サンデーメカニックへの道。エキゾーストマニホールドのガスケットを自分で交換するぞ!【追加作業が増えて難易度爆上がり編】

旧車乗りなら、軽めの整備やメンテくらいは自分でやれるようになりたいというサンデーメカニック志望の筆者ラーメン小池が、プロのメカニックによる指導の下に本格的なメカニック作業を教えてもらうという思いつき企画がこれ。当初は愛車のへダース(エキゾーストマニホールド)に使われているガスケットを交換するだけのはずが、作業途中でエンジンマウントも要交換という追加作業が発生し、前編、後編でのお届けになった体験記事。素人がメカニック作業を果たしてどこまでやりきれるのか? をお届けする。

ここまで来たらやるしかない。

患者はラーメン小池の愛車である1974年式AMC Jeep Cherokee。御年50歳の老車である。ある日、気がついた排気音から聞こえる異音から、へダース(エキゾーストマニホールド)のガスケット交換をすることになったのはいいけれど、へダースを取り外して、エンジンルームを確認すると、エンジンマウントの劣化も発覚。まずはエンジンマウントを交換してからのへダースのガスケット交換をすることに。

丁寧に教えてくれる先生はクラシックジープひと筋「バディオート」の代表の水野さん。もはや後戻りができないところまで作業を進めたので、ここは日が暮れるまでにやりきるしかない(爆)。

これが今回の患者(患車?)となる初代チェロキー。フルサイズボディに2ドア、さらにエンジンは6.6L V8という往年のアメリカ車である
今回ラーメン小池の思いつき企画を快く引き受けてくれたバディオートの水野さん。2級ガソリン自動車整備士の資格を持ったプロのメカニックである。クラシックジープひと筋で20年以上の経歴の持ち主
へダースを本人的には必死の作業で外して(前回の記事を参照)発覚した別の症状がエンジンマウントの劣化。患部は写真中央にあるフレームとエンジンの間にあるゴム製の緩衝材のこと。ここにひび割れ等のダメージが確認できるので交換することに

前回の記事はこちらで。

サンデーメカニックへの道。エキゾーストマニホールドのガスケットを自分で交換するぞ! [事件は現場で起きた編]

サンデーメカニックへの道。エキゾーストマニホールドのガスケットを自分で交換するぞ! [事件は現場で起きた編]

2024年01月15日

エンジンマウントの交換は素人にはハイレベル。ここは先生と二人三脚で。

タテ置きエンジンはフロントから見ると時計回りに回転運動が発生するため、どうしても左ハンドル車では運転席側のエンジンマウントに負荷が掛かりやすく、こちらから劣化していくとのこと。まあ、これも消耗品のひとつというわけ。

外し方はエンジン自体をジャッキで持ち上げて浮いた状態をキープし、エンジンマウントをハズし、さらにエンジン側のブラケットをハズしてマウントを取り除き、新しいエンジンマウントに交換するというもの。

使うのはエアジャッキになるので、ここはさすがに素人には荷が重いということで、最初の段取りを先生がやってくれた。エンジンが浮いたらあとは車体の上から、さらに車体下に潜ってマウントを留めているボルトを外す。

といっても、へダースの脱着で四苦八苦したところなのに、またも上から下から這いつくばっての作業に血の気が引くが、自分でやると決めた以上、やらなければと気持ちを盛り上げて着手。

マウントが外れたら新品に交換。このときにひとつずつボルトを限界まで締めるのではなく、それぞれのボルトを少しずつ均等に締めていくことが基本。ある程度締めたら持ち上げていたエンジンを少しずつ下ろし、またボルトを締めるという反復作業。そのためにまたも車体の上から、さらに潜って下からの作業に。これがまた大変。

エアジャッキの扱いは素人には荷が重いということで、先生が出動。エンジンのオイルパンに木製の角材を挟んでジャッキを当て、エンジンを持ち上げていく
エンジンマウントがフリーになる高さまでエンジンを持ち上げようとするとエンジンファンがファンシュラウドに干渉してしまうことが判明。急遽ファンシュラウドを外してさらにエンジンが持ち上がるようにクリアランスを確保する。ここも先生が出動。さすがあっという間に外してしまった
エンジンが十分に持ち上がったので小池が出動。エンジンマウントのボルトを外していく。素人作業に加えて狭い部分にボルトがあるため、スパナの可動域が狭くこれまた難航(笑)
エンジンマウントのボルト4つにエンジン側に取り付けられているマウント用のブラケットのボルト3本を外してエンジンマウントを外すことに成功。目視でもマウントにひび割れが確認できる
左が劣化したマウント。右が新品。エンジンマウントはウレタン製もあるが、ウレタンは劣化で割れてしまうことがあるので、バディオートでは硬質のゴム製を推奨している。ゴム製ならばいきなり割れることはなく、ひび割れていくので未然に劣化を察知できる
ジャーン。エンジンマウントが新品に。見た目は何も変わらないけれど、こうなるまでにけっこう時間がかかったので喜びもひとしお。これでやっと本題のへダースのガスケット交換に着手できる

追加作業終了。本題のガスケット交換に着手するぞ!

無事に(本人は疲労困憊で無事ではないが)エンジンマウントの交換を終え、いよいよ本題のへダース(エキゾーストマニホールド)および、エキゾーストフランジのガスケット交換に。

もうこのタイミングで素人の筆者のカラダはボロ雑巾(笑)。じゃあ休憩がてら先生がその前に下ごしらえをしてくれるというので、その作業を見ることに。一体何をするの?

