かつての街並みの断片が詰め込まれた、カリフォルニアの不思議な店に潜入!

一見、アメリカのどこにでもある商店の佇まい。でも何のショップかもわからないここは、中に入ってびっくり。
そこにはかつてのカリフォルニアの街並みの断片があった。

何の変哲も無いショップのなかは、カリフォルニアの歴史的遺産が満載。

映画産業で栄えた街ハリウッドの北側の山を越えた場所。いわゆるバレーエリアと呼ばれるここは、映画関係者などが数多く住み、いろいろなカルチャーが生まれた場所でもある。

そんな場所で育ったトミーさんは、地元の歴史を調べると、意外なほどに資料が少ないことに気がついたのが今回紹介する場所の始まり。

いわゆるアメリカのどこにでもある商店のような博物館の外観。知らなければここが私設博物館の入口だとは思わない。現状は、ひっそりと佇んでいる

いつしか地域のローカルヒストリーに興味を持ち、それが地元に存在していたショップの看板など、アンティークを収集することに繋がったという。

そんなかつての街の歴史を知ってもらおうと、私設博物館を設立。あくまで個人の博物館なので、外観は至ってシンプル。

建物の中には巨大な物体がゴロゴロと。外観からは想像できない空間が広がる。いずれもカリフォルニアの街にかつて存在していた歴史的なものばかりだ

博物館といえば巨大な建物や看板などがありそうだが、じつにこぢんまりしているのがポイント。自ずと知る人ぞ知る、秘密基地的な博物館になってしまったという。

それでもその情熱で集めた歴史的遺産は、アンティーク収集家であれば必見のものばかり。とくにポップカルチャーにはめっぽう強く、それらが雑多に置かれたジャンクで、ちょっと私的な匂いのする空間は必見だ。

ローカルの歴史を紐解く遺産を収集。

展示されているものをピックアップして紹介しよう。こちらはマスタングといってもクルマではなく、これはサンフェルナンドに存在したリカーショップ(酒店)のネオンサイン。壁に飾るとその巨大さに驚く。

壁の中央に飾られるラブズのサインは、地元に存在したバーベキューレストラン。飲食店などは取り壊しになるときに、看板などはアンティーク市場に出回ることが多く、それらを見つけてはコレクションする。集める情熱と情報力が必要になってくるよね。

VWタイプ1の実車をキャンバスにしたアートは、ホットロッドアートを得意とするケント・バッシュによる作品。巡り巡ってここにやってきた。ホットロッドとカリフォルニアの関係は切っても切れない。

電飾で輝く巨大なサインは、ウエスト・ハリウッドのサンセット・ブルバード沿いに初めてできたシアターであるティファニー・シアターのオリジナルサイン。1966年にオープンし、2004年に閉店している。

今や消滅の一途を辿る旧きよきボーリングレーン。とくに1950年代のボウリング場には巨大なグーギースタイルのサインが設置されていたのが特徴でもあった。そんな貴重な実物もコレクトする。

数多くのミュージシャンが愛したウエスタンウエアのテーラー「ヌーディーズ・ロデオ・テーラー」のヌーディ・コーンがカスタムした1963年式ポンティアック・ボンネビル。世界に1台しかない貴重なクルマも堂々と展示されている。

懐かしいアーケードゲームはレストア済みでプレイ可能。

この博物館を立ち上げたトミーさん。このエリアのローカルで、街の歴史をもっとみんなに知ってもらいたいという思いから、アンティークを収集するように。実はオーナーのトミーさんはBMXのイベントを開催している、その道の知られた存在。

ここバレーエリアで生まれたBMXのヴィンテージがずらり。実際にこのエリアには多くのBMXメーカーがかつて存在していた

ここ私設ミュージアムのあるバレーエリアで生まれたカルチャーのなかでも外せないのがBMXなのだ。当時はモトクロスレースの一般化によって、その流れが自転車にも波及することで生まれた。このエリアには多くのブランドが誕生したことで、まさにBMXの聖地ともいえるのだ。

ヴィンテージモデルの展示、販売からパーツのスワップミートまで、ファンならば1日中楽しめるイベント。カリフォルニアらしいゆるい雰囲気もいいよね
CWレーシング製’80年代のモデルがずらり。当時は各メーカーが試行錯誤をすることで、文化を育てていった。レースも盛んだった
スワップミートではBMXのパーツも多数販売されるが、専門的な知識と現在の相場感が必要になってくる。クルマ好きは奥にあるインパラが気になる

【DATA】
Valley Relics Museum
21630 Marilla St. Chatsworth CA 91311
TEL818-678-4934
開館/毎週土曜日10:00〜15:00のみオープン
https://valleyrelicsmuseum.org

ガイドブックには載らない小さな施設ミュージアム。日本でも古い街並みが再開発によってどんどんなくなってきているが、アメリカも同じ。そんななか、個人の情熱だけで、数十年間にそこにあった街並みの断片を収集するとは恐れ入る。かつて映画で観た景色がどんどんなくなっていくのは残念だけど、こういう人たちがいてくれるだけでちょっと安心する。気になった方はいつか訪れてみてください!

