「JINJI」OWNER・Julien Lipszyc
ミリタリーやアイビー、