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Meta Quest Proの仮想ワークスペースを、アップル眼鏡発表?の前に体験した

WWDCでアップルの眼鏡型デバイスが発表されるというウワサで持ち切りだが、それがどんなデバイスなのかはさっぱりわからない。

対して、FacebookことMetaは、VRゴーグルに全振りで開発を続けている。そして、世間では「案外メタバース市場は広がってない」とか言われている。

筆者は、2018年にOculus Goが発売された時にはすぐに買って「これからはVRの時代だ!」なんて言って、2019年にOculus Quest、2020年にはOculus Quest 2を入手し、盛り上がっていたのだが、以来あまりメタバースの世界にはハマってない。

メタバース世界に行ってるヒマがないとか、ゲームやったらめっちゃVR酔いしたとか、いろいろあるが、ともあれご無沙汰していた。

そして、最新の最上級モデルであるMeta Quest Proは、昨年秋の発売時には22万6800円とお高かったこともあって、触れていない。これは、今このタイミングで触れておくべきだと思って、Metaの広報の方に頼んで、体験させていただいた。ちなみに、円安に反してMeta Quest Proは値下げされており、15万9500円になっている。

Quest 2より圧倒的に高性能なQuest Proのハードウェア

Meta Quest Proは片目につき1800 x 1920ピクセルのローカルディミング対応(コントラストが高い)のLCDパネルを2枚装備しており、水平106°×垂直96°の視野角を実現。新設計のパンケーキレンズによって、光学スタックはQuest 2に較べても40%薄くなっている。

そのQuest 2の4倍の画像情報を高速に処理するためにチップセットも劇的に処理能力の高いモノが採用されており、オーディオも、マイクも、コントローラーもすべてがリッチな情報を提供するようになっている。

Quest 2までは、ゴーグル部分が重かったので、常にズリ落ちそうになるゴーグル部分を持ち上げるアクションが必要だったが、Quest Proでは後頭部にバッテリーが配置され、前後の重量バランスが劇的に改善。装着感が非常によくなった。

ゴーグルを着けてVR空間に入って最初に感じるのはその解像度の高さだ。

Quest 2を使ってる時に解像度に不満を持ってはいなかったのだが、Quest Proに入った途端、それが低画質だったことに気が付いた。解像度が上がると、リアリティが増す。言葉で説明するのは難しいが、リアリティが増すと、より『その世界がある感』が増すので、没入感はすごいし、疲れも減る気がする。

VR空間内で実際的に仕事ができる

Horizon Workroomsを使ってみる。

VR空間上のワークスペースに、自分のMacとそのディスプレイを登場させられるというアプリだ。現状、Quest ProだけでなくQuest 2でも使えるそうなのだが、使ってみたことがなかった。

キーボードは実際に物理キーボードが使えるのだが、ディスプレイはVR空間内に表示されている。これが意外なほど違和感なく仕事できるのだ。タッチタイピングができるという前提はあるが、VR空間内で問題なく原稿を書ける。

Quest 2よりバランス良いヘッドセットなので、長時間使っても違和感はない。

ヘッドセットさえ持っていれば、どんな大きなディスプレイでも利用できるので、案外と出先での仕事はVR空間内でやった方が効率的かもしれない。集中もできるし。

Horizon Workroomsのもうひとつの特徴は、他の人とミーティングできること。

正直なところ、ビデオ会議より実際に会っている感覚に近く、人との距離の近さ、同じ空間にいるフィーリングがあるので、ちゃんと普及すればビデオ会議よりこちらの方が会議には向いていると思う。対面でも、人数が多くても問題なく会議できるし、狭くて困るなんてこともないわけだから、かなり便利だ。

しかも、最新のHorizon Workroomsでは、VRゴーグルを使っていない人でもスマホやパソコンから会議に参加できるので、『VRゴーグルを持っていない人がいるから、VR空間内で会議できない』ということもない。ちゃんと、VR空間内でのミーティングは次のステップに進んでいるのだ。

コントローラーの下にプラスチックのチップが付いており、それをペンのように使って、絵や文字を描くこともできる。

それをVR空間内の壁に投映して、みんなで議論したり、そこに付箋を貼ったりもできる。想像できることならなんでもできるのがVR空間内の素晴らしさだ。

こんな空間で、他の人とミーティングしていても、リアル空間の私は、ゴーグルをして座ってるだけ。ちょっと不思議な感じがする。今、広い会議室でいろいろな人とミーティングして、パソコンでメモを取っているのだが……。

