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アップル、iPadのProとAirを一新。ProにM4搭載、Airに13インチ追加、Apple Pencil Proも登場!

アップルが発表会を行い、iPad Proシリーズと、iPad Airシリーズを刷新した。それぞれに、11インチ、13インチの2種類をラインナップ。さらに、Apple Pencilに機能を追加したApple Pencil Proを用意。これらは円安の影響で日本ではかなり高価な価格設定となった。また、新型iPad Pro/Airの高性能を活かしたiPad用のFinal Cut Pro 2とLogic Pro 2もローンチ。最も廉価だったiPad(第9世代)はラインナップから消え、iPad(第10世代)はUSでも日本でも値下げ。また、日本ではiPad miniが値上げとなった。

すべてのアップル製品の頂点にiPad Proが

もっとも特筆すべきは、最上位モデルであるiPad Proに、まだMacBook Proにさえも搭載されていないM4チップが搭載されたことだろう。

M3の発表が、昨年2023年10月30日だったから、M3が最速チップだった時代はわずか半年で終わったことになる。また、M3はiPhone 15 Proに搭載されたA17 Proと同じプロセスルールで設計されていたことを考えると、iPad Proに搭載されたM4チップは第2世代の3nmプロセスということであるから、このM4は秋に発表されるiPhone 16 Proに搭載されるであろうA18 Proと同じプロセスルールで設計されているのではないかと推測される。

Macどころか、iPhoneにも先んじて、もっとも高性能な設計のチップセットをiPad Proに搭載したというのは、これまでになかったことだ。

さらに、タンデムOLEDという新機構で、200万:1のコントラスト比、1000ニトの持続輝度、1600ニトの最大輝度を実現し、オプションでnano-textureガラスまで選択可能なディスプレイも奢られている。詳しい情報は取材せねばわからないが、数値的にはMacBook Proのディスプレイの性能を超えているし、おそらく実際にMacBook Proのディスプレイより美しいだろう。

ついにiPad Proがアップル製品の中で、フラッグシップになったとも言える。

とはいえ、代償としてかなり高価な製品になっており、この製品で大きく稼ぐと言えるクリエイターを除いては、日本では一般のユーザーには選択しにくい価格帯になっている。

対して、そこまでトップエンドではないが、現実的な選択肢として、iPad Airが用意される。こちらもMシリーズチップであるM2を搭載しており、十分な性能を持っている。また、新たに13インチのディスプレイサイズも用意された。これで「そこまで超高性能でなくてもいいが、大画面は欲しい」というニーズが満たされた。ちょうど、MacBook Air 15インチモデルのような存在だ。

WWDCを前にして、クリエイターに最強のツールが提供されたということだ。

また、iPadがハイエンドのクリエイターにとってデファクトスタンダードになっているという意味で、Apple Pencil Proの登場、その機能向上、性能向上も意義が大きいだろう。

なんとM4搭載。ディスプレイもMacBook Pro以上

では、それぞれに詳しく述べていこう。

iPad Proに搭載されたM4チップは、CPUとして最大4コアの高性能コアと、6コアの高効率コアを搭載。GPUも10コア。さらに、毎秒38兆回の演算が可能な16コアのNeural Engineを搭載。このNeural Engineは、今やiPadOSのさまざまなところで使われているAI処理を高速で行うことができる。

また、新しい高性能なディスプレイを駆動するためのディスプレイエンジンを搭載している他、M3チップに搭載されていたDynamic Caching、ハードウェアアクセラレーテッドレイトレーシング、ハードウェアアクセラレーテッドメッシュシェーディングなども、初めてiPadに搭載されたということになる。

ボディは、2018年にNYで発表されたモデルから基本的にはずっと共通だったが、今回かなり薄くなった。11インチモデルは5.9mm→5.3mmへと0.6mm薄くなり、12.9→13インチモデルは6.4→5.1mmへと1.3mm薄くなった。ちなみに、今回は従来と違って、大きい方が薄くなっている。現地に取材に行っている人によると、かなり薄く感じるとのこと。

カメラ部の意匠は薄型化のためか変更されている。また1200万画素広角カメラとLiDARは搭載されているが、超広角カメラは省略された。

内側のカメラは、横画面にした時の中央、つまり長辺に移動された。

また、新しいiPad Pro用にリファインされたMagic Keyboard(5万9800円)も用意されており、軽量になったとのこと。従来モデルはかなり重かったので、これは嬉しい。

Apple Pencil Pro(2万1800円)については後述するが、このiPad Proは、新しいApple Pencil Proと、Apple Pencil(USB-C)にしか対応していない。Apple Pencil(第1世代)に対応していないのは仕方ないとしても、Apple Pencil(第2世代)にも対応していないのは少し驚きだ。

高性能×円安だから仕方がないのだが、本機は驚くほど高価。最安モデルは11インチが16万8000円、13インチが21万8800円だが、13インチの2TB、セルラー、nano-textureディスプレイ搭載モデルで44万2800円。Magic Keyboard、Apple Pencil Proに、アップルケアも組み合わせると55万1200円となってしまう。

