※観戦チケットは日産自動車にご提供いただきました。
始まって10年目。7年目から世界格式の自動車レース
まず、フォーミュラEというカテゴリーについて、説明しておこう。
来たるEVの時代にも、技術革新、エンターテイメントのために、EVのレースが必要……ということで、フォーミュラEが始まったのは2014年。当初は世界選手権(Grand Prix)ではなくE-Prixと呼ばれた。2020年のシーズン7から国際自動車連盟(FIA)格式の世界選手権に格上げされたが、E-Prixの呼称は継続されている。
初年度はワンメイクレース(同じ車両、パワーユニットで競う)だったが、2年目からはパワーユニットは各チーム独自開発、シーズン5(2018年)からはGen2、シーズン7(2020年)からはGen2 EVO、シーズン9(2022年)からはGen3へとレギュレーションが進化しており、パワーアップ化、安全性の向上、環境性能の向上などが図られている。
たとえば、Gen2は250kW(レース時200kW)だったが、Gen3は350kW(レース時300kW)になっており、回生ブレーキ出力の向上、それにともなうリアの油圧ブレーキの廃止などが行われている。
フォーミュラカーというのは、車輪と人の頭部(ヘルメット)が露出するのが特徴なのだが、その形状もF1とは違うレギュレーションにより独自の進化を遂げている。
そもそも、性能上は車輪も人も覆ってしまった方が優れたものになるのだが、性能が先鋭的になると危険度も増す(たとえば、グループCカーのように全体を翼断面形状にすると、スピンをした時に逆に空に舞い上がってしまったりする事故が起こりかねず、その対策が必要になる)ので、フォーミュラカーは逆にそれらを露出することで、性能を抑制し、さらにエンターテイメント性を増すということになっている。
対して、タイヤが露出していると、接触した時に相手のクルマが車輪の回転により、跳ね上げられるというような側面もあり、前後のウイングやボディ形状の工夫により、それらの事故が起こりにくいようになっている。
また、F1同様、頭部の安全性を高めるためのカーボンコンポジットのHalo(頭を守るフレーム)も設けられている。
市街地開催のリスクと面白さ
フォーミュラEは『CO2や大きな音を出さない』という側面から、市街地開催が大きなテーマになっている。
F1でもそうだが、市街地開催にはいろいろ難しい問題がある。
路面は専用路面(サーキットのアスファルトは粒が粗くてグリップが高い)ではないし、コーナーにバンクもない。そして、安全のためのグラベルエリア(一般のサーキットにはコーナーアウト側に設けられており、壁に衝突するまでに速度を和らげる役割がある)も設けられない。
その代わり、壁にぶつかるにしても側面から当たるような設計になっており、観客席に突っ込まないような高いフェンスが設けられる。
また、カーボンモノコックのボディを持つフォーミュラカーの高い安全性も前提となっている。
たとえばF1においても、歴史あるモナコや、市街地開催では有名かつ身近なシンガポール、そして昨今スフィアですごく話題になったアメリカのラスベガスでの開催は、そういう前提で行われている。
その代わり、観客席はコースの近くに設けることができるし、都市部で開催されるので、興行的にも有利(鈴鹿、FISCO、もてぎ、TI、大分阿蘇……など、いずれも途方もなく不便な場所にあるのはご存知の通り)。周辺のビジネスにも好影響を与えるだろうし、チーム関係者や観客の宿泊設備も準備しやすい。
今回のフォーミュラEも、CO2を排出しない環境先進都市「ゼロエミッション東京」のコンセプトに見合ったということで、東京のお台場で開催されるが、60年代以降日本での公道レースというのはなかなか敷居が高かったので、これを気にこういう機会が増えていけばいいな……と思う。
『デュエル方式予選』と、レース中の『アタックモード』
今回のコースは、東京お台場、ビッグサイト東棟とその奥の駐車場のエリアを公道封鎖して行うもの。ちょうど、ビッグサイト東棟の奥の駐車場が観客席になっている格好だ。ホームストレートとグランドスタンドになっている。
レースフォーマットもユニークで、基本的には1日開催で、練習走行から予選、決勝が行われる。
レースはエンターテイメント性を重視したフォーマットになっており、まずA、Bふたつのグループで12分間のセッションを行い、各グループの上位4台を決め、その合計8台で、1対1で対決するデュエル方式で、トーナメント式で争い、準々決勝、準決勝、決勝と争って順位を決める。このデュエルでは350kWのフルパワーを使える。
フルパワーを常時使うとバッテリーが持たないとか、いろいろ事情はあるようだが、決勝レースでは300kWにパワーは制限されている。ただし、特定の条件で『アタックモード』にすると、フルパワーの350kWを使えるというゲームっぽいレギュレーション。
レース中にアタックモードに入れるには、特定のコーナーのアウト側にある『アクティベーションレーン』を走らないといけないらしい。
つまり、コーナーを遠回りして、ちょっと遅れるけど、『アタックモード』に入ると速い……ということらしい。『アタックモード』はレース中合計8分間を分割して使うとのこと。通常、多少パワーが上がってもラップタイムを向上させるのはなかなか難しいものだから(直線パワーがあれば抜きやすくはあると思うけど)、これをどういう風に使うのか戦略は難しそう。
アタックモードはレース中に2度使うことが義務付けられているとのこと。
有名ドライバーがたくさん。当然日産の上位進出を期待したい
現在の参戦チームは、日産をはじめ、10チームで、ドライバーは20人。
昨年のランキングを見ると、イギリスのエンヴィジョンレーシング、ジャガーレーシングが1、2位を占めている。3位はアメリカのアンドレッティ。4位にポルシェ、5位がアメリカのDSペンスキー、6位マセラティ、7位日産、8位マクラーレン……となっている。
参戦ドライバーはF1に昇格前、もしくはF1引退後……というドライバーが多く、豪華。F1好きなら知ってる名前もちらほら出てくる感じだ。
日産のドライバーは、ゼッケン22オリバー・ローランド(英)と、23サッシャ・フェネストラズ(仏)。覚えておきたい。
日産はまだトップを争うチームではないようだが、上昇機運にはある模様。地元日本での活躍を期待したい。
なんと、土曜日の昼間には地上波中継も! BSフジなら予選も見られる
観戦チケットはすでに売り切れなのは残念だが、テレビ放映がある。
今回はフォーミュラE初となる地上波で、明日3月30日土曜日14:35〜16:30、フジテレビ(関東ローカル)で生放送が行われる。
また、BSフジでは10:00〜12:00に予選の生中継。14:35〜16:30には決勝の生中継が行なわれる。
その他、J SPORTSやJ SPORTSオンデマンドではさらに多くの番組が組まれているし、フリー走行の1回目と2回目はフォーミュラE公式YouTubeで配信されるという( https://www.youtube.com/@FIAFormulaE/ )。ぜひご覧いただきたい。
初の日本開催! どんなレースなのか、体験してきます!
エンジン音のないレース。排気量で規定されたり、エンジン燃焼の出力を競ったりするのではないレースがどのようなものなのか、興味深い。
その代わり、市街地開催や、予選のデュエル、アタックモードなどの工夫がされているわけで、ちょっとEスポーツなども意識しているような構成だ。
現地からレースを楽しんで、その様子をレポートしたいと思う。
(村上タクタ)
(写真は日産提供)
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