自分の理想を形にする空間だからこそ本当に好きなモノに囲まれたい。|「BLACKSMITH Co.」代表・滝川史也さん

自分だけの趣味嗜好が垣間見えるカッコいいライフスタイルを送る人たち、彼らはどんな空間で過ごしているのか。モノ作りに携わる人の中にはワークスペースに無頓着な人もいるが、自分自身のクリエイティビティを刺激するような空間を作り上げることがスタイルある作品を作り上げるための第一歩になるだろう。カスタムバイクショップ勤務、インテリア制作を経て、自らのブランドを立ち上げた滝川史也さんこそ、そんな空間で過ごすひとり。その生活空間を見せてもらった。

「BLACKSMITH Co.」代表・滝川史也さん|23歳で渡米、勤務したカスタムバイクショップで板金溶接を覚える。帰国後、バイクの制作の傍らショップの店舗什器やインテリア製作の製作を開始。2017年にオリジナルブランドを設立する

本当にカッコいいモノをつくるための、お気に入りだけを集めた空間。

名古屋市西区の工場が立ち並ぶエリアに佇む「BLACKSMITH NAGOYA」。町工場然とした外観からは想像もつかないお洒落な空間が広がっている。2階のショールームはアポイント制

名古屋に拠点を置くブラックスミスは主に鉄を使い、1900年代初頭のアメリカで見られるインダストリアルデザインに日本の伝統技法をミックスした作品を生み出す家具ブランド。

「元々、アンティークが好きで、でも、壊れやすいとか使いづらいとかストレスを感じていて、それを解消するために作り始めたので、売れそうだからとかじゃなくて、純粋に自分が『カッコいい』と思うものを作りたいんです」

そうモノ作りの原点を話す滝川さん。彼のファクトリーにお邪魔すると、作業場横にはホットロッドが鎮座し内装もレンガの壁で映画のセットのような雰囲気。そして、ショールームにもなっている2階には作品に混じって数々のヴィンテージ品が並べられている。

ファクトリーを始めた10年前から少しずつ工作機械も増えてきているという。現在次なるステップのために改装中だそう。完成が楽しみ!

「23歳で渡米してカスタムバイクショップで修行しましたけど、向こうのビルダーって洋服も作業場もカッコいいんですよ。日本の職人って技術は高いけど、作業場も格好も気を使わない人が多い。見えないから関係ないんだけど、それじゃ本当にカッコいいモノってできないと思うんです。

作業場は多くの時間を過ごすし、カッコいいモノを作るならその空間はお気に入りのモノしか置きたくないし、作業服だって気に入ったモノしか着たくない。そういう職人が増えて、ああなりたいって思う若い人も増えたらいいですよね」

滝川さんの作業着。1910〜’20年代のアメリカの職人の写真を参考に、当時と同じく乗馬パンツ(鉄職人は馬の蹄を作っていたため)とカバーオールが中心。汚れやダメージもまさにリアルワークウエア
ウエアも元々はヴィンテージが好きだったが「誰かが育てたモノでなくて自分がリアルに着込んでこそ本物」と最近は新品を着るそう。この日はブラックサインのジャケットをメインにシックな組み合わせ
ヴィンテージのサングラスも好きで、ウェルシュやレイバンなど形や色など様々なタイプを所有。最近は左手前のアメカンオプティカルのモノがお気に入り
ガイコツモノ好きでもある滝川さん。写真中央の1930年代の銅製ブックエンドはスカルマニア垂涎のレア品
作業場一角に鎮座する’37シボレーピックアップトラックベースのホットロッド。1940年代以前のファクトリーデザインをモチーフにしているだけにクルマも当時の年代をチョイス。雰囲気最高!

ファン垂涎のスペシャルなアイテムが並ぶショールーム。

商談で使用する2階ショールームはお気に入りのヴィンテージを中心に自身の作品も展示。滝川さんの好きな世界観を凝縮したスペースだ。

中央に見えるレディス用のライダースも実はスペシャルアイテムだったりと、ファンが見たら驚くようなアイテムもさりげなく並んでいる。

1920年代頃の仏インダストリアルのチェア。この実物をベースにしたのが「CH-1」

こちらは「FC-1」の元になった1920年代頃の仏ビエネーズ社の世界初の工業用折りたたみ椅子。

「売れそうなモノではなくて、ヴィンテージをベースに自分がカッコいいと思うモノを作っています。アパレルでいうと、レプリカブランドと同じような感じですよね」

(出典/「Lightning2023年3月号 Vol.347」)