恋人、親子、親友たちの3つの愛をテーマに描く映画『TOKYO,I LOVE YOU』が11月10日より新宿ピカデリーにて劇場公開!

ドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』などに出演して注目の役者・山下幸輝が主演する『TOKYO,I LOVE YOU』が2023年11月10日に公開される。本作の監督を務める中島央は、昭和50年生まれ——だったら『昭和50年男』は取り上げない手はない。中島監督への同世代インタビューをお届けする。

映画が生活の近くにあった1980年代

「父がね、ものすごい映画好きで、子供の頃は毎週末映画に連れて行かれました」と映画監督の中島 央がインタビューの口火を切る。

「でも、途中で寝ちゃうこともあって…。そうすると『お前寝たから来週もう1回行くぞ』みたいな感じで何度も観せられる。僕たちが子供だった80年代は、アメリカ映画の全盛期じゃないですか。スティーヴン・スピルバーグとかジョージ・ルーカスがいて、さらにロバート・ゼメキスが出てきて。今よりもっと映画が生活そのものに近かったのかな。そんだけ朝から晩まで観ていれば映画好きになりますよ、当たり前ですけどね」

中島はサンフランシスコ州立大学映画学科に留学し、卒業後は脚本家として映画人のキャリアをスタート。2007年の監督デビュー作『Lily』は世界中の映画祭で激賞され、数々の賞を受賞した。その中島が監督・脚本を担当する最新作品が『TOKYO,I LOVE YOU』である。

東京の3つの街を舞台に、恋人・親子・親友の愛を描く連作

「昔、サンフランシスコから東京に帰ってきた時、東京ってなんて素敵な街だろうって思ったんです。特にお台場が東京でも最も好き。なんで『東京』という街を誰も取り上げないんだろうと昔から思っていたし、そういう映画をずっと作りたかった。なんか、やらなきゃいけないっていう使命感に近いっていうか」

本作は「東京」を舞台にした3つの物語(Chapter)で構成されている。

「Chapter One」は、未来からやってきた少女・アイが、東京タワーを舞台に幼馴染み同士のケンとミミの恋を実らせようと奔走する。「Chapter Two」は、新宿界隈で40年にもわたってキッチンカーを運営する父・ジョージと映画の制作を志望する娘・カレンとのこじれた関係を描く。そして「Chapter Three」は、ニューヨークから帰国したダンサーのリヒトが余命3ヶ月の友人の治療費を稼ぐために、仲間と協力してお台場を舞台に奮闘する。

Chapterは順に恋愛、家族愛、友情とどれも愛をテーマにしている。それらの主人公には、中島のパーソナリティが透けて見える。

「Chapter One Tokyo Tower」ミミ(加藤ナナ)とケン(草野航大) ©TOKYO,I LOVE YOU FILM PARTNERS
「Chapter Two Shinjuku Neighborhoods」父・ジョージ(オギー・ジョーンズ)と娘・カレン(小山璃奈) ©TOKYO,I LOVE YOU FILM PARTNERS
「Chapter Three Odaiba」リヒト(山下幸輝)、ハル(羽谷勝太)、ノア(坂井 翔)、ユージン(下前祐貴)、レイ(島津 見)、ダン(西村成忠) ©TOKYO,I LOVE YOU FILM PARTNERS

「アメリカから帰国したというリヒトの身の上の設定は、自分を重ねているのと、脚本の都合上という理由から。ずっと原宿辺りに住んでいる人が突然『東京ってすばらしい! 愛してるぜ』なんて言うと『どうしたの?』ってなるし気持ち悪いでしょ。でも、長い間海外にいて久しぶりに東京を見ると『ヤベえ、東京って本当に最高じゃん』って自然に思える。僕も今はだいぶ落ち着いたけれど、昔は外国にいる間たまらなく親友に会いたくなったんですよ。リヒトが仲間と再会して酒を飲んではしゃぐシーンは、自分の体験そのものです」

Chapter Oneのケンとミミのラブストーリーは、中島の映画鑑賞の記憶によって生まれた。

「未来のケンとミミの娘・アイが現代にやってきて恋の架け橋になるって、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。本当に大好きな映画だし、僕たちの世代は何度も観ているよね」

Chapter Twoの主人公は、キッチンカーでの生活のこだわりを娘のカレンに説くジョージと、苦悩を抱えながら映画制作に取り組むカレン。両者は、中島の父親と映画監督である中島自身を投影しているかのようだ。

