上等なハットと上品なコーヒー沖縄の太陽が照らす2つで1つの空間。

東京・渋谷に店舗を構える人気店THE FAT HATTERは沖縄・北谷にも存在する。キューバの街並みを意識したアメリカンビレッジに佇むそこは、日本でありながらコロニアル調の建物に囲まれていて、非日常的な場所。重厚感のあるショップと綺麗な海が一望できるカフェは対照的であるが、どちらかが欠けてはこの空間は完成しない。こだわりの詰まった、ストーリーのあるモノで溢れ、思わず吸い込まれてしまうだろう。

引き寄せの法則。

目を惹くがっしりとした大きなカウンターとその後ろにあるガラス張りの工房はまるで映画のセットを彷彿させる。カウンターは1860年代、スペインの統治下であったキューバのバーカウンターをイメージしている

VISTA CLUBには素敵な誕生秘話がある。元々THE FAT HATTER東京店の店長を務めていた仲眞氏は自身の都合で仕事を辞め、故郷である沖縄に帰る旨をTHE FAT HATTER代表、菊地氏に伝えたところ「それなら沖縄にお店を出そう」と言ってくれたという。

菊地氏は生粋の沖縄好きで年に何十回か来ていたこともあり、お店を出す構想はあったがそれが現実となったきっかけは社員の退職願だったというわけだ。地元民や観光客で賑わい、海が一望できるこの場所は当然物件が空きにくい。だがタイミングよく空いたり、物件の地主がたまたま顧客だったりとご縁と偶然が重なってできた空間である。

入口から太陽光が真っ直ぐに入ってくる温もりのある店内。シンプルで洗練された内装は、だれでも気軽に入店しやすい。贅沢に波の音を聞きながら一流のバリスタが淹れるとっておきのコーヒーを召し上がれ

当初予定していなかったが目の前に海があるメリットを活かしてカフェを併設した。内装のイメージや家具の製作は、菊地氏はじめGLADHANDのL.氏とプラスポケットの安藤氏のブランドの垣根を越えた共同製作によってできたもの。気楽に入店しやすいように吹き抜けになっていたり、細部までこだわりが散りばめられている。

沖縄の特色を活かしてハワイアンシャツなど東京店とは違ったアパレルのラインナップになっているのもここならでは。ショップでハットをオーダーして、コーヒーを飲んで帰る。そんな訪問客が多い。

京都にあるARCADIAというアンティークショップで出会ったこのパラソルは1920年代頃のアメリカン・ヴィンテージ。HATTERと書いてあることから、恐らく当時の帽子店が使用していたものを約100年後に巡り巡って現代の帽子店に受け継がれている
伝説的メーカーであるHUTCHから生まれた1981年のOLD BMX。知る人ぞ知るこのモデルは滅多にお目にかかれないレアもの。ショップに置いてあるインテリアではなく、菊地氏が沖縄での一つの移動手段として実際に愛用している
アメリカで初めてレジを作ったNATIONAL製。100年前のものが現存し、動いている。旧いレジ特有のジャリンという大きな音は、現代ではなかなか聞くことができない。心地良く、耳に残る。たまに調子が悪くなるのはご愛嬌
1800年代に存在したハットカタログのポスターは、多様な形のハットがずらっと並んでいるのが印象的。レジの横にあり見過ごしがちだが、ヴィンテージショップで偶然出会ったこの幻のポスターを訪れた際にはとくとご覧あれ

それぞれの個性を出しつつも統一感のあるふたつの空間。

お馴染みのオーセンティックモデルや新作など様々なラインナップ。高級感のあるディスプレイは思わず購買意欲を搔き立てられる。

カフェの入り口には何やら特別なメッセージが隠れている。可愛らしいねずみがコーヒー豆を給油中、コーヒー豆を辿るとそこには「coffe is the GASOLINE of LIFE(コーヒーは人生のガソリンだ)」

おすすめのメニューは自家製オレンジシロップを入れたアイスアメリカーノ。苦味と甘味が邪魔することなく、コーヒーの新しい側面を見事に引き出している。時期によってはパイナップルやパッションフルーツなどの沖縄らしいコーヒーもいただける。

(出典/「CLUTCH2023年8月号 Vol.92」)

この記事を書いた人
CLUTCH Magazine 編集部
この記事を書いた人

CLUTCH Magazine 編集部

世界基準のカルチャーマガジン

日本と世界の架け橋として、国外での販路ももつスタイルカルチャーマガジン。本当に価値のあるモノ、海外記事を世界中から集めた、世界基準の魅力的コンテンツをお届けする。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

決して真似できない新境地。18金とプラチナが交わる「合わせ金」のリング

  • 2025.11.17

本年で創業から28年を数える「市松」。創業から現在にいたるまでスタイルは変えず、一方で常に新たな手法を用いて進化を続けてきた。そしてたどり着いた新境地、「合わせ金」とは。 硬さの異なる素材を結合させるという、決して真似できない新境地 1997年の創業以来、軸となるスタイルは変えずに、様々な技術を探求...

