
夢の始まりは、0からのアメリカ挑戦。
ヴィンテージバイクの業界に限らず、アメリカで活躍する日本人の多くは、日本で成功を収め、アメリカに挑戦すると言う構図が一般的に感じる。今となっては世界中の旧車フリークにその名を知らしめるキヨズガレージ/清永氏だが、その実、日本では海上自衛隊に勤め、メカニックとしての経験が皆無のままに渡米。アメリカで0からキャリアをスタートさせ、実績を積み重ねた異色の経歴を持つ。
2012年に独立してキヨズガレージをオープンするが、現時点でのショップは看板すらなく、外観からはバイクショップであることは一切わからない。さらに、現代のショップやブランドの宣伝活動に欠かせない自社SNSを持つことなく、キヨズガレージに辿り着くのは口コミのみ、という昔ながらの運営スタイルを貫いているのも特徴である。
それは、語弊を恐れずに言えば、全ての仕事を受け入れるのではなく、「100%情熱を捧げられる仕事に集中したい」と言う清永氏の思いを映し出すものだ。
カスタムとレーシング、 自分で造って自分で走る。
キヨズガレージの日常業務の大半は、ヴィンテージH–D、特にナックルヘッドのリビルドやホップアップを含むエンジンワーク。西海岸を中心に、アメリカ全土の旧車フリークから頼られる手だれのメカニックである。
その一方で、オールドスクールチョッパーの祭典、BORNFREEのインバイテッドビルダーに選出され、アワードを獲得するカスタムビルダーであり、自らビルドしたレースバイクに乗り、ランドスピードレースに置いてワールドレコードを樹立するスピード狂の一面を持つ。カスタムビルドとレーシング、この二つがキヨズガレージ、清永氏を語る上で欠かせないキーワードである。
この記事の後半で紹介するCBエンジン二基がけの月光”Moon Light”と三基がけの銀河”Galaxy”は、キヨズガレージ創業と同時にスタートしたCB750ベースのカスタムレーサー、桜花”Cherry Blossom”から繋がるシリーズプロジェクト。
集大成と言える銀河が今年5月のドライレイクレース、エルミラージュで遂にレースデビューを果たしたわけだが、「桜(桜花)を月(月光)が照らし、宇宙(銀河)が包み込む」という独自の世界観の元にスタートした3台のシリーズ作は約10年に及ぶ壮大なプロジェクトとなった。
そのどれもが、他の何にも似ることのないオリジナリティに溢れたカスタムバイクであり、最高速を競うランドスピードレースをターゲットにビルドされたものだ。
ちなみに月光は、先述のBORNFREEにてビルダーズチョイス1stプレイスに選ばれた実績を持つ。西海岸最大級のチョッパーショーにて、最高峰のアワードを獲得しながらも、本来の目的であるランドスピードレースにおいて、エルミラージュ・ドライレイクレースで175.002mph(約281.6km/h)を記録。まさに、カスタムとレーシングの両面を繋ぐ清永氏のアイデンティティを高次元で体現するマシンである。
そして、昨年はナックルヘッドの愛機、秋水”The Sharp Edge”に乗り、エルミラージュで自身初のレコードブレイクを達成。独創的なカスタムビルドが外観上の華だけでなく、車重の軽量化や強度、整備性の高さなど、スピードのための機能美を踏まえた手法であることを証明した。
速さ=正義のストイックな世界においても、「他人と同じ」を忌み嫌い、スピードと同時にカスタムの独自性を追い求める。そして、全てのカスタムビルドにそれぞれのストーリーがある。それが清永氏のカスタム/レーシングの特徴である。

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