あなたにとってのアメリカとは? 名物リクラフター池岡さんにとっては本国ファクトリーで作ったスモークジャンパーでした。

アメリカンブーツを幅広く揃えるスタンプタウン渋谷にておもにブーツのリペアを担当する名物リクラフターの池岡さん。本国アメリカにてブーツ作りを学んだ彼のアメリカとは?

本国ファクトリーで作り、ヘビーユーズしていた想い出のスモークジャンパー。

アメリカ・ワシントン州東部にある中規模工業都市スポケーンに本拠地を構えるホワイツブーツ。創業から一貫してハンドソーンにこだわった質実剛健な作りを伝統とし、そのクオリティの高さゆえここ日本をはじめ、世界的にも「キング・オブ・ワークブーツ」と称される名ブランドだ。そんなホワイツブーツのサンクチュアリとも言える工房にて7年にもわたり、ブーツ作りを学んだ池岡さん。彼にとってのアメリカとは当然ブーツなのだが、他人と違うのは、本国アメリカにて初めて自分で製作したブーツだということ。

「2014年から2021年までホワイツブーツの本拠地であるスポケーンの工房で修行させてもらいました。ひと通りブーツ作りを学び、一足を仕上げることは可能ですが、工房で働く職人さんたちは分業された各工程を何十年と請け負ってきた超がつくほどのベテラン。そんななか、一足を最初から最後まで作るというのは、とてもおこがましく思えてしまうのですが、ブーツ作りを学びに行っている以上、一足を製作する使命もあり、2016年に初めて自分でブーツを作ってみました。もちろん不慣れな工程もあるので、職人さんにアドバイスをもらったり、手を貸してもらいながら仕上がったのがこのスモークジャンパーです。アメリカで主流の10インチのハイトを選び、アッパーの革は8オンス前後の分厚いオイルレザーを使用。ラストはスモークジャンパーの定番として長く使われている#4811。丸みを帯びたぽってりとしたトゥが特徴です」

約10年前に自ら製作したスモークジャンパーは池岡さんのアメリカ修行時代の相棒。ほぼ毎日のように履き、このブーツで通勤はもとより、工房内も歩き回っていたという。その証としてアウトソールには、工房内で知らずのうちに踏んでしまったブーツのパーツであるビスなどを踏んだままの状態で残されている。

「リアルに作業靴として履いていたブーツなので、あえて大したメンテナンスはしていないのですが、クオリティが高いオイルレザーを使用しているので自然に表現されたエイジングがかっこよくて気に入っています。いまもたまに履いたりしますがブラッシングする程度で丁寧に磨いたりとかはほとんどしたことがないですね。いつでもラフに履けるワークブーツですが最高峰と呼ばれる作りの良さはもちろん健在です。ボクにとってのアメリカを象徴するアイテムのひとつとしてこれからも大切にしていきたいですね」

カスタムオーダーが可能なホワイツブーツの良さを活かし、アッパーやパーツ、ソールを自分なりに組み立てて、なおかつ本国の伝統ある工房にて自ら仕上げたスペシャルオーダーのスモークジャンパー。唯一無二のブーツは他のブーツとは大きく異なる愛情が注がれている。そんな池岡さんがスタンプタウン渋谷にてホワイツのカスタムオーダーやリペアを担当してくれるのはボクらにとって安心して託せるのはいうまでもない。

「Stumptown」リクラフター・池岡大志|ワークブーツの最高峰として知られるホワイツブーツの本社工場にて7年にわたり、1からブーツ作りを学んだ池岡さん。現在はスタンプタウン渋谷にてホワイツブーツのカスタムオーダーやブーツのリペアなどを担当している。

WHITE’S BOOTS SMOKE JUMPER

アメリカの工房内で常に履いていたというブーツのアウトソールにはブーツ作りに必要な釘などを踏んでしまったまま残される。

ブーツの堅牢さがわかるソールとアッパーの縫製であるダブルステッチ。ヘビーに履いてもへこたれない頑丈さがホワイツの魅力。

アメリカの工場で勤務する際に制服のように着用していたブランドロゴがプリントされたTシャツ。池岡さんの思い出のアイテムだ。

ブーツ作りに欠かせない道具だが、使い勝手の良いお気に入りの道具は古市などを周り自分で見つけて購入していたという。

(出典/「Lightning 2025年5月号 Vol.373」)

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