MA-1は老若男女誰しもが知る、ミリタリーブームの火付け役。
数あるフライトジャケットの中でも、MA‒1は別格の存在である。端的に言うと「カッコ良さ」に尽きると思う。
まず腰上までの絶妙なミドル丈が秀逸。元々狭いコクピット内での運動性能を追求したデザインだが、結果、ファッション的にもラフに羽織れるブルゾンとして活用できること。そして米空軍独自に設定された気温域のインターメディエイトゾーン(マイナス10℃から10℃)に対応する防寒性能。戦闘機が飛ぶ最高高度5万フィート(15㎞)という上空での寒さに耐えうるこの防寒性能は真冬のファッションウエアとして最適だ。
それから男心をくすぐるのが、MA‒1にまつわる歴史的背景や、機能性をアップデートすることによって生じたデザインの変遷など。知識欲とコレクション欲を刺激する事柄がいっぱいである。
特に30年以上もの長きに渡り米空軍パイロットへ支給され続け、合計8タイプ(フライトジャケットとしては6タイプ)もの変遷を遂げてきたのはMA‒1ぐらいなものだろう。つまりそれだけフライトジャケットとしての完成度が高かったと言うこと。後継モデルのCWU‒45/Pが採用された後でも、1980年代までグランドクルー用に使われていたことが、米空軍にとってもMA‒1が銘品であると言うことを裏付けている。
往年の俳優が映画で着用したことも、銘品としての格を上げる要素にもなった。1980年に製作された実在の賞金稼ぎラルフ・ソーソンの半生を描いたスティーヴ・マックイーン主演映画『ザ・ハンター』である。賞金稼ぎのユニフォームかのように扱われるMA‒1の正統なアメカジの着こなしに、思わずときめいた読者諸兄姉も多いことだろう。また実際に余命数ヶ月の宣告を受け死期が迫るマックィーンのMA‒1を羽織った姿に、生き様にこだわった男の色気を感じてしまう。
このように日常の道具としてもファッションウエアとしてもカッコ良く使えてしまうMA‒1だからこそ、現代でも銘品として愛されるのだろう。
[MA-1 の主な歴史]
1944年 米陸軍航空隊(USAAF)にインターミディエイトゾーン(−10℃~10℃)用フライトジャケットとしてMA-1の起源となるB-15が採用
1947年 米陸軍航空隊(USAAF)が陸軍から独立、米空軍(USAF)として組織編成される
1950年代初頭 1953年に支給されたB-15Dの後継モデルとして、1950年代初頭(1953~1955年)にMA-1のテストサンプル開発が始まる
1950年代中頃 米空軍(USAF)にMA-1(MIL-J-8279/1stモデル)が正式支給(1955~1956年)される。
1956年 USAFにてテクニカルオーダー指示書により、B-15A~B-15Dの前身モデルを一斉にムートン襟からリブニット襟に改修する(通称Mod.)
1957年 MA-1 Aタイプ(MIL-J-8279A/2ndモデル)が登場
1960年 MA-1 Bタイプ(MIL-J-8279B/3rdモデル)が登場
1961年 MA-1 Cタイプ(MIL-J-8279C/4thモデル)が登場
1968年 MA-1 Dタイプ(MIL-J-8279D/5thモデル)が登場
1972年 MA-1 Eタイプ(MIL-J-8279E/6thモデル)が登場。フライトジャケットとしての最終モデルとなる
1976年 MA-1の後継モデルであるCWU-45/Pが米空軍(USAF)に採用される。MA-1のF・Gタイプは1980年代までグランドクルー(地上勤務要員)に支給され続ける
【銘品】Type MA-1 MIL-J-8279
USAFの主力航空機がジェット戦闘機へと進化。それに伴い前身モデルであるB-15Dを改良・進化させて誕生したのがMA-1(MIL-J-8279)である。今日のファッションシーンの影響力を考えると、優れた銘品であると言わざるを得ない。
【MA-1コラム】航空機の進化に合わせて装備品であるフライトジャケットも進化。
ジョット戦闘機用のヘルメットが大型になったため、ムートン襟からリブニット襟に改修したB-15Dと同形状のMA-1テストサンプルを試験運用、のちにMA-1として正式支給される。やがてナイロンから難燃素材ノーメックスを使用したCWU-45/Pへとモデルが進化していく。
B-15D Mod.
MA-1 TEST SAMPLE
CWU-45/P
(出典/「Lightning 2025年1月号 Vol.369」)
Text/A.Shirasawa 白澤亜動
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