戦績を残した1950年代までの3台のレースバイク。英国ゴールデンエイジの産物をとくと見よ。

英国車を中心としたヴィンテージモーターフリークたちによって作り上げられるレースイベント、『Festival of SIDEWAY TROPHY』。イベントでは’70年代までのイギリス車を中心としたヴィンテージモーターサイクルがスピードを競い合う。ここではイギリスのモーターサイクルが欧米各国のレースで輝かしい戦績を残した1950年代までの3台のレースバイクをピックアップ。

1.1950 VINCENT COMET GREY FLASH REPLICA|VINCENTが誇る往年の工場レーサーをオマージュ。

単気筒の排気量500㏄コメットをベースとして、東京の英国旧車専科ブリティッシュビートが往年のワークスレーサー“グレイフレッシュ”をオマージュした1台。本物の“グレイフラッシュ”はVINCENTの工場レーサーであり、’49〜’51年までに僅か31台しか生産されなかった超希少モデル。

この車体は外装だけでなく、エンジンスペックもグレイフラッシュに基づきチューンアップ。CAFE RACER’S TRIBUTE RUNにエントリーしたオーナーは、今後LOCなども視野に入れてこのレース活動を展開していく予定とのこと。できたばかりのため調整が必要な箇所はまだあるそうだが、伝説の工場レーサーの走りが蘇る瞬間に期待が高まるばかりだ。

鍛造ジュラルミンの油圧ダンパーを備えるガードローリックフォークがシリーズCの象徴。エアスクープ付きのフロントブレーキはグレイフラッシュの専用パーツ。ホイールはF20-R19インチで前後共にアルミリムを採用
コメットエンジンは、グレイフラッシュのスペックに基づきリビルドされた。MarkⅡカム、オメガ・ハイコンプレッションピストンをインストール。AMAL TTキャブレターもグレイフラッシュで採用されたレーシングパーツだ

2.1930s VINCENT TTR|オリジナルエンジンを搭載するVINCENT初の市販レーサー。

1935年から’39年までに約40台生産されたVINCENTシリーズAの希少な市販レーサーTTR。’34年以前にマン島TTレースに出場するVINCENTのレーサーで使用していたJAPやホイットワースエンジンに代わり、初めてVINCENTのチューンドエンジンを搭載したTTの市販バージョンである。

ベースは刻印が加工され、タンクが取り外された状態で手に入った素性の怪しい車両であったが、パーツはほぼ全て本物のTTRが使用されていたため、東京のTRIDEが丁寧にリビルドした1台だ。アルミシリンダー、ブロンズヘッドを採用するチューンドエンジンや足周りなど、TTRだけに採用されたVINCENT謹製のレーシングパーツにも注目したい。

オリジナルに基づいてリビルドされた心臓部。アルミシリンダーはイギリスのCONWAY MOTORSで製作し、ブロンズヘッドはオリジナルの最終型MarkⅢ。キャブレターは戦後のワークスレーサーで採用されたAMAL TT9を装備
ガーダーフォークは通常の市販モデルとよく似たスタイルだが、大型のドラムブレーキを装着するためにボトムがやや広がった専用設計。ドラブレーキはハブとパネルにアルミを使用したオリジナルのコンポジットブレーキを装着

3.1939 TRIUMPH T100|オートレースのパイオニアが残したヒストリカルな1台。

オリジナルの外装を残したシンプルなスタイルだが、その実このマシンの正体は、1950年代からTRIMPHをはじめとした英国車で日本のオートレースの黄金時代を築き上げた原正洋氏が生前最後に製作したT100である。現オーナーの吉原氏は約5年前にこの車両を手に入れて以来、オンオフ問わず様々な草レースに没頭し、数々のトロフィーを獲得している。

吉村氏の手に渡る前のファーストオーナーは、「日本で直線最速のTriumph」を目指して原氏にオーダーして製作された車両だが、実際に日本のヴィンテージレース『TIME TUNNEL』でチャンピオンになるなど、日本国内のレース史を逞しく渡り歩いてきたヒストリカルなTriumphなのだ。

原氏のチューンが施された心臓は排気量500㏄のままに650㏄のクランクを使用し、オートレース用のハイコンプピストンをインストール。ヘッドはアルミブロックから削り出したお手製マニホールドによってデュアルキャブ化
戦前のTriumphに採用されたガーダーフォークはオリジナルパーツだが、原氏によって丁寧にセッティングされている。スクリーンは前オーナーがVINCENTのレーサーをイメージして装着したスタイルを残している

(出典/「CLUTCH2024年2月号 Vol.94」)

この記事を書いた人
CLUTCH Magazine 編集部
この記事を書いた人

CLUTCH Magazine 編集部

世界基準のカルチャーマガジン

日本と世界の架け橋として、国外での販路ももつスタイルカルチャーマガジン。本当に価値のあるモノ、海外記事を世界中から集めた、世界基準の魅力的コンテンツをお届けする。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

原毛から生地まで。一貫生産を守る英国生地の名門「ムーン」とは?

