地味だが着実な中核モデルの進化
Series 8のハードウェア的な進化ポイントは、S8チップ、皮膚温センサー、そして省電力モードを搭載していること。
派手な進化はないが、情報を収集してiPhoneやクラウドに蓄積していくという意味で、Apple Watchの性能自体は爛熟期に入ってきたのかもしれない。本体の素材、ディスプレイのサイズや、明るさ……などに違いはない。
ケースサイズ45mmのディスプレイが396×484ピクセル、41mmが352×430ピクセルというのもSeries 7と変わらない。ディスプレイは常時点灯式。
対して、SE2は常時点灯式ではなく、44mmのケースが368×448ピクセル、40mmのケースが324×394ピクセルとわずかながら画面サイズが小さい。
Series 8の最大の変更点が皮膚温センサーを搭載したこと。女性の睡眠時の皮膚温を計測し生理周期を推定することができる。
一般的な体温とは指標が違うため、いわゆる体温計の計測値と同様に扱うことはできないが、ひとつの健康の指標として扱うことができるとのこと。
中高年以上の人は、ぜひSeries 8を
Series 8とSE2の一番大きな相違点は、Series 8の方が健康を測定するためのセンサーを多く搭載していることにある。
これらのセンサーは、生活習慣病に関するリスクを感知することができるので、中高年の方は、ぜひSeries 8をお求めいただきたい。逆に、肺や心臓の重篤な病気のリスクが少ない若い人はSE2で十分という判断もあると思う。価格はSeries 8が5万9800円(税込)〜、SE2が3万7800円(税込)〜となっている。2万2000円の価格差は大きい。
心拍はどちらでも取れるのだが、心電図も取得できる電気式の心拍センサーを備えているのがSeries 8。不整脈などのリスクを感知することができる。また心筋梗塞などの症状があった時にも、その場ですぐに心電図が取得できるメリットは大きい。
また、Series 8は血中酸素ウェルネスアプリを搭載する。こちらも健康の指標として大きく役に立つ。
watchOS 9の睡眠データ取得機能が便利
Series 8、SE2の機能ではないが、watchOS 9を搭載したApple Watchでは、睡眠のデータを取得することができる。
これまで睡眠のデータを取得できるサードパーティアプリは数多くあったが、ようやく純正アプリが登場するというのは、アップルが医学的なエビデンスを取得するのに慎重であったからではないかと思う。満を持して登場した睡眠アプリのデータは信頼性が高いはず。
ちなみに、上の写真は筆者の睡眠データ。フリーランスになって睡眠時間は確保できるようになったものの、逆に夜寝つかれなくなっているのだが、実際に何度も覚醒してしまっていることがデータに表れている。
Apple Watch版『お薬手帳』
iPhoneと連動するアプリで、『服薬』というアプリも登場した。薬は自分で登録しなければならないが、特定の時間になると、薬を飲むように通知してくれる。
とはいえ、『食前』『食後』という単位では通知できないので、規則正しく生活しないと、ズレたタイミングで通知が来ることになってしまうが。
生涯活用したくない機能も
Apple Watch Series 8、SE2、そして同日に発売されるiPhone 14シリーズにはすべて衝突事故検出の機能が搭載される。交通事故が起こった時に、その衝撃や、気圧の変化(エアバックが開くことによる)、音など多角的な情報を検知して、事故があることを把握し、ユーザーの操作がなければ、自動的に緊急通報を行うことができるようになった。
こればかりは試すこともできないし、生涯にわたって使わずにおきたい機能ではあるが、場合によっては大変役に立つ機能であるといえる。また、アメリカやカナダでは、非常時には人工衛星を使った通信で緊急通報を行うことができる。
郊外になると携帯電話の電波のエリア外である場所も多く、そういう場所で事故が起こった場合に救急車の到着が非常に遅れる可能性がある。必要性の高い機能だといえるだろう。
『睡眠』解除はデジタルクラウン長押し
最後になったが、筆者がwatchOS 9で少々戸惑った機能を。
睡眠スケジュールの期間中にApple Watchを操作する場合、従来はデジタルクラウンをクルクル回さないといけなかったのだが、この操作が『デジタルクラウン長押し』に変わった。
たしかに、夜中に起きた時にデジタルクラウンを必死になって回すのは面倒……と思っていたので助かるが、慣れるまでは少々戸惑う。同じところに引っ掛かる人がいるかもしれないので、ここに記しておく。
(村上タクタ)
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