「スロウガン」代表・小林学さん
1966年生まれ。湘南育ち。文化服装学院を卒業後、88年より3年間ほどフランスへ遊学。その後、フランスのデニムブランドで企画などを経て、’98年にスロウガンを立ち上げた。
あえて大袈裟に誇張して復刻し、ファッションアイテムとして再生。
「’90 年代初頭に、日本でリーバイスを取り扱っていた商社の方から『リーバイスのジーンズはアメリカ人にとって、日本の米と同じ。501は30ドル台じゃないといけない』と力説されたので、バレンシアにある工場で作った高額な復刻デニムをリリースした時は、業界的にも騒然でした」
そう語る小林さんは、フランス遊学から帰国後に、フランスのデニムブランドや岡山のデニムファクトリーで働くなど、深くジャパンデニムに関わってきた。
そんな小林さんが、10年ほど前から始めたのが、バレンシア工場で作られた復刻デニムのリメイク。不定期でオーダーイベントを開催し、自らがお客さんのサイズやオーダーに合わせてミシンを踏んでいるというから驚きだ。
「例えば森進一さんのモノマネをする時って、大袈裟に誇張するのが王道。それはヴィンテージのリプロダクトにもずるものがあり、復刻モデルってどこか大袈裟なんです。
でもリーバイスのバレンシア製は、力が抜けていて自然というか、アメリカ人のいい加減な国民性が出ている(笑)。ボロボロなものが二束三文で売られていたんです。
せっかくいい表情なんだから、手を加えることでファッションアイテムとして再生しないともったいないと思ったんです。ただ今はバレンシア製が高騰してしまい、なかなかベースを探すのが大変です(笑)」
ベースはバレンシア製の中でも評価の高い’98年製!
こちらがベースとなったバレンシア工場で生産された501XXの復刻モデル。デニムは、今では閉鎖されたため、希少となっているコーンミルズ社のホワイトオーク工場で生産されたもの。特に’98年製ロットはデニムのクオリティがよく、ヴィンテージのような色落ちとなってくれるそう。
ファンの間では’98年製の評価が特に高く、デッドストックやワンウォッシュのものであれば、10万円を超えることもあるほど高騰している。
マーロン・ブランドからヒントを得たテーパード型。
映画『ザ・ワイルドワン』で主人公を演じるマーロン・ブランドは、リーバイス501XXのアーキュエイトステッチを抜き、裾をテーパードさせたカスタムを施していた。そのためセルビッジ部分の返しが異常に広く、その大胆なカスタムを、小林さんの手で再現させた仕様となっている。4万4000円〜
ご覧のようにサイドのステッチを解き、テーパードさせているためセルビッジの返しが異様に幅広。ただ穿いてみると非常にバランスの良いシルエットなのだ。
本来の良さを活かしつつバギーシルエットに!
バレンシア製501XXは、ギャラ入りの紙パッチで隠しリベットを用いた1950年代後半のモデルがベース。その年代特有の太めのストレートシルエットをさらに拡げてバギー仕様に。外側のセルビッジを活かすために、内側を解体。4万4000円〜
この年代の501XXはウエストがかなりシェイプされており、腰周りのバランスが悪いので、サイドにマチを入れることでうまくバランスを取っている。ベースのウエストも調整可能。
セルビッジを使っているので、インシーム部分でうまくシルエットを改良していく。
あえて濃紺デニムを使い、コントラストを付けている。
取材の際に小林さんが穿いていたのも、バレンシア製501XXのリメイク。
オリジナルのシルエットを活かしながらも、サイドにマチを入れることで窮屈なウエスト周りを解消。その結果、バックスタイルもよくなっている。さり気ないカスタムであるが、見た目も実用性も兼ね備えた。
自然に穿ける計算し尽くしたフレアシルエット。
近年、トレンドの予兆があるブーツカットやフレアシルエット。この501XXがリリースされていた’50年代には存在しないシルエットなので、この色落ちでフレアシルエットというのが新鮮。絶妙なバランスで再構築。4万4000円〜
膝から自然とフレアしていくようにリメイクされているため、短くカットされた個体でもバランスが良いのも魅力のひとつである。裾のアタリはできるだけ活かしている。
【問い合わせ】
スロウガン
TEL03-3770-5931
https://auberge.shop
※情報は取材当時のものです。
(出典/「Lightning2023年4月号 Vol.348」)
Text/S.Sato 佐藤周平 Photo/S.Sawada 澤田聖司
関連する記事
-
- 2024.11.19
とっておきのヴィンテージデニム。弦巻史也さん
-
- 2024.07.23
とっておきのヴィンテージデニム。後藤洋平さん
-
- 2024.06.14
王道リーバイスこそ、アマノジャクに楽しもう!
-
- 2024.04.16
この30年で価値が上昇したデニムは? 「ベルベルジン」藤原さんとデニム市場を振り返る