能を発揮するのだそうだ。
CPUは従来通り6つの高効率コアと最大4つの高性能コアで構成される最大10コアのCPU搭載。M4に比べて15%高速な処理を行えるという。また、ユニファイドメモリの帯域幅は約30パーセント増加して153GB/sになっている。この点も大きなデータを扱った時の処理能力を大きく向上させている。
Apple Siliconは、全般として1世代更新されるごとに15〜20%ほど性能を向上させているが、それを4世代分と考えると、M1に対してトータルで175〜200%に性能向上させていることになる。M1で「まだ使える」と思っている方も多いかもしれないが、2倍近い性能差は実際に使ってみるとかかなり性能向上を感じられそうだ。
MacBook Proは、M5 Pro、M5 Maxモデルがいつ出るのかによって購入の判断を迷う人もいるかもしれないが、iPad Proはプロのイラストレーター、デザイナーの方は「待っていました!」という方も多いだろう。価格も据え置きなので、お買い得なモデルだといえる。
Vision Proは初期モデルもを買った人でもおいそれと買い替えられる商品ではないと思うが、アップデートが行われたことで「アップルは本気でVision Proを成長させていくつもりだ」ということが対外的にも伝わるのは良いことだと思う。WWDCなどでもvisionOSのアップデートについての話を聞いたが、その時も本気度を強く感じた。逆に今アップデートが出たことで、すぐさま次世代版や廉価版が登場するわけではないことも分かった。Vision Pro M2が2年半ほど頑張ったことを考えると、Vision Pro M5も2年ほどは頑張るのだろうか? とすれば、本気で普及させるモデルのVision Proは2027年頃登場ということになる。こちらも将来の展望としてはとても楽しみだ。
(村上タクタ)
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