教えていただいたのはこの方!・・・「THE CHEESE HOUSE」安藤暢廉さん
店舗什器や家具雑貨からリフォームまでを手がけるザ・チーズハウスの金属担当。自身でバイクやクルマまでカスタムしてしまうほどで、「アイアンマン」と言う異名も持つ。
金属の経年変化の最たるものは「錆び感」である。
埼玉県所沢市に施工工場を持つザ・チーズハウス。そこでアルミサッシ施工に従事し、日夜金属と触れている安藤さんは、いわば金属のプロである。そんな彼に金属のエイジングの魅力を尋ねるとこう話してくれた。
「エイジングされたものには何一つ同じ表情がないですよね。最初は誰が作っても同じような形になるモノでも、そのエイジングによってオンリーワンな表情に変貌します。なので他とは違うものがいい! という人にとっては、ひとつの有効な表現方法ですよね」
とは言え、そこまで味わい深いエイジングには、相当な年月を要するのもまた事実。そこでどうすればいいのかを考えたところ、リアルとフェイクを織り交ぜるこの加工方法に行き着いたと話す。
「元々旧車が大好きでよく自分でいじっていたのですが、その旧車に付いていた金属パーツが時間の経過で鈍く光っていて、すごくカッコよかったんですよ。だから金属加工の仕事をするようになってからは、そのようなリアルなエイジングの風合いをいかに加工で出せるかを試行錯誤しました。そうして実際の経年変化にフェイクを織り交ぜる方法に行き着いたんです。酸化剤の化学反応により本当の錆びをつけて、黒染め剤で人工的(フェイク)に雰囲気を作る。その風合いは本当にリアルですよ」
なるほど、なかなか奥深い。読者諸兄も一度試してみてはいかがだろうか⁉
STEP 01 エイジング後の表情を知る。
金属のエイジングには様々な表情があるが、ここでは各種産業・一般生活において最も広い用途で使われている「鉄」と、5円玉に代表される黄銅と呼ばれる素材、つまり銅と亜鉛の合金である「真鍮」の2種の素材の表情を検証する。
[鉄]
鉄のエイジングの最たる表情は言わずもがな錆びだ。酸化によって起こるこの現象を見たことがない人はいないだろう。しかし、その錆も酸化の進行具合によってみせる表情が違うので、それぞれの特徴を見ていこう。
《酸化剤の漬け込み》酸化剤に漬ける時間と回数で、錆びの深さが決まる。
酸化剤に1時間漬け込んで乾かしたものと、半日かけて2回漬け込んで乾かした両サンプル。1時間の方も錆びてはいるものの色は浅い。対して半日かけた方は錆びの濃淡や深みが増し、より味わい深い仕上がりに。
▼[New]
▼[1時間]
▼[半日]
《黒染め剤》黒染めで生まれる、より”リアル”な風合い。
錆びと言う現象を色で表せば茶色や赤茶になるのは言うまでもないが、鉄が長い年月をかけて生み出す風合いには黒も混じっている。そこは、このように粒子の細かい黒染め剤を素材に染みこませるとグッと雰囲気が高まる。
▼[黒染め有り]
▼[黒染め無し]
《クリア剤のコーティング》保護と強調の役割を果たすツヤ。
エイジングが進んでいい雰囲気を醸し出すようになっても、そのままでは錆が付着して汚れてしまう。そこをツヤありのクリア剤でスプレーコーティングすると、汚れの付着を抑えるだけでなく風合いも強調してくれる。
▼[New]
▼[ツヤ有り]
▼[ツヤ無し]
[真鍮]
真鍮のエイジングは酸化によって酸化銅という皮膜に覆われる現象、黒ずみが一般的だ。アンティークショップなどでよく見かける、金色がくすみ黄土色になったアクセサリーや五円玉が、その最たる例といえる。
《黒染め剤》黒染め剤をうまく使い黒ずみの散らしを表現。
鉄のエイジングと比較すると、錆びの要素がほとんどない真鍮は、例えるならば燻し銀の雰囲気。手の触れない部分を濃くしたり濃淡をつけるように染みこませるだけで、このようなリアルな雰囲気になる。
▼[New]
▼[黒染め有り]
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