人生が豊かになる、ホットロッドのある生活。

旧いアメリカのカルチャーに興味があって、クルマ好きならアメリカのスポーツカーのルーツであるホットロッドに興味を抱くのは必然。とは言っても、街中で頻繁に見かけるモノではないので、現実的に日本で走れるの? っていうのは気になるところ。そこで、日本でリアルにホットロッドを楽しむオーナーのライフスタイルを取材した。

関口智博さん

休日の趣味としてホットロッドを楽しむ二児の父。最近は埼玉県のBABBITTBANK TROPHYや青森県のDUSTERS CUPなど、ホットロッドの草レースにも積極的に参戦している。

全身で感じるスピード感がホットロッドの醍醐味。

屋根がないロードスターのホットロッドで草レースに参戦し、自宅のガレージで自分のできる範囲の愛車の整備を行う。そんなアメリカンなライフスタイルを送る関口さん。このホットロッドのベースとなったのは、1908年に販売が開始され、1927年まで生産されたモデルTというクルマ。

この頃フォードがベルトコンベアー方式の生産をスタートさせたことによって、モデルTの大量生産が可能となり、クルマが大衆に浸透したため、モデルTはアメリカン・クラシックカーとして広く知られる存在だ。

関口さんはこのマシンを手に入れる以前にも、20代前半の頃モデルA5ウィンドウのチョップトップを所有していた。その後数年のブランクを挟み、次なるホットロッドはV8エンジンを搭載するコンパクトなモデルTロードスターに狙いを絞って、見つかったのがこのクルマだった。初めてのホットロッドの頃から親交の深いサイドモータースに整備を依頼し、以来約9年間大きなトラブルなく今も走り続けている。

ダートレースBABBITTBANK TROPHYにて、砂埃を巻き上げる関口さん。普段から近所の山道で自主練を重ねているだけに、ダート上でも見事なテールスライドを披露した

「初めてホットロッドの横に乗せてもらった時の衝撃が凄すぎて、それまでバイクが好きでハーレーに乗っていたのですが、ホットロッドはもはやバイクというかゴーカートというか……、公道で乗れるこんなに刺激的なクルマがあるのかと驚きました。専門店で整備すれば誰でも乗ることはできますが、基本的な構造を理解する必要はあると思います。このクルマでどこかへ行ってトラブルはあっても、自走で帰って来れなかったことは一度もないですね」

このクルマの他に自家用車を所有しているため、関口さんにとってモデルTは趣味のクルマだが、それでも1週間乗らない時はほとんどない、というほど時間さえあればホットロッドの走りを楽しんでいる。ホットロッドの何がそこまで関口さんを魅了するのか。

自宅の横に設置されたガレージ。サイドモータースを頼りながらも、やれることは自分でやるのが関口さんのスタイル

「ホットロッドの魅力は何よりスピード感。もちろん、数字上の速度はもっと速い現代車がありますが、振動や音、オイルやガソリンの匂い、またアナログな乗り物を操る操作感など、体全体で感じるスピード感はホットロッド特有のモノでしょう。街乗りでも十分操作感を味わえるし、レースに出ればそれ以上の興奮を味わえる。いまは日本でもホットロッドが走るレースが各地で開催されているから、ホットロッドを楽しむにはいい時代になったと思います」

街中や山道のワインディング、サーキットやダートコースなどフィールドを選ばずに純粋に走りを楽しむ関口さん。アメリカで生まれ育ったホットロッド文化を日本で体現するリアルなカーガイだ。

ガレージには半自動溶接機やボール盤、グラインダーなどが用意されている

1927 Ford Model-T Roadster

モデルAレールを使用したシャシーのモデルTロードスターにフラットヘッドV8をスワップしたトラディショナルなスタイル。サイドモータースで整備し、クルージングから草レースまでフィールドを選ばずに安心して走れるホットロッドに仕上げられている。今年7月には青森県まで自走で走り、DUSTERS CUPに参戦したリアルな1台。

ボマーシートをイメージしてシートメタルから自宅ガレージの100V半自動溶接機で製作した力作。自分の体に合わせて作っているので走行中のホールド感も◎

モデルTのストックは4バンガーだがレイトフラットヘッドV8(8BA)を搭載。軽量フライホイールをインストールした程よいホップアップ。

(出典/「Lightning2022年11月号 Vol.343」)

この記事を書いた人
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