ひと箱だけ置いてみたら古着好きの行列ができた。
その頃から古着のポップアップイベントが増え始めた。子育てがひと段落した中山さんも、刺激を受ける意味で挑戦した。「そしたら衝撃を受けちゃって」と笑う。
「他の店の方々の古着の見せ方、売り方がまったく違う。『コレはかなわない』と思っちゃったんです」
ひと世代下の彼らは、2000年代の古着もハイブランドのようにうまくディスプレイ。さらに年代にもテイストにも縛られず、着こなしを提案し、強気の値付けで、しっかり売っていた。同じフィールドでは勝ち目がないと感じた。
ただ、これが好機となる。
「じゃあ違うフィールドに行こうと。タブロイド紙やポスターにチェンジしたんです。実は買い付けのたび、好きでその辺を集めていたので」
気力も体力もそがれる仕入れの旅。途中、サンタモニカやロングビーチにあるレコードショップでリフレッシュするのが常だった。旧いレコードと共に『ローリング・ストーン』や『NME』などのタブロイド紙があり、いつしかコレクションしていた。額装などを施すとインテリアに最適。お土産として喜ばれてもいた。
「それが部屋の半分が埋まるほどたまっていた。試しに別のポップアップで一箱だけ置いてみたら」
『スライのこれ、ヤバいですね』
『ニルヴァーナないですか?』
熱量たっぷりに箱を掘る人が集まり、行列が生まれた。次回は3箱をタブロイド紙に。その次は映画も。次は額装をして──。
「ことのほか古着好きの方々に刺さったんです。考えてみたら私自身が古着好きで、カルチャー好きで、集めていたわけですからね」
『ウッドマーキー』はこうして生まれた。店名はロックの聖地ウッドストックと額の素材の「ウッド」、そこに店のひさしを意味する「マーキー」を足して、つけた。
「実はテレヴィジョンの『マーキー・ムーン』て曲が好きで、そこにもちなんでいます。いいんですよね。NYのあの頃の暗めのパンク。なかったかな切り抜き……」
たった1枚の紙から、また奥行きのある話が続く続く。中山さんはこれからもこっち側で楽しむ。
ロックや映画のアイコン達も。旧いプリントTを愛でるように、グラフィックを堪能する。
店舗は持たず普段はポップアップとオンラインでの販売。時代の空気が漂う、雰囲気のあるグラフィックデザインを壁や天井に飾る生活を提案する。「最近は音楽、ロックものよりも、’90年代の映画が人気ですね」
週末を中心に、ポップアップストアを精力的に展開。ルーツである古着店や古着イベントへの出店が多く、ヴィンテージTシャツを掘るように『レザボアドッグス』や『ファイトクラブ』、レッチリやソニック・ユースを掘る列ができるとか。
タランティーノ、ジョー・ストラマー、ギンズバーグ、ヴェンダース──。リビングの壁や寝室の奥がさびしいなら、きっと彼らの出番です。
中山さんが買い付け、選び、額装した、ロックや映画のピンナップやポスターは、どれもこれも抜群に洒脱だ。マイ・ベストを選ぶもよし、ジャケ買いのように掘るのもよし。部屋やガレージを紙で飾れ。
1990s
映画も音楽もメインストリームからインディーズの匂いがした頃。いま最も人気です
Pulp Fiction
「タランティーノは人気。全長160㎝ほどあるこれはフランス製なので、タバコや拳銃が消されています」。5万2800円
Wild at Heart
パルムドールを受賞したデヴィッド・リンチの傑作で怪作。大判ポスター。2万4000円
Bjork
1995年の英タブロイド誌『NME』の表紙。まだかわいさが色濃いビョーク、良い。4400円
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