「2年前、ちょうどこの映画の脚本を書き始めた頃に僕の娘が生まれたんです。それもあって父親を描きたかったのかな。カレンは結構冷静にキャラクターを作りました。映画を撮れないのを周りの環境のせいに言い訳ばかりしていて、こういうヤツが実際にいたら面倒くさいだろうなって(笑)」

Chapter Threeでは、医療費を稼ぐためにリヒトがダンスコンテストに参加、そこで審査員から辛辣な言葉をかけられる。

「若い人へのメッセージっていうわけでもないですけど、自分が純粋に夢を求めてがんばろうという時に、それをくじくようなことを言うくだらない大人に会っても、決して負けないで、相手にしないでっていう。あと、リヒトが物語を引っ張る主人公なので、派手で圧倒的なパフォーマンスでそういう大人を軽くあしらうっていうカッコいい見せ場がないと映画のカタルシスがないんですよ」

コンテストでリヒトが披露する派手なダンスは見もの ©TOKYO,I LOVE YOU FILM PARTNERS

連作である以上、これら3つのエピソードがどのように交差するのかも見所のひとつ。そこにも中島のキャリアや嗜好が影響している。

「異なる物語の登場人物を同じ舞台に登場させるくだりは、『ドラゴンクエストⅣ』を参考にしました。『ドラクエⅣ』って各章でキャラクターを育てて、最後の章で段々と集まってパーティが完成する。そのストーリー構成は革命的だし、大好きなゲームですよ。映画のChapterの時系列は、One→Three→Twoの順番ですが、これを使った仕掛けはクエンティン・タランティーノの『パルプ・フィクション』の手法からです」

今だからこそカッコつけずに愛を正面から描く

中島は「徹底的に娯楽性を追求したエンタメ作品を作りたいという強い意志を持って」制作に臨んだと、プレス向けにコメントをしている。どのような経緯でそのような心境に至ったのだろうか。

「コロナ禍で生と死みたいのをみんなが考えること、考える状況に追い込まれたら、映画や音楽でのカッコつけたりもったいぶったりする表現はこれからなくなるだろうと思ったんですね。『もっとストレートに語ろうよ』っていう気持ちが生まれてくる。ただ、愛とかLOVEって、一歩間違うと胡散臭くなっちゃうので気をつけなきゃいけないということは、同時にすごく考えています」

3つの愛の物語は、希望を感じさせる結末を迎える。「我々の背中を押すような物語になるように作りました」と中島は続けた。

「あなたはひょっとして自分の人生を暗く見てるかもしれないけど、そんなことはなくって。すごくいい友達も親も、恋人も、妻も、旦那もいるんだよ。人生ってすばらしいんだよ。もうね…人生自体を肯定しないと駄目だと思います。そう思えたのはこの映画がやっぱり『東京』を題材にしているから。僕はもう本当に心から東京が大好きなんで。『TOKYO,I LOVE YOU』っていうタイトルも好きだし、この映画自体が東京に向かって、愛を叫んでる映画だと思っています。今まで自分が作ったなかでも、ベストな3本の物語が生まれたという自信があります。もちろん、現時点ですけど」

『TOKYO, I LOVE YOU(トーキョー、アイラブユー)』
主演:山下 幸輝
出演:松村龍之介、羽谷勝太、坂井 翔、島津 見、下前祐貴、西村成忠、加藤ナナ、草野航大、奏 みみ、小山璃奈、オギー・ジョーンズ、長谷川美月、テリー伊藤、田中美里、他
監督・脚本:中島 央
制作:株式会社ウィスコム
配給:ナカチカピクチャーズ
製作:「TOKYO, I LOVE YOU」製作委員会
公式サイト https://tokyo-iloveyou.com/

この記事を書いた人
ぬまっち
この記事を書いた人

ぬまっち

Dig-it中の人

ライトニング編集部に配属されたのは2010年。その後、海外ガイド本、美容専門誌などを渡り歩き、再びライトニング編集部へ戻ってくるも実は本誌で執筆したことがないDig-it中の人。延べ5年ほど在籍しているのに寂しい!ということでWEBで書くことを決意(編集長はまだ知らない)。東京都町田市出身。小学生の時、駅前のマルカワでエドウィンのジーパンとネルシャツを購入してもらい、アメカジデビュー。その後エビちゃん期を乗り越え、ゆるくアメカジ周りを周回中。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

東洋エンタープライズが手がける「ゴールド」。高品質な素材選びに一切の妥協なし。

  • 2026.10.20

1965年に創業した日本屈指の老舗メーカー東洋エンタープライズ社が手がける〈ゴールド〉。同社が得意とするヴィンテージへの膨大な知見と技術力の高さを活かしつつも上質にモダナイズしたものづくりに定評がある。着用時のシルエットはもちろん、高品質な素材選びに一切の妥協をしないこと。それこそがシンプルな服に深...