(出典/「Lightning 2018年9月号 Vol.293」)

この記事を書いた人
ラーメン小池
この記事を書いた人

ラーメン小池

アメリカンカルチャー仕事人

Lightning編集部、CLUTCH magazine編集部などを渡り歩いて雑誌編集者歴も30年近く。アメリカンカルチャーに精通し、渡米歴は100回以上。とくに旧きよきアメリカ文化が大好物。愛車はアメリカ旧車をこよなく愛し、洋服から雑貨にも食らいつくオールドアメリカンカルチャー評論家。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

進化したSchottの定番、冬のレザースタイルはこれで決まり!

  • 2025.10.30

アメリカンライダースの象徴であるSchottが、原点回帰とも言える姿勢で“本気”を見せた。伝統のディテールに、現代的な技術と素材を融合。武骨でありながらも軽快、クラシカルでありながらも新しい。進化したSchottの定番が、冬のレザースタイルを再定義する。 668US SPECIAL HORSEHID...

渋谷、銀座に続き、ブーツの聖地「スタンプタウン」が東北初の仙台にオープン!

  • 2025.10.30

時代を超えて銘品として愛されてきた堅牢なアメリカンワークブーツが一堂に会するブーツ専門店、スタンプタウンが宮城県仙台市に2025年9月20日オープン! 東北初となる仙台店は北のワークブーツ好きたちにとって待望の出店となった。 珠玉の銘品たちがココに揃う。 ブーツファンが待ち焦がれた東北エリア初となる...

革ジャンの新機軸がここに。アメリカンでありながら細身でスタイリッシュな「FountainHead Leather」

  • 2025.10.31

群雄割拠の革ジャン業界において、カルト的な人気を誇り、独自のスタイルを貫くファウンテンヘッドレザー。アメリカンヘリテージをベースとしながらも、細身でスタイリッシュ、現代的な佇まいを見せる彼らのレザージャケットは、どこのカテゴリーにも属さない、まさに“唯我独尊”の存在感を放っている。 XI|シンプルな...

生きたレザーの表情を活かす。これまでになかった唯一無二の革ジャン、「ストラム」の流儀。

  • 2025.10.30

生きたレザーの質感にフォーカスし、“バーニングダイ”をはじめとする唯一無二のレザースタイルを提案するストラム。我流を貫き、その意思を思うがままにかき鳴らすことで、オリジナリティを磨き上げる孤高のレザーブランドだ。デザイナー桑原和生がレザーで表現するストラムのモノ作りの哲学、彼が革ジャンを通して描き出...

「BILTBUCK」の2025年は新素材によって既存モデルを再解釈した革ジャンに注目だ!

  • 2025.11.03

伝統と革新を往来しながら、レザーの魅力を追求するビルトバック。2025年のコレクションは、オリジナルレシピで仕立てた渾身の新素材によって既存モデルを再解釈。質感と経年変化、レザーの本質的な美学を磨き上げ、洒脱な大人たち〈Hep Cats & High Rollers〉へ贈る、進化であり深化の...

Pick Up おすすめ記事

【Punctuation × 2nd別注】手刺繍のぬくもり感じるロングビルキャップ発売!

  • 2025.10.29

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【Punctuation × 2nd】ロングビルキャップ[トラウト] 温もりのある手仕事が特徴の帽子ブランド「パンク...

「BILTBUCK」の2025年は新素材によって既存モデルを再解釈した革ジャンに注目だ!

  • 2025.11.03

伝統と革新を往来しながら、レザーの魅力を追求するビルトバック。2025年のコレクションは、オリジナルレシピで仕立てた渾身の新素材によって既存モデルを再解釈。質感と経年変化、レザーの本質的な美学を磨き上げ、洒脱な大人たち〈Hep Cats & High Rollers〉へ贈る、進化であり深化の...

進化したSchottの定番、冬のレザースタイルはこれで決まり!

  • 2025.10.30

アメリカンライダースの象徴であるSchottが、原点回帰とも言える姿勢で“本気”を見せた。伝統のディテールに、現代的な技術と素材を融合。武骨でありながらも軽快、クラシカルでありながらも新しい。進化したSchottの定番が、冬のレザースタイルを再定義する。 668US SPECIAL HORSEHID...

【土井縫工所×2nd別注】日本屈指のシャツファクトリーが作る、アメトラ王道のボタンダウンシャツ発売!

  • 2025.10.07

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! トラッド派には欠かせない6つボタンのBDシャツ「6ボタン アイビーズB.D.シャツ」 アメリカントラッドを象徴するア...

【J.PRESS×2nd別注】こんなイラスト、二度と出会えない。 著名イラストレーターとのコラボスウェット。

  • 2025.10.21

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【J.PRESS×2nd】プリントスウェットシャツ【AaronChang】 アメリカにある優秀な8つの大学を総称して...