実録! デニムの色落ちレポート【夏よさらば編】

ジーンズ愛好家がもっとも楽しみにしているのはデニムを穿き込んで育てること。育てる? どういうこと? な人もいるかもしれないけれど、デニムは穿き込むことで色落ちし、生地が変化し、穿き手それぞれのライフスタイルが刻まれるかのように経年変化していくのがおもしろさのひとつ。とくにジャパンブランドのデニムは、ヴィンテージジーンズさながらの生地や仕様を踏襲しているモデルが多く、経年変化の美しさは群を抜く。そこで、1本のジーンズがどのように色落ちしていくかをレポートするのがこの記事なのです。4回目となる今回は酷暑の夏も落ち着いて秋の気配がやっと感じられるようになったタイミングの状況をお届け。

新品の状態を確認しときましょ。

レポートするのは雑誌ライトニングと日本のデニムブランド「ピュアブルージャパン」がコラボし、誌面で受注販売したマルチインディゴ・クラシックストレートが実験台。

通常のインディゴ染めの生地と、本藍染めデニムの2種類の生地を使っている(さらにポケットスレーキにはライトオンスのデニムを使用)ので、それぞれの色落ちもレポートしていきたいところ。

シルエットはクラシカルなスタイルをイメージしたゆったりとしたストレートなので、バリバリのヒゲは出ないと思うけど、生地の凹凸が激しいスラブ感のあるデニムはピュアブルージャパンならではの色落ちが期待できる。

ちなみに前回までの記事は下記で確認されたし。

実録!! デニムの色落ちレポート【猛暑の夏前編】

実録!! デニムの色落ちレポート【猛暑の夏前編】

2023年08月23日

実録! デニムの色落ちレポート【真夏の修行編】

実録! デニムの色落ちレポート【真夏の修行編】

2023年09月16日

実録! デニムの色落ちレポート【酷暑の夏は汗との戦い編】

実録! デニムの色落ちレポート【酷暑の夏は汗との戦い編】

2023年10月19日

酷暑の夏も終わりがみえてきたころの色落ち具合は?

これまでの記録を更新するほど暑い日が続いた2023年の夏。2023年5月から穿き始めて14オンス近いちょっとヘビーな生地で夏を乗り越えることに躊躇はしたけれど、そこは根性で夏場もしっかりと穿いてみた。

さすがに汗や皮脂の汚れをそのままにしておくことは生地の劣化に繋がるので、デニムを育てたい人は、本来汗をかく夏場はあまり穿かない方がいいとも言われている。汗をかいても穿く→洗濯の頻度が増える→濃淡のはっきり出た色落ちが楽しめないというロジックで、デニム愛好家はあまり洗濯をしないという人が多い。

事実、某アメリカのメジャーデニムブランドのCEOはジーンズは洗わないと公言しているほど。汚れたら汚れた部分だけをスポットクリーニングするらしい。

かくいう私はけっこう洗いたい派。洗い立てのジーンズは穿いていて気持ち良いもんです。それでも今回の企画のためにそんな思いをぐっと抑えて実験。

そこでトライしてみたのは洗濯ではなく、汗をかいた日には抗菌、消臭作用のあるファブリックミストを使用してみた。こうすれば過度な色落ちはしないだろうと確信。こうして猛暑日も乗り越えて約4カ月の穿き込みに。

これまではそこまで顕著な経年変化は感じなかったディテールも4カ月も穿くとけっこうはっきりと変化が見えるように。

腿の前面はタテ落ちになりそうな色落ちが見えてきただけでなく、腿の前面内側部分にはヒゲ(線状の色落ち)が出現し始めた。普段ロングウォレットを入れているバックポケットには、デスクワークをしているときに負荷がかかっているのか、ウォレットのカタチにアタリが出てきた。さらにバックヨークや裾の縫製部分にあるパッカリングはブルーの濃淡がよりはっきりしてきたことが確認できる。

その他ディテールにもちょっとずつではあるけれど経年変化を確認できる。そこでひとつの仮説を立ててみる。

それは「裾上げ→洗濯→生地が毛羽立つ→穿き込み→毛羽立ちがなくなる→タテ落ち」

というメカニズムなのではないかと。生地を構成している糸に付いていた余計な毛羽立ちが無くなって本来の生地の表面が見えてくると、タテ落ちが顔を出すんじゃないか? と思っております。

ここにきてようやく「下ろしたてのジーンズ感」からは脱却できそうな雰囲気になってきたのはうれしい。レザージャケットもブーツもデニムも下ろしたてはちょっと気恥ずかしいからね。やはり千里の道も一歩から、なかなか一気には変わらないものである。

個人的にはまっ紺のジーンズよりも、ある程度色落ちしたジーンズが好みなので、今後も穿き込んでさらなる経年変化をお見せしたい。

4カ月穿き込んだディテール。やっと色落ちと表現できる変化が。

そのジーンズの表情にも直結する腿正面にはうっすらとタテに走る色落ちが。生地をかなり近くから見ないとまだわからない程度ではあるけれど、タテ落ちがここから始まりそう。さらに腿の正面内側にはヒゲ(ヒゲ状に走る色落ち)に成長しそうな生地感になってきた。生地の毛羽立ちも少し残っているので、まだまだ新品のジーンズ感はぬぐえない。

バックポケット周辺はパッカリングが出ている縫製部分が表情豊かになってきた。普段から右後ろにロングウォレットを入れているせいで、右後ろのポケットにはウォレットの跡が色落ちしてきている。間違いなく色落ちは進行していると実感。

