新型だけでなく国産旧車でも大定番の名車フェアレディZを深掘り。

国産旧車を語るうえで外すことができない名車として知られる日産フェアレディZ。その活躍は国内だけでなく、海外(とくにアメリカ市場)にまで及び、日産の海外進出の先駆者(車)になったエポックメイキングなモデルなのだ。それだけの名車を知らないままではおもしろくない。世界の自動車史にも影響を与えた名車をここで深掘りしてみる。

当時の欧州車も凌駕した安価で速いGTカー。

フェアレディZが生まれたのは1969年、それまであったオープンスポーツモデルのダットサン・フェアレディを引き継ぐカタチで登場し、コンセプトはヨーロッパの高級GTカーに負けないスペック、デザイン、そして一般庶民でも手が届く価格帯を目指して開発された。

発売から当時の巨大市場だった北米でも受け入れられ(アメリカではダットサンZの車名で売られた)、日産の世界進出を不動のモノにするきっかけを作ったモデルになった。

もちろん、その人気の裏には世界で通用するパフォーマンスとデザイン性の高さによるもの。以降、半世紀以上生産されるという名車へと登りつめていったのだ。

第1世代 1969~1978年 世界的にもクラシックカーとして認知される初代Z。

当初は2シーターだったが、1973年秋にロングホイールベースで四人乗車可能な2by2が登場。これは1974年式。Photo by Nissan Motor Corporation

北米などではZ-Carという愛称で呼ばれるほど、世界中で受け入れられた初代(S30型)。ロングノーズ、ショートデッキというGTカーならではのスタイルと、当時最新の機構だった軽量化されたモノコックボディや四輪独立サスなど、高級GTカーに匹敵するポテンシャルを持っていた。

さらにレースにも積極的に参戦して好成績を残すことで、フェアレディZの認知度はさらに高まり、その成功にひと役買っている。

搭載されたエンジンは、日産の名機と言われるL型直列SOHC6気筒。国内では2L、北米では排気量の拡大された2.4Lが主流だった。

3スポークのステアリングや、センターダッシュ上に埋め込まれた3連メーターなど、走りを想起させるスポーティな内装デザインも魅力のひとつだった。Photo by Nissan Motor Corporation
フェアレディZはレースにも積極的に参戦してそのパフォーマンスを見せつけた。欧米のGTカーがひしめく1970年のアメリカSCCAナショナルレースでは優勝を飾った。Photo by Nissan Motor Corporation
ロードレースにとどまらず、ラリーにも参戦。これは1971年のモンテカルロラリーでのひとこま。この年は総合5位、クラス2位を獲得している。あらゆる状況下でフェアレディの走破性の高さを世界に見せつけた。Photo by Nissan Motor Corporation

第2世代 1978~1983年 先代をデザイン、性能ともブラッシュアップした世代。

初代のデザインを引き継ぎながらも空力性能を追求することで、抑揚を押さえたシャープなフォルムへと変わった第2世代(S130型系)。

それまでの2000ccシリーズに加えて、2800ccシリーズが追加されて、これは「フェアレディ280Z」という呼称になった。

機構では4輪ディスクブレーキがこの世代から初めて採用され、走行性能がアップデートされているだけでなく、ボディは先代にはなかったルーフの左右が脱着できるTバールーフがラインナップした。これはアメリカやドイツ車のスポーツカーにも存在した脱着式ルーフにならったもので、北米でのセールスを意識した仕様といえる。

これが国産車では初めてのTバールーフ車となった。

2世代目になって室内空間は広げられたが、基本的なデザインは初代をベースに高級感を高めてアップデートされている。ステアリング中央が直線的なデザインになったのも時代感、Photo by Nissan Motor Corporation
2世代目になってボディはセンターピラー付きになり、剛性が高まり、安全性も向上。フロントにはアメリカ法規制に準拠した5マイルバンパーが装着される。Photo by Nissan Motor Corporation

第3世代 1983~1989年 空力性能を向上させたパラレルライズアップヘッドランプで登場。

空力性能をさらに煮詰めて、2代目よりもさらに無駄をそぎ落としたデザインに変わった第3世代(Z31型系)。もっとも変わったのはヘッドライトの形状。消灯時もライトの一部が見えているが、点灯時には上にヘッドランプが上がるというパラレルライズアップヘッドランプを採用している。リトラクタブルヘッドランプとはひと味違うデザインが独特だった。