これが新品のへダースの排気ポート側とフランジ側のガスケット。パーツ自体はシンプルなものだけど、これの劣化でクルマに不具合が生まれるんだからナメてはいけない。クルマは大小様々なパーツのバランスで動いてくれるんだと勉強

ボルトとボルトの受け側の精度を高める下ごしらえ。こういうひと手間がプロの仕事だ。

取り外したへダースを見た先生はおもむろにボルトの穴に専用の治具を使ってひと作業を加えてくれた。これは排気熱でどうしても金属が変形したりさびが出てしまい、ボルトが締めづらくなっているので、受け側とボルト側のクリーニングとネジ山の「目立て」と呼ばれる作業をすることでボルトがしっかりと締まるようにそれぞれを整える作業をする。

もちろん、そのままでも取り付け可能だが、目立てを行うことでスムーズにボルトが締まり、しっかりと取り付けることが可能となる。排気が漏れないように密閉度を高めなければいけない部分なので、こういうひと手間を加えることが重要なのだ。

さすがにこの作業は道具も持っていない素人には不可能。またもメカニック作業の奥深さを知る小池であった。

へダース側のボルトが入る受け側の溝を整える作業。どうしても排気熱によってサビや変形が生まれてしまう箇所なので、こういう細かい作業は重要。ここはメカニックの感覚と経験が必要なので、素人の小池は手が出せず(笑)
排気熱によってサビが出てきたボルトもここでクリーンナップおよび目立て作業を施す。鉄は空気や水だけでなく、熱によっても錆びることを勉強。もちろんプロのメカニックは知っているってわけだ

いよいよガスケットの取り付け。ここにもちょっとしたテクニックが必要。

ねじ山がきれいになったへダースと新たなガスケットを組み込んで車両に取り付け。ここで重要なのは、密閉度を保たなければいけないのですべてのボルトを少しずつ均等に締めていき、偏(かたよ)りがないように取り付けること。

もうすぐ作業が終わるからといって急がず、まずは中央の2つのボルト、そして右、左というローテーションしながら少しずつ締めていく。

排気ポートの面に均等になるようへダースとガスケットが装着されることが重要なのだ。

自分で外したボルトを自分で締めるだけの単純作業と思うなかれ。密閉度を高めるために6本のボルトをそれぞれ均等に締めていくことが重要。背中が油汚れで汚いのももはや勲章だ
フランジガスケットはエンジンルームからだけでなく、車体の下に潜って作業する必要が。これも2つのボルトをそれぞれ均等に締めていくことが大事なので、上から下からの反復運動。これがまた素人にはキツイ(笑)

最後に先生に修理箇所をチェックしてもらう。

すべてのパーツの取り付けが完了し、先生にチェックしてもらう。するとすべてのボルトの締め具合が甘いとダメ出しが(笑)。本人的には最後まで締めたつもりだったが、先生がスパナで締めるとまだボルトが回る様子を見て愕然。

スパナの正しい使い方も知らない素人なので当然かもしれないが、ここでもプロの技を実感。聞けばすべてのボルトに適正なトルクのかけ方と、適正な長さの工具があるという。それを知ることで適切な道具で適切な締め方ができるという。恐れ入ります。

というわけで、結局すべてのボルトを先生が増し締めしてくれて(笑)取り付けは完了。

あとはエンジンをかけ、排気漏れが無いかをチェックしたところ、症状は改善したが助手席側からの排気音が多少気になるという事態が発覚。が、ここはへダースのボルトの増し締めをすることで対応できた。

さらにエンジンをアイドリング状態で回して暖気運転。排気熱で各ボルトやガスケットが馴染むまで放置して、もう一度エンジンをかけて排気音をチェックすると異常なしとの診断が。最初の予想診断が的中していた模様。

パチパチパチ。なんとか、自分でガスケット交換ができた。

素人に付き合ってくれた先生に感謝するしかない筆者小池でありました。

先生に聞いてみると今回の作業はメカニックでは初歩的な作業だということ。いやいや、そんな作業でも素人にとっては人生最大の重労働。

世の中のメカニックの人たちにリスペクトしかない筆者であった。

ボルトの締まり具合を先生にチェックしてもらったらすべてダメ出し(爆)。というわけで、結局先生がすべてのボルトを増し締めしてくれることに。素人はまず工具の正しい使い方から勉強する必要があるんだと実感
いよいよエンジンを掛けて暖気運転。リペア箇所からの排気漏れは無くなった。あとはしばらくエンジンをかけたままにして、排気熱で新しいガスケットをパイプの接合部に馴染ませる
こちらが今回の作業で交換したパーツ。たったこれだけのパーツを替えるだけなので、プロのメカニックにとっては初級者レベルの作業だけど、素人の筆者にとっては人生最大のメカニックワークになったのであった

【今回の作業記録】
作業内容:エキゾーストマニホールド(運転席側)の排気ポート側、およびフランジ側のガスケット交換およびエンジンマウント(運転席側)交換
所要時間:約6時間(プロなら各1時間程度の作業)
素人が作業した場合の後遺症:作業後2日間は激しい筋肉痛(作業翌日は動くのもツライほど)、および両手の軽い擦過傷が5カ所(笑)、衣類の激しい油汚れ

【DATA】
Buddy-Auto(バディオート)
神奈川県横浜市港北区新羽町1218-1
TEL045-534-0030
https://www.lucent-jp.com/
https://www.instagram.com/buddyautoyokohama/

この記事を書いた人
ラーメン小池
この記事を書いた人

ラーメン小池

アメリカンカルチャー仕事人

Lightning編集部、CLUTCH magazine編集部などを渡り歩いて雑誌編集者歴も30年近く。アメリカンカルチャーに精通し、渡米歴は100回以上。とくに旧きよきアメリカ文化が大好物。愛車はアメリカ旧車をこよなく愛し、洋服から雑貨にも食らいつくオールドアメリカンカルチャー評論家。
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