名作モデルは国や年代でそれぞれに存在。
「華美な装飾は一切なく、徹底的に実用性と機能美を求めていることがミリタリーウォッチの魅力だと思います。世界各国にミリタリーウォッチが存在しますが、アンティーク市場でメインとなるのが、ヨーロッパ。
これは時計大国であるスイスの存在が大きく、様々な国や年代で、それぞれ名作モデルが存在します。逆にアメリカは、A11などは有名ですが、アンティーク市場だと意外と評価が低いんです」
そう語るのは日本で唯一のアンティークミリタリーウォッチ専門店であるキュリオスキュリオの萩原さん。デザイン関係の仕事をしていたが、ミリタリーウォッチに熱中するあまりに自身で時計店をオープンしてしまうほどの愛好家だ。そんなスペシャリストがオススメする軍用時計とは?
「’40年代〜’60年代にかけてのヨーロッパのモデルですね。大きな戦争があった’40年代は近代兵器の実用化もあって、軍用時計の役割が明確化されました。そして’50〜’60年代にかけてはクロノグラフやダイバーズなどが登場し、機能性がより進化したんです。
ただ’70年代からはコストダウンが始まり、徐々に使い捨ての時代へと移り変わっていきます。軍用時計の機能美を求めるなら、この年代の名作をまずは買ってくことをオススメしますね」
とことん機能美を突き詰めた色気のあるプロダクツ。
1945 OMEGA British Army W.W.W.
人気の高い英国陸軍のダーティ・ダースシリーズのオメガ社製は入門用に最適。W.W.W.とは、Wrist Watch Waterproofの略で、防水腕時計を指す。42万5000円
1943 ELGIN U.S.ARMY TYPE A-11
軍用時計のエントリーモデルとして知っておきたいのが米国陸軍の名作A-11。前年まではホワイトダイアルであったが、ブラックの文字盤に変更された。8万8000円
1950s International Watch Co. Royal Air Force Mk.11
ミドルレンジで絶対的な人気を集めているIWCの名作パイロットウォッチ。ケースは、ムーブメントが磁気帯びしないよう2重構造になっていて、質実剛健な作りだ。138万円
1986 Porsche Design by IWC OCEAN BUND Ref.3509
西ドイツ海軍が採用していたポルシェ・デザインがデザインを手掛け、IWCが製造した名機。当モデルは、アタックダイバーに支給されたRef.3509となる。330万円
1960s LEMANIA R.A.N Series II
ミドルクラスでオススメが、1960年代にオーストラリア海軍に納入されたクロノグラフモデル。シリーズ2のRANクロノグラフの文字盤は「LEMANIA」と「RAN」が存在するが、この個体は前者の仕様。85万円
1968 HEUER German Army 1551SGSZ
現存数が50〜150本と言われているスペシャルピースで、ドイツ陸軍の砲兵部隊へ支給されたモデル。1550SGの派生モデルで、星座早見盤、サングラス、マニュアルと共に納品された。280万円
【DATA】
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※情報は取材当時のものです。
(出典/「Lightning2023年7月号 Vol.351」)
Text/S.Sato 佐藤周平 Photo/M.watanabe 渡辺昌彦