  • 2026.10.19

服を突き詰めていくと辿り着くのが生地。トラッド好きなら一度は耳にしたことがあるであろう英国の名門が「ムーン」だ。羊毛から紡績、染色、織布を一貫して行う英国最後の生地メーカーが誇る伝統のモノづくりに迫る。(写真は、生地の製造において重要な“織り”の工程。タテ糸とヨコ糸をゆっくりと交差させ、チェック柄が...

金子ノブアキが着る【REDKAP × FREAK’S STORE】

  • 2026.10.21

長い歴史を持つワークウエアブランド〈レッドキャップ〉と〈フリークス ストア〉のコラボアイテムを金子ノブアキが今の感覚で着こなす。年齢を重ねたからこそ楽しめる服のこと、ブランドが持つ哲学のこと、そしてこれから大切にしていきたいこと。45歳を迎えた金子さんに、ファッションと生き方について話を聞いた。 タ...

気鋭のアイウエアブランド「CUBITTS」が描く、クラシックとモダンの共鳴

  • 2026.10.19

18世紀から20世紀にかけて眼鏡産業の世界的な中心地であったものの戦後、衰退の一途を辿ったロンドン。この地で2013年に創業した「キュービッツ」は当時を彷彿とさせるクラシックスタイルをモダンに昇華させた独自の世界観を築く気鋭のブランドだ。 伝統と現代とを繋ぐアイウエアの研究所 「キュービッツ」は伝統...

東洋エンタープライズが手がける「ゴールド」。高品質な素材選びに一切の妥協なし。

  • 2026.10.20

1965年に創業した日本屈指の老舗メーカー東洋エンタープライズ社が手がける〈ゴールド〉。同社が得意とするヴィンテージへの膨大な知見と技術力の高さを活かしつつも上質にモダナイズしたものづくりに定評がある。着用時のシルエットはもちろん、高品質な素材選びに一切の妥協をしないこと。それこそがシンプルな服に深...

Pick Up おすすめ記事

ガレージ、インテリア、リフォームまで! 趣味人のための、物件案内。

  • 2020.01.20

好きなものと暮らす、理想の城を手に入れよう。 家は、ただ暮らすためだけの場所じゃない。 どこに住むか、どんな空間にするか、そこで何を楽しむか。 ガレージハウスやアメリカンハウス、趣味部屋、インテリア、リノベーションまで、 「Lightning」ならではの視点で趣味人の理想の住まいを紹介する。

#PR

HISTORY OF B.V.D. 着心地を追求した150年

  • 2026.10.20

1876年、ニューヨークで誕生したB.V.D.。風を通すゆったりとした肌着から、水着、街や休日を彩るシャツまで。その歩みを貫くのは、日々を心地よく過ごすための工夫だ。時代ごとの広告や製品を手がかりに、着心地を追求してきた150年をたどる。 HISTORY OF B.V.D. 1876年 ニューヨーク...

メイド・イン・ノーサンプトンを貫く英国靴の筆頭「Crockett & Jones」のモノづくり

  • 2026.10.21

革靴の聖地であるノーサンプトンにて1879年に初声をあげた〈クロケット&ジョーンズ〉。英国靴を語る上で欠かすことのできない同ブランドのモノづくりの現場に足を運んだ。 一足の革靴に宿る147年の歴史と誇り 革靴産業の一大拠点として名を馳せる英国・ノーサンプトン。中世から靴職人が集まり、17世紀には軍用...

原毛から生地まで。一貫生産を守る英国生地の名門「ムーン」とは?

  • 2026.10.19

服を突き詰めていくと辿り着くのが生地。トラッド好きなら一度は耳にしたことがあるであろう英国の名門が「ムーン」だ。羊毛から紡績、染色、織布を一貫して行う英国最後の生地メーカーが誇る伝統のモノづくりに迫る。(写真は、生地の製造において重要な“織り”の工程。タテ糸とヨコ糸をゆっくりと交差させ、チェック柄が...

気鋭のアイウエアブランド「CUBITTS」が描く、クラシックとモダンの共鳴

  • 2026.10.19

18世紀から20世紀にかけて眼鏡産業の世界的な中心地であったものの戦後、衰退の一途を辿ったロンドン。この地で2013年に創業した「キュービッツ」は当時を彷彿とさせるクラシックスタイルをモダンに昇華させた独自の世界観を築く気鋭のブランドだ。 伝統と現代とを繋ぐアイウエアの研究所 「キュービッツ」は伝統...