原毛から生地まで。一貫生産を守る英国生地の名門「ムーン」とは?

  • 2026.10.19

服を突き詰めていくと辿り着くのが生地。トラッド好きなら一度は耳にしたことがあるであろう英国の名門が「ムーン」だ。羊毛から紡績、染色、織布を一貫して行う英国最後の生地メーカーが誇る伝統のモノづくりに迫る。(写真は、生地の製造において重要な“織り”の工程。タテ糸とヨコ糸をゆっくりと交差させ、チェック柄が...

世界最高峰のニットメーカー「JOHN SMEDLEY」が編むもの。

  • 2026.10.20

イングランド中部、リーミルズの自社工場で240年以上前からニットウエアを作り続ける〈ジョン スメドレー〉。1784年に創業した同ブランドが編んできた歴史と伝統が息づく場所で彼らが編むものとは。 240年の伝統と魂が息づくファクトリー 英国のトラッドブランドとして群を抜く歴史を持つのが〈ジョン スメド...

「BEORMA」140年の伝統を受け継ぐ、英国屈指のレザークラフト

  • 2026.10.21

英国トラッドを語るうえで欠かすことのできない存在がレザークラフトだ。140年の歴史とクラフトマンシップを受け継ぎ、現代のスタイルにも馴染む唯一無二のプロダクトを生み出す〈べオーマ〉は、その筆頭となりうる存在だ。 熟練職人の魂宿る伝統のレザークラフト 英国中部の小さな町・ウォルソール。革加工・馬具産業...

ガレージ、インテリア、リフォームまで! 趣味人のための、物件案内。

  • 2020.01.20

好きなものと暮らす、理想の城を手に入れよう。 家は、ただ暮らすためだけの場所じゃない。 どこに住むか、どんな空間にするか、そこで何を楽しむか。 ガレージハウスやアメリカンハウス、趣味部屋、インテリア、リノベーションまで、 「Lightning」ならではの視点で趣味人の理想の住まいを紹介する。

#PR

Pick Up おすすめ記事

HISTORY OF B.V.D. 着心地を追求した150年

  • 2026.10.20

1876年、ニューヨークで誕生したB.V.D.。風を通すゆったりとした肌着から、水着、街や休日を彩るシャツまで。その歩みを貫くのは、日々を心地よく過ごすための工夫だ。時代ごとの広告や製品を手がかりに、着心地を追求してきた150年をたどる。 HISTORY OF B.V.D. 1876年 ニューヨーク...

「BEORMA」140年の伝統を受け継ぐ、英国屈指のレザークラフト

  • 2026.10.21

英国トラッドを語るうえで欠かすことのできない存在がレザークラフトだ。140年の歴史とクラフトマンシップを受け継ぎ、現代のスタイルにも馴染む唯一無二のプロダクトを生み出す〈べオーマ〉は、その筆頭となりうる存在だ。 熟練職人の魂宿る伝統のレザークラフト 英国中部の小さな町・ウォルソール。革加工・馬具産業...

【連載】ビートルズのことを考えない日は一日もなかった

  • 2024.02.05

80年代、私的ビートルズ物語。 ビートルズ研究と収集に勤しむビートルデイズを始めて早44年(Since1980)。 なにをするにもビートルズが基準だった『昭和40年男』編集長のビートルズ史を、 当時の出来事とともに振り返ります。

気鋭のアイウエアブランド「CUBITTS」が描く、クラシックとモダンの共鳴

  • 2026.10.19

18世紀から20世紀にかけて眼鏡産業の世界的な中心地であったものの戦後、衰退の一途を辿ったロンドン。この地で2013年に創業した「キュービッツ」は当時を彷彿とさせるクラシックスタイルをモダンに昇華させた独自の世界観を築く気鋭のブランドだ。 伝統と現代とを繋ぐアイウエアの研究所 「キュービッツ」は伝統...

金子ノブアキが着る【REDKAP × FREAK’S STORE】

  • 2026.10.21

長い歴史を持つワークウエアブランド〈レッドキャップ〉と〈フリークス ストア〉のコラボアイテムを金子ノブアキが今の感覚で着こなす。年齢を重ねたからこそ楽しめる服のこと、ブランドが持つ哲学のこと、そしてこれから大切にしていきたいこと。45歳を迎えた金子さんに、ファッションと生き方について話を聞いた。 タ...