ジャッキーちゃんだからわかる”ジャッキー映画”の凄み

まだ小中学生だった昭和50年男に、アクション映画のカッコよさとおもしろさを教えてくれた師匠、ジャッキー・チェン。そんなジャッキーのそっくりさんとして、”ジャッキーの凄さ”を啓蒙してやまないジャッキーちゃんに、ジャッキーの本当の凄さと魅力を存分に語ってもらう。

“僕も強くなれるかも”と勘違いをさせてくれた

ジャッキーちゃん|昭和49年、福岡県生まれ。俳優として芸能活動をスタート、2011年頃からジャッキー・チェンのものまねでタレント活動を始める。2015年にジャッキーちゃんに改名し、バラエティ番組、ドラマなどで活躍。2017年にはジャッキー・チェンと対面し、「昔の僕に似ている」と本人のお墨付きをもらった

『ドランクモンキー 酔拳』『プロジェクトA』『スパルタンX』『ポリス・ストーリー/香港国際警察』など、1970年代後半〜80年代に登場した数々のカンフーアクション映画の名作で、まだ小学生だった昭和50年男に多大な影響を与え、アクション映画のおもしろさとカッコよさを教えてくれた香港出身の世界的アクションスター、ジャッキー・チェン。そんなジャッキーの魅力をたっぷり語ってくれたのは、ジャッキーのそっくりさんとして大活躍するものまね芸人のジャッキーちゃん。昭和50年男であるオレたちとほぼ同世代の昭和49年男である。初めてジャッキーを知ったのは小学2年生の頃、テレビで観た『スネーキーモンキー 蛇拳』だったそうだ。

「初めてジャッキー映画を観た感想は『凄いもの観たな! 友達に教えなきゃ!! 』でした。それで、次の日に学校で話したら、ほとんどの男子が観ていたのに驚きました。ジャッキーは仮面ライダーとかウルトラマンとか、それまでの”強い男”というヒーロー像とは違う”弱い男が修行して強くなる”というキャラクター設定に感動したし、みんなもそうだと思うけど”僕も強くなれるかもしれない”と勘違いさせてくれました(笑)」

小学生の頃から、友達に「ジャッキーに似てる」と言われていたという、ジャッキーちゃん。ジャッキーは好きだったが、「似てる」と言われることをあまりうれしく思ってはいなかった。

「雑誌で『カンニング・モンキー/天中拳』の写真を見た友達から、『ジャッキーに似てるね』と言われたのが最初です。小さい頃って、誰々に似てるって言われるのがすごく恥ずかしかったりするじゃないですか? だから、本当はジャッキーが好きだったのに、『ブルース・リーとユン・ピョウが好き』と言てました(笑)」

テレビで放送されるジャッキー映画は欠かさず観ていた少年時代のジャッキーちゃんは、ジャッキーのどこに惹かれたのだろうか?

「コメディ要素が強かったから、子供でも夢中になれるんですよね。容姿もアクションもカッコいいし、アクションシーンでは、人間の身体って、そんなふうに動くんだ!って驚かされたし。バック転やバック宙といった派手なアクションはもちろん、日常にある物を使ったアクションは真似したくなるし。もう全部が好きでした」

“真似したくなる”は、ジャッキー映画の魅力のひとつだが、ご多分にもれず、少年時代のジャッキーちゃんも友達と一緒に”修行”をしていたそう。

「映画を見終えた後は身軽になった気がして、ガードレールを乗り越えてみたり。酔拳の修行シーンを真似て、鉄棒にぶら下がって茶碗を持ったり。『少林寺木人拳』や『クレージーモンキー 笑拳』の修行シーンもよく真似してました」

とはいえ、最初からジャッキーのものまね芸人を目指していたわけではなく、当初志していたのは役者。だが映画やCMのオーディションを受けるも、思わぬ壁が待ち受けていた。

「オーディションに行く度、『ジャッキーに似てるね』と言われて、それがすごく邪魔になったんです。余計なイメージがついてしまうと、CMはほぼ受からないし、ドラマや映画も全くダメ。似ないように坊主にしてヒゲを生やしても『ジャッキーに似てるね』と言われてしまうんです(笑)。そこで30代後半になった時『だったら、この顔を活かすしかない』と開き直って、本格的にジャッキーのものまねを始めたんです」

ジャッキーのそっくりさんとして生きる覚悟を決めたジャッキーちゃん。真似るならアクションもできなきゃいけないと、スタントチームの門を叩く。

「運動神経がよいわけじゃないですけど、スタントマンの方が『アクションを芝居で埋められている』と褒めてくださって。実はそれって、ジャッキーの影響がめちゃくちゃあるんです。たとえばジャッキーって、裏拳を打って相手の右フックを避けるというシーンで、裏拳を打った後に驚いてから避けるみたいなアクションをするんです。それって決してスマートじゃないんですけど、その4分の1の間、8分の1の間から伝わってくるものがあるんですよね」

現代につながる礎を作ったジャッキー映画

自身もアクションを学ぶようになり、ジャッキーの凄さをあらためて知ったジャッキーちゃん。子供の頃はただ夢中で観ていたアクションシーンも裏側を知ると、その凄さがより理解できるようになった。

「70〜80年代は、撮影中に大ケガするのは当たり前。今年公開された『カンフースタントマン龍虎武師』を観ると、ジャッキーらが身体能力の限界を試したからこそ、現在のアクション映画があると感じるはず。現代のアクション映画の礎はジャッキーを含む、あの時代の香港映画陣が作ったことがよくわかるんです」

作品ごとに激しさや過激さを増していく、身体を張ったアクションや爆破シーンの火薬の量。当時のジャッキー映画が命をかけて作り上げていったアクションの形は、後年のハリウッドや日本の映画に多大な影響を与えていく。

「ジャッキーの”成家班(シンガバン)”(※1976年に設立。ジャッキー・チェンと共に活動するスタントマンと武道家のグループ。ジャッキー・チェン映画のスタントマン協会としても知られている)ってアクションチームから、世界に飛び立った人も結構いました。『ポリス・ストーリー2九龍の眼』のラストの壮絶な爆破とか、どこよりも早くやっていて、それをハリウッドが真似したり。現在も日本のスタント業界の最前線で活躍されている谷垣健治さん、下村勇二さん、大内貴仁さんも、ジャッキー映画を観て育っていると発言されています。日本のアクション映画を支えるスタントの基礎となり、根底にあるのは、ジャッキーのアクションなのではないでしょうか」

ジャッキー映画において特に凄いアクションシーンは何か訊いてみた。

「『プロジェクトA』の時計塔落ちも命がけで、すごい熱量を感じますが、やはり『ポリス・ストーリー』のシャンデリア落ちですね。あのシーンでジャッキーは、頚椎損傷までしているんです。シャンデリア落ちの現場は、今でも残っていて、僕も実際に現場のデパートに行き、あの高さ(地上30m)を見た時、『あそこから落ちたんだ!』とゾッとしました。ジャッキーは高所恐怖症だと言われてますけど、絶対に嘘だと思います(笑)」た主演も監督も務める、ジャッキーのアクションシーンに対するこだわりがよくわかるエピソードも話してくれた。

「ジャッキーが監督した映画って、とにかくよい画が撮りたいからと、簡単なアクションはスタントマンにお願いし、自分はカメラを覗くんですけど、難しいアクションシーンは自分でやって他の人に撮らせるんです。『サイクロンZ』でベニー・ユキーデの胸に回し蹴りする有名なシーンがあるんですけど、あれはジャッキーじゃなくて、チン・カーロッさんという有名なスタントマンがやっているんです。というのも、ジャッキーは逆脚では蹴れていたんですけど、撮りたい方向で美しく蹴れなかったから、スタントに任せたらしくて。そんな話からも、よい画を撮りたいというこだわりを感じます」

しかし、アクションシーンにとことんこだわりながら、なぜか要所要所に雑さが見えてしまうのもジャッキー映画の魅力。

「『プロジェクトA』の酒場のシーンで、ジャッキーがユン・ピョウにイスで背中を叩かれて痛がるんですけど。前のシーンで持っていたイスと、殴る時のイスが違ってたり。『プロジェクトA2 史上最大の標的』のタイガーと戦うシーンで、手錠を後ろ手にかけられている状況で出て行こうとするタイガーをジャッキーが『ちょっと待て!』と止める。そこでタイガーが振り返るんですが、なぜかタイガーの手錠が外れているとか。結構、雑なシーンも多いです(笑)」

2015年からジャッキーちゃん名義で活動を始め、テレビにも多数出演。〝ジャッキーのそっくりさん〞として知られるようになったジャッキーちゃんは、2017年に映画『スキップ・トレース』の宣伝時、ジャッキー本人との対面も果たしている。

2017年、ジャッキーとの対談が実現。その時にいただいたサインフォトは宝物だ。「物へのこだわりがないので、グッズはDVDやフィギュアしかもっていないんですが。部屋に飾っているのは、ファンからのプレゼントでいただいたセーターを着た80年代のジャッキー・チェンの写真です。“ジャッキーちゃん”と名前入りでサインしていただきました

「本人に会えた感想は、感無量のひと言です、夢心地でした! ドッキリだったので、裏で控えていたジャッキーが僕のネタを観てゲラゲラ笑っていたという話を後から聞いて、本当にうれしかったですね。セットチェンジの間も緊張で汗をかいてる僕にジャッキーが手うちわをしてくれたり、カタコトの英語でお話させていただいたり、映画に対する熱い愛を語ってくださり、本当にやさしい方なんです。それまで『本人に会ったら、ジャッキーちゃんを辞めよう』と思っていたんですけど。実際にお会いした瞬間、『もっとがんばろう』と思いました!」

世界的ムービースターの凄さを世に啓蒙したい

ジャッキーのものまねを始めた時から、「ジャッキーを知らない若い世代に、ジャッキーの凄さを啓蒙したい」と考えていたというジャッキーちゃん。

「若い子にジャッキー映画をもっと観てほしくて、ジャッキーの凄さを知らない世代の人たちを啓蒙するためにも、ジャッキーちゃんとして活動したいという気持ちがあって。多分、ジャッキーが以前みたいに頻繁に来日していたら、僕はものまねをやってなかったと思うんです。だって、本物に敵うわけがないですから。だから時代や偶然が重なって、僕はジャッキーちゃんとして活動しているところもあって。ここまで皆さんに認知してもらったことはラッキーだし、すごくありがたいと思うし。ご本人にお会いして、『ジャッキーの凄さを伝えなければ』という気持ちはより強くなりました」

では、ジャッキーの凄さがわかる映画ベスト5とは?

「絞るのは本当に難しいですけど、『プロジェクトA』『サンダーアーム/龍兄虎弟』『奇蹟/ミラクル』『酔拳2』『ベスト・キッド』ですね。『プロジェクトA』が公開された84年はいちばん出演本数多くて、動きもキレキレだし、脂が乗り切ってた最高潮の時代だと思います。86年公開の『サンダーアーム〜』も大好きで100回以上観てる作品です。『酔拳2』はカンフー作品の集大成。『奇蹟/ミラクル』は名作のリメイクなので、ジャッキー映画にしては物語がしっかりしています(笑)。『ベスト・キッド』は、ジャッキーと直接お会いした時に『今、次の世代を育てるための教育をする立場にいるんだ』と、トレーニングセンターを作られているという話をしてくださって。今実際に『ベスト・キッド』の敵役の子がそこでトレーニングをしているんです。そんな現在のジャッキーの姿にも重なります」

最後に誰でもできる、ジャッキー・チェンのものまねと、そのコツを教えてもらった。

「拳を痛がるジャッキーですね。思い切りカッコつけてパンチを打って、『ハァ〜ッ』と痛がる。大事なのは、パンチを打った時と痛がる時の緩急ですね。実際にジャッキー映画を観て、勉強してください!(笑)」

2017年、HAN-KUN(湘南乃風)のソロ楽曲「無問題」のMVでジャッキー映画のパロディを演じて、中国メディアでも話題となったジャッキーちゃん。「お声がけいただいた時はかなりビックリしました。日本と香港で撮って、アクションシーンはそこまで難しいことはしていないですが、こうして作品として残ることがすごくうれしいです。香港の女人街の街中で撮影した時、『ジャッキー・チェン!』って人だかりができたのもよい思い出です(笑)」写真提供:MAGIC MOMENT RECORDS

(出典/「昭和50年男 2023年9月号 Vol.024」)

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昭和50年生まれの男性向け年齢限定マガジン

昭和50(1975)年生まれの男性に向けて、「ただ懐かしむだけでなく、ノスタルジックな共感や情熱を、明日を生きる活力に変える」をテーマに、同世代ならではのアレコレを振り返ります。多彩なインタビューも掲載。
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