時計とベルト、組み合わせの美学。どんなコンビネーションがカッコいいか紹介します!

  • 2025.11.21

服を着る=装うことにおいて、“何を着るか”も大切だが、それ以上に重要なのが、“どのように着るか”だ。最高級のプロダクトを身につけてもほかとのバランスが悪ければ、それは実に滑稽に映ってしまう。逆に言えば、うまく組み合わせることができれば、単なる足し算ではなく、掛け算となって魅力は倍増する。それは腕時計...

2025年秋冬、「ジェラード」から厳選されたヴィンテージモチーフが息づく至高のコレクションが到来!!

  • 2025.12.12

2025年秋冬、ジェラードらしいネイティブアメリカン、ミリタリー、クラシックなワークウエアなど、厳選されたヴィンテージモチーフが息づく至高のコレクションが到来。Lightningがその中からおすすめアイテムを厳選して紹介する。 Salem Coat [Lot No_AG12420] 6年ぶりのリリー...

「アイヴァン」からニューヨークに実在する通りの名前を冠した新作アイウエアコレクション登場

  • 2025.11.21

ニューヨークに実在する通りの名前を冠した「アイヴァン」の新作コレクション。クラシックな要素をサンプリングしながらも現代の空気感を絶妙に捉え服と同等か、それ以上にスタイルを左右する究極のファッショナブルアイウエア。 Allen 2023年、NYに誕生した「ビースティ・ボーイズ・スクエア」。その付近で出...

Pick Up おすすめ記事

グラブレザーと、街を歩く。グラブメーカーが作るバッグブランドに注目だ

  • 2025.11.14

野球グローブのOEMメーカーでもあるバッグブランドTRION(トライオン)。グローブづくりで培った革の知見と技術を核に、バッグ業界の常識にとらわれないものづくりを貫く。定番の「PANEL」シリーズは、プロ用グラブの製造過程で生じる、耐久性と柔軟性を兼ね備えたグラブレザーの余り革をアップサイクルし、パ...

今こそマスターすべきは“重ねる”技! 「ライディングハイ」が提案するレイヤードスタイル

  • 2025.11.16

「神は細部に宿る」。細かい部分にこだわることで全体の完成度が高まるという意の格言である。糸や編み機だけでなく、綿から製作する「ライディングハイ」のプロダクトはまさにそれだ。そして、細部にまで気を配らなければならないのは、モノづくりだけではなく装いにおいても同じ。メガネと帽子を身につけることで顔周りの...

この冬買うべきは、主役になるピーコートとアウターの影の立役者インナースウェット、この2つ。

  • 2025.11.15

冬の主役と言えばヘビーアウター。クラシックなピーコートがあればそれだけで様になる。そしてどんなアウターをも引き立ててくれるインナースウェット、これは必需品。この2つさえあれば今年の冬は着回しがずっと楽しく、幅広くなるはずだ。この冬をともに過ごす相棒選びの参考になれば、これ幸い。 「Golden Be...

着用者にさりげなく“スタイル”をもたらす、“機能美”が凝縮された「アイヴァン 7285」のメガネ

  • 2025.11.21

技巧的かつ理にかなった意匠には、自然とデザインとしての美しさが宿る。「アイヴァン 7285」のアイウエアは、そんな“機能美”が小さな1本に凝縮されており着用者にさりげなくも揺るぎのないスタイルをもたらす。 “着るメガネ”の真骨頂はアイヴァン 7285の機能に宿る シンプリシティのなかに宿るディテール...

スペイン発のレザーブランドが日本初上陸! 機能性、コスパ、見た目のすべてを兼ね備えた品格漂うレザーバッグに注目だ

  • 2025.11.14

2018年にスペイン南部に位置する自然豊かな都市・ムルシアにて創業した気鋭のレザーブランド「ゾイ エスパーニャ」。彼らの創る上質なレザープロダクトは、スペインらしい軽快さとファクトリーブランドらしい質実剛健を兼ね備えている。 日々の生活に寄り添う確かなる存在感 服好きがバッグに求めるものとは何か。機...