エンジンは2L直列6気筒からV型6気筒ターボに変更され、2Lと3Lの排気量が存在した。

第4世代 1989~2000年 ロングノーズ、ショートデッキを踏襲しながらワイドなボディへと変貌。

バブル景気の影響からか、Zもそれまでのスタイルが一新され、ロングノーズ、ショートデッキながらワイド化された第4世代(Z32型系)。先代の特徴だったヘッドランプは固定式に変わったのはパーツ点数を少なくすることで、フロントの軽量化を考慮したからだと言われている。往年のファンには残念なデザインだったかもしれないが、後にランボルギーニがディアブロで同じ形状を採用するなど、世界の自動車業界的には評価されたデザインだった。

エンジンは3L V6の自然吸気とツインターボの2種類をラインナップ。ツインターボエンジンのモデルは当時の国産メーカーで初めて最大出力280PSに達するというマッスルなスペックだった。

ボディバリエーションはフェアレディZで初めて2シーターモデルにのみフルオープンモデルとなるコンバーチブルが1992年に登場。クーペ、Tバールーフ、コンバーチブルと選択肢が増えている。

第5世代 2002~2008年 2年の沈黙を破って復活した現代版フェアレディZ。

2000年にZの生産終了が発表されたが、当時のCEOに就任したカルロス・ゴーンの日産再生計画(日産リバイバルプラン)のひとつとしてZの復活が実現することで、2年の沈黙を破って生まれた第5世代(Z33型系)。

エンジンは先代同様のV6エンジンだが、新世代の3.5Lの自然吸気エンジンを搭載。ボディでは4人乗りの2by2はスカイラインクーペに任せることで廃止され、完全な2シータースポーツになった。ボディはクーペとオープンロードスターがチョイスできた。

第6世代前期 2008~2020年 くさび形のヘッドライトに進化。

先代のデザインをシェイプアップしたような第6世代前期(Z34型系前期)。ヘッドライトがくさび形のシャープなモノに変更され、スタイリングも先代のぼってりとしたものからシャープなイメージへと変化した。

大きく変わったのはホイールベースが先代よりも短くなったこと。これによって伝統的なロングノーズ、ショートデッキをより強調したイメージに進化した。エンジンは3.7L V6エンジンを標準搭載する。

第6世代後期 2022~現行モデル 型式は継続させ初代をオマージュしたデザインになった現行型。

見た目は大きく変更されたが、型式はそのままのため、フルモデルチェンジではなく、ビッグマイナーチェンジと位置付けられる第6世代後期モデルが現行型。一般人からしたらフルモデルチェンジに見えるほど変貌したけれど、第6世代前期型をブラッシュアップさせた位置付けなのが現行モデルとなる第6世代後期。

デザインは初代のZをオマージュした原点回帰したもので、ボディの基本構造は前期モデルと変わらない。他の自動車メーカーの多くが過去のモデルをオマージュしたデザインを積極的に採用していることもこの流れにひと役買ったと思われる。

往年のZファンには受け入れやすいスタイルに生まれ変わっただけでなく、初代Zに近づけるようなカスタムなども生まれている。

現行モデルの内装はダッシュボードのセンターに3連メーターをレイアウトするなど、初代モデルを意識したデザインになっている。Photo by Nissan Motor Corporation

新型の価格は? 納期は? 実は現在受注一時停止中。

現行モデルのフェアレディZは539万8800円から。といっても想定以上の多くのオーダーが入ったことと、世界的な半導体不足のために、2023年8月にはオーダーの受付を一時停止するというアナウンスがされ、現在も解除されていない。

それだけ前評判が高いということもあるけれど、現在では新車なのに稀少車のため、現行型の中古車はプレミア価格になっているほど。せっかく新たなモデルになったのに欲しい人にも行き渡っていないのが現状。

中古市場はクラッシックモデルの高騰が激しい。

1969年から存在するZはひとくちに中古といってもその価値や購買層はまったく違う。第1、2世代は国産旧車、第3、4世代はヤングタイマー、第5世代以降はいわゆる中古車という感覚。そのなかでも国産旧車、ヤングタイマーの年式はここにきて価値は上昇気味。どうやら海外での需要や円安の影響もあるせいで、好コンディションの個体は価格も半端ない。

ただ、国産旧車、とくにスポーツカーは修理歴やボディの腐りの修理などの補修歴がわかる個体をおすすめしたい。高い値段で買ったがボディがパテで補修だらけという話も珍しくない。ヴィンテージモデルでも通常の中古車でも、ノウハウがある信頼できるショップに出会うことが大事だといえる。

この記事を書いた人
ラーメン小池
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ラーメン小池

アメリカンカルチャー仕事人

Lightning編集部、CLUTCH magazine編集部などを渡り歩いて雑誌編集者歴も30年近く。アメリカンカルチャーに精通し、渡米歴は100回以上。とくに旧きよきアメリカ文化が大好物。愛車はアメリカ旧車をこよなく愛し、洋服から雑貨にも食らいつくオールドアメリカンカルチャー評論家。
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