震災をきっかけに好きなことをやることに。
2011年3月11日。都内も震度5の揺れが起き、電車が止まり、多くが帰宅難民になった。
『Yショップ上総屋』には途切れなく客が訪れ、水や食料を求められた。一方で住んでいたマンションで独居老人が冷蔵庫に下敷きになる事故が。他の住民と協力して何とか助けたが、相手とは面識もなく名前も顔も知らなかった。安堵と不安がこみあげたという。
「コンビニは単なる店じゃなくて近隣のライフラインだとますます感じた。なのにそもそも近隣の人同士が普段からつながりなく過ごしているのってどうなの? と」
だから自分の店を地域のコミュニティの場にしようと決めた。
まず店先に椅子とテーブルを用意。酒が飲める「角打ち」のようなイートインスペースを作った。すると近所の人、レコード好きの常連、近くで働くビジネスパーソンが混ざり、盛り上がり始めた。
『浜町って夜遊びできる場がないよね』『フリマもあるといいのに』。角打ちからアイデアが生まれ、店を舞台に実行した。そのフリマの際、古着やアクセに混じって進藤さんは初めてレコードを置いた。
「そしたら結構売れちゃって。で、今も売り続けているわけです」
店内を使ったDJイベントはさらに人気だった。何しろコンビニでまわせるとあり、小西康隆氏や須永辰緒氏といった著名DJが前のめりに参加してくれたからだ。
それでいて場所は非公開。「大川」と書かれた直線と、場所を示した「×」だけ記したフライヤーを都内のクラブで配った。進藤さんが一時、海外の野外レイヴパーティにハマっていたことがヒントになった。インドのゴアなんかでは、当たり前のように場所非公開でパーティが行われていたからだ。
「探し回って会場を見つけたときって高揚感がすごい。あのワクワクを東京でも味わってほしくて」
フタを開ければコンビニに辿りつく人が一晩で100人を超える人気イベントになっていった。冒頭のように海外からくるほどに。
こうしてモノだけではなく、コトも売る、世界でも稀な『レコードコンビニ』が浜町に生まれた。
今では気軽にDJプレイを学べる「DJ教室」も開催中。DJやミュージシャンと地方に出かけるツアーも頻繁に行い、大人気だ。
「それでも地域の集会場になって、誰かが出会い、つながれる場所になっているのが何よりうれしい」
興味がわいたら『レコードコンビニ』へぜひ。大川の、近くだ。
有線を切って、好きなレコードをかけて、ココが生まれた。
外観は完全にヤマザキショップ。実際、中にを踏み入れると、ちゃんとコンビニなのだが、しれっとレコードやグッズが置かれ、DJブースが隠れている。正しくレコードコンビニなのだ。
レジ裏の棚には、オアシスのアルバムと酒類が。「夜はカクテルを作ったりするので」。コンビニです。
ターゲットマークを模したテーブル席に「レコード買取中」の文字。しつこいですが、コンビニです。
週末となれば、コンビニ店内を使ったライブやDJイベントを開催。イベント中も普通にコンビニは営業中。なので「コーラを買うついでにふらっと参加する。なんて方も多いです」
かつて倉庫だった地下は完全にDJスペースに。「ここでもライブをしたり、DJ教室を開催したり」する。ただモノを買うのではなく、集い、楽しみ、体感するコンビニなのだ。