注意点としては、256GB、512GBの下位モデルと、1TB、2TBの上位モデルには仕様差が設けられていることが挙げられる。下位モデルはCPUの高性能コアが3コアで、8GB RAM、nano-textureディスプレイが選べない。上位モデルはCPUの高性能コアが4コアで、16GB RAM、nano-textureディスプレイが選択可能となっている。分かりにくい仕様なので、注意したい。

iPad Airには13インチが追加された

iPad Airの小さい方のモデルは、従来の10.9インチという表記から11インチという表記になっているが、ボディサイズも画面サイズも変わらないようだ。

13インチのiPad Airは、従来のiPad Pro 12.9インチと同じピクセル解像度。ただし、最大輝度は、11インチモデルと同様に600ニトだし、ProMotionには対応しない。本体の厚みも6.1mmと11インチモデルと同様。従来のiPad Proよりさらに少しだけ野暮ったく見えるようにデザインされているような気がする。

ただ、それでもM2チップを搭載しているし、ハイエンドなプロ仕様の要求がなければ、十分な性能を持っているといっていいだろう。

M2チップ搭載なのだから、多くのシーンで十分以上の性能がある。しかし、iPad Proが備えているような、トップエンドの処理能力、トップエンドのディスプレイの美しさは持っていないということだ。

ストレージ容量も、従来64GB、256GBだけだったのに対して、128GB、256GB、512GB、1TBと大きく選択肢が広がった。

iPad Proがあまりにも超高性能になったため、iPad Airは従来より広い範囲を受け持つようになったのだろう。iPad Proが超ハイエンドのプロフェッショナルだけを受け持ち、iPad Airは多くのプロフェッショナルもカバーするようになった感じだ。

Magic Keyboardは従来のiPad ProやAirが対応していたものと同じものが適合。Apple PencilはこちらもiPad Proと同様に、新しいApple Pencil Proと、Apple Pencil(USB-C)のみの対応となっている。

どういう感触か早く使ってみたいApple Pencil Pro

Apple Pencil Proは、第2世代のApple Pencilと同じく2万1800円だが、スクイーズ、バレルロール、触覚フィードバック、探す機能対応などの新機能を持ってる。

スクイーズは強く握りしめるような動作で、メニューなどを呼び出す機能を割り当てられる。バレルロールはApple Pencil Proのロールに機能を割り当てられるということ。たとえば平筆のような表現が可能になっている。

触覚フィードバックはつまりTaptic Engineを搭載したということ。メニューを選択した時に小さな振動のフィードバックが得られるようになった。

高価なApple Pencilを紛失すると悲しかったが(そして、しばしばこの高価なペンは紛失しそうになる)、Apple Pencil Proは『探す』機能に対応した。これは嬉しい情報だ。

ハードウェアの性能を引き出すアプリも発表

Final Cut Pro 2と、Logic Pro 2が登場し、映像編集と、音楽編集において、iPad Pro/Airは非常に強力なツールになりそうだ。iPadならではの直感的な操作で、Macで行うのと同等かそれ以上にスマートな編集/制作作業が可能になる。

特に、Final Cut Pro 2は、iPadやiPhoneをワイヤレスで同期するマルチカムとして扱うことができ、iPhoneやiPadだけで、複数の視点からの映像を同時に撮影し、取り込むことができる。これは映像編集を行う人にとっては画期的な機能だといえるだろう。

iPad(第10世代)はなんとか値下げ、iPad miniは値上げ

iPad(第9世代)がカタログ落ちしたというのは、教育市場においては大きなニュースだろう。

iPad(第10世代)は5万8800円に値下げされた(当初6万6800円と表示されていたので、日本は値下げなしかと思ったが、その後書き換えられた。

GIGAスクール構想のひとりあたりの予算が、5万5000円ということなので、なんとかそこに(学割を含めると)収まる値段にしたのかもしれない。

iPad miniは、残念ながら逆に値上がりとなってしまった。

破壊を経ないと、新しいクリエイティブは生まれないのか?

ところで、新しいiPad Proの広告動画がちょっと悪い意味で話題になっている。

すべてのクリエイティブツールをプレス機で押しつぶしたらiPad Proになった……という趣旨の動画なのだが、どうもクリエイターの端くれとしては、楽器や、カメラが押しつぶされている映像は悲しい気持ちにさせられる。

『芸術は爆発』かもしれないし、表現には常に代償がつきまとうのかもしれないが、私は悲しくなった。アップルはクリエイターの愛する道具を大事にする会社だと思っていたし、なんというか残念だ。

もっとも、英語圏では少し違ったニュアンスがあるのかもしれないので、単純に批判することはできないが。

iPad ProもiPad Airも素晴らしい商品だと思う。Apple Pencil Proを使ってみるのも楽しみだ。しかし、ちょっと我々日本人にとっては高価に過ぎる値付けだし、このCMを残念にも思う。

ともあれ、実際に触ってみてからその価値については考えよう。

(村上タクタ)

この記事を書いた人
村上タクタ
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村上タクタ

おせっかいデジタル案内人

「ThunderVolt」編集長。IT系メディア編集歴12年。USのiPhone発表会に呼ばれる数少ない日本人プレスのひとり。趣味の雑誌ひと筋で編集し続けて30年。バイク、ラジコン飛行機、海水魚とサンゴの飼育、園芸など、作った雑誌は600冊以上。
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