裾部分は内側がシューズ摩擦するせいか、インシームの足首部分の色落ちが進行している。さらに穿き込めば濃淡の差がくっきりと出てきそうな雰囲気。ユニオンスペシャルで仕上げた裾の縫製部分もパッカリングがはっきりと出て凹凸に合わせて色落ちがさらに進行していることを確認。

【基本データ】
トータル穿き込み期間:約4カ月
穿き込み頻度:まだ暑い日もあったけど週4~5日程度
トータル洗濯回数:3回

この記事を書いた人
ラーメン小池
この記事を書いた人

ラーメン小池

アメリカンカルチャー仕事人

Lightning編集部、CLUTCH magazine編集部などを渡り歩いて雑誌編集者歴も30年近く。アメリカンカルチャーに精通し、渡米歴は100回以上。とくに旧きよきアメリカ文化が大好物。愛車はアメリカ旧車をこよなく愛し、洋服から雑貨にも食らいつくオールドアメリカンカルチャー評論家。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

【UNIVERSAL OVERALL × 2nd別注】ワークとトラッドが融合した唯一無二のカバーオール登場

  • 2025.11.25

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【UNIVERSAL OVERALL × 2nd】パッチワークマドラスカバーオール アメリカ・シカゴ発のリアルワーク...

決して真似できない新境地。18金とプラチナが交わる「合わせ金」のリング

  • 2025.11.17

本年で創業から28年を数える「市松」。創業から現在にいたるまでスタイルは変えず、一方で常に新たな手法を用いて進化を続けてきた。そしてたどり着いた新境地、「合わせ金」とは。 硬さの異なる素材を結合させるという、決して真似できない新境地 1997年の創業以来、軸となるスタイルは変えずに、様々な技術を探求...

今っぽいチノパンとは? レジェンドスタイリスト近藤昌さんの新旧トラッド考。

  • 2025.11.15

スタイリストとしてはもちろん、ブランド「ツゥールズ」を手がけるなど多方面でご活躍の近藤昌さんがゲストを迎えて対談する短期連載。第三回は吉岡レオさんとともに「今のトラッド」とは何かを考えます。 [caption id="" align="alignnone" width="1000"] スタイリスト・...

グラブレザーと、街を歩く。グラブメーカーが作るバッグブランドに注目だ

  • 2025.11.14

野球グローブのOEMメーカーでもあるバッグブランドTRION(トライオン)。グローブづくりで培った革の知見と技術を核に、バッグ業界の常識にとらわれないものづくりを貫く。定番の「PANEL」シリーズは、プロ用グラブの製造過程で生じる、耐久性と柔軟性を兼ね備えたグラブレザーの余り革をアップサイクルし、パ...

この冬買うべきは、主役になるピーコートとアウターの影の立役者インナースウェット、この2つ。

  • 2025.11.15

冬の主役と言えばヘビーアウター。クラシックなピーコートがあればそれだけで様になる。そしてどんなアウターをも引き立ててくれるインナースウェット、これは必需品。この2つさえあれば今年の冬は着回しがずっと楽しく、幅広くなるはずだ。この冬をともに過ごす相棒選びの参考になれば、これ幸い。 「Golden Be...

Pick Up おすすめ記事

この冬買うべきは、主役になるピーコートとアウターの影の立役者インナースウェット、この2つ。

  • 2025.11.15

冬の主役と言えばヘビーアウター。クラシックなピーコートがあればそれだけで様になる。そしてどんなアウターをも引き立ててくれるインナースウェット、これは必需品。この2つさえあれば今年の冬は着回しがずっと楽しく、幅広くなるはずだ。この冬をともに過ごす相棒選びの参考になれば、これ幸い。 「Golden Be...

今っぽいチノパンとは? レジェンドスタイリスト近藤昌さんの新旧トラッド考。

  • 2025.11.15

スタイリストとしてはもちろん、ブランド「ツゥールズ」を手がけるなど多方面でご活躍の近藤昌さんがゲストを迎えて対談する短期連載。第三回は吉岡レオさんとともに「今のトラッド」とは何かを考えます。 [caption id="" align="alignnone" width="1000"] スタイリスト・...

決して真似できない新境地。18金とプラチナが交わる「合わせ金」のリング

  • 2025.11.17

本年で創業から28年を数える「市松」。創業から現在にいたるまでスタイルは変えず、一方で常に新たな手法を用いて進化を続けてきた。そしてたどり着いた新境地、「合わせ金」とは。 硬さの異なる素材を結合させるという、決して真似できない新境地 1997年の創業以来、軸となるスタイルは変えずに、様々な技術を探求...

【ORIENTAL×2nd別注】アウトドアの風味漂う万能ローファー登場!

  • 2025.11.14

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【ORIENTAL×2nd】ラフアウト アルバース 高品質な素材と日本人に合った木型を使用した高品質な革靴を提案する...

着用者にさりげなく“スタイル”をもたらす、“機能美”が凝縮された「アイヴァン 7285」のメガネ

  • 2025.11.21

技巧的かつ理にかなった意匠には、自然とデザインとしての美しさが宿る。「アイヴァン 7285」のアイウエアは、そんな“機能美”が小さな1本に凝縮されており着用者にさりげなくも揺るぎのないスタイルをもたらす。 “着るメガネ”の真骨頂はアイヴァン 7285の機能に宿る シンプリシティのなかに宿るディテール...