Arkioで『都市創造』を体験

もうひとつ、大変ユニークなアプリを試させていただいた。

これは、建築家、設計者のための『Arkio』(アーキオ)というアプリだ。

このアプリは、建物の建築のCADデータを取り込んで、VR空間内に街や建物を現出させることができる。

そして、その中に新たに建物を建てたり、一部加工したりできるのだ。

そればかりか、図面の中の1/1サイズになって、その街に立ち、建築物に立ち入ったら、どういう風景を見ることができるのか? 実際にVR空間内で試すことができるのだ。

さらに、この空間は仲間と共有することができる。多くの人が実際に3Dを見ながら会話しつつ建物を作ってみたりできるのだ。これは新時代のコラボレーション感覚。

従来は、図面を前にして話をするしかなかったのが、実際にその立体物をみんなで見たり、自分が1/1サイズになってその空間に入ってみたりできる。

もちろん、図面を読める専門家は、脳内でイメージできていたのだろうが、これなら専門家でなくても完成品を体感することができそうだ。

VRからMRヘ

また、Quest ProはQuest 2よりはるかに高精度で、解像度の高いカメラを外部に持っており、VR空間の映像をMR映像として、表示することができる。

現実空間の部屋や物体の形状を読み込んで、これをVR空間の映像とミックスして表示できるのだ。このMR表示により、従来VR空間に閉じていたものを現実空間と繋げることができる。フェイストラッキングにより、自分の表情もアバターに反映されている。

Quest ProにはQuest 2より歪みなく、正確に外部を映し出すカメラが搭載されている。この映像を素早くVR映像とミックスし、我々が『ズレている』と感じないレスポンスで表示するのはかなり難しいことだろう。

レイテンシーがかなり小さくないと、我々はズレを感じるし、場合によっては『VR酔い』してしまったりする。Quest Proの解像度の高さと、レイテンシーの小ささは、酔いをかなり低減してくれる。

これは、MR空間に現われた生物をなでているところ。

実際に存在するカーペットの上に、実際に存在しない謎の生物がいる。ここに、現実の犬や猫がいたら、かなり混乱することだろう。そのぐらいMR空間上に存在する生物にはリアリティがあった。

当初22万6800円で登場したQuest Proを体験した人は多くはないと思うが、こちらが本来Metaが実現したかった方向であることは言うまでもないだろう。

大きな可能性。だが、まだ答えは出ていない

こうしてみると、Quest 2は非常に安価で(現在最廉価モデルが5万9400円)、少し興味のある人は誰もがVR空間を体験できた。しかし、次のステップであるVR空間内での仕事や、MR表現においてはQuest Proの性能が必要であることもよくわかる。

そこに、デスクトップパソコンを使ってのVR表現とか、他のデバイスとかいろいろ加わってくると、VR初心者としてはどちらに進んだらいいのかよくわからない。こうしてみると、VR/MRはまだまだ黎明期で、次のステップが必要なのだ。

Quest Proは明らかに優れた性能を持ってるが、ニーズと、価格と、アプリケーションなどのソフトウェア面において、まだ安定した立ち位置を見つけられていないように思う。

しかし、Metaが、この分野において圧倒的に大きな基盤を持っていることは間違いない。アップルはこの分野に参入してくるのだろうか? 『閉じたVR』に対して否定的なアップルは、ARの方向から異なったアプローチをしてくるのだろうか?

Quest Proの優れたハードウェアを見ていると、VR/MR/ARの世界には、まだまだ大きな可能性があるように思う。

(村上タクタ)

追記:今夜、Meta Quest Gaming Showcase 2023が開催されます。新製品、発表されるかも。

この記事を書いた人
村上タクタ
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村上タクタ

おせっかいデジタル案内人

「ThunderVolt」編集長。IT系メディア編集歴12年。USのiPhone発表会に呼ばれる数少ない日本人プレスのひとり。趣味の雑誌ひと筋で編集し続けて30年。バイク、ラジコン飛行機、海水魚とサンゴの飼育、園芸など、作った雑誌は600冊以上。
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