かつて子どもたちが憧れた仕事「大工さん」は、令和の今どうしている?

民俗や地域伝統文化のあれこれに没頭しがちなエディターが、あなたの日々の暮らしに、とても小さなときめきをお届けしましょう。言葉だけは知っている作法や行事、未来をひらく温故知新、興味はあるけどよくわからない民俗のことなどについてわかりやすく紹介します。

大人になったらなりたいもの、なんだ!?

これまで、小学生の「大人になったらなりたいもの」アンケート調査(第一生命保険)で、「大工さん」が2015年まで約20年近く毎年トップ10にランキングしていた。けれど、2021年よりランキングから外れてしまっている。「大工さん」という職業の魅力が子どもたちにとって減衰した理由まではわからないものの、生活圏内で上棟式などの大工の方たちを自然に見かける機会も減っている昨今、マンション・建売分譲住宅の普及や拡大に伴い、大工の職業自体をほとんど知らないか、見たことがないのかもしれない。

ちなみに、2023年発表の「大人になったらなりたいもの」最新ランキング(小中高生対象)によると、男子は、小中高の全てで3年連続1位「会社員」。女子は、小学生が3年連続1位「パティシエ」、中高生が3年連続1位「会社員」に。新しい質問「あなたの『憧れの人』は誰ですか?」では、すべての年代で「お父さん・お母さん」が1位になっている。

「大工入門は30歳からで大丈夫」と現場のリーダーが語った

大工とは、木造建造物の建築と修理を担える職人のこと。彼らの作業工程は、建造物の設計図に従いながら、作業所で事前に木材に行う「加工」と、現場で行う「組立」に大きく分かれている。

近年の主流となったプレカットを中心とした簡便な建築とは違い、大工として長く働くことができる伝統の手仕事を身に付けられるうえでも、伝統構法に必要な技術である墨付けや手刻みなどの経験を養う場がますます重要視されはじめている。

とある伝統構法の現場の方から、こんなつぶやきを聞いたことがある。「大工にマッチョはいないでしょ。図体が大きいと、棟上げで上に上がったりするときも不便だからね。だけど、近頃みんなが大工と思っている内装工たちは、体力のある若いうちに、短期間で大量の内装ボード張りなんかをすることで一気に稼げるから、マッチョが多い印象だね。ただそれも体力だけが充実している短い期間で終わってしまうんだ」

つぶやきは続く。「あとは、昔ながらの大工になりたいなら、社会経験を何かしら積んだ30歳からで十分と思ってる。大工は施主をはじめとした人とのコミュニケーションこそ大事だから。仕事としての大工が好きなら、そこから修業すれば技術は身に付く」

伝統構法を扱う昔ながらの大工には、基礎体力に加えて、繊細な技術力、さらに美意識の調和が求められているといえる。技術が身に付くと、大工の職人人生はとても長い。身体さえ元気なら、90代でも楽しく働くことができる。

そのように大工の世界で長く深い経験を積み、ある現場の長となった大工は、棟梁と呼ばれる。

すべては聖徳大使(厩戸皇子)の時代からはじまった

日本の大工の歴史を遡ると、大工道具の「差し金」を考案したといわれる聖徳太子の時代にまで遡るといわれる。この時代、土に関わる職人を「左官」というのに対して、木に関わる大工を「右官」としていたという説もあるくらい、大工は古くから人々に認められる仕事だった。

写真手前のL字形道具が「差し金」

そして現在、国土交通省では大工技能者の減少・高齢化が進行するなか、処遇改善、働き方改革、外国人受け入れや女性活躍等といった環境変化に対応しつつ、大工技能者等を確保・育成するための研修活動等を支援している。

そのような大工育成の視点や社員大工の雇用促進などにまつわる令和大工の今を体感できる動画が、ようやく完成しました。宮大工の現場レポートも含まれる3本です。完成したての動画を以下ご紹介しましょう。

(出典:『じゃぱとら』2023.11月号)

◆動画はこちら→ 「YouTube 伝統構法を扱う大工や宮大工たちの今」

もう1本

さらに1本

この記事を書いた人
中川原 勝也
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中川原 勝也

民俗と地域文化の案内人

エディター。地域伝統文化のこと、民俗のあれこれ、古民家・民藝・暮らしのこと、などを当サイトでは担当。これまで日本カルチャーを主なフィールドにしながら、国内の法人・自治体・商品のブランディングにまつわるメディア等を手掛けてきた。温故知新好きが募って、ただいま、月刊古民家誌『じゃぱとら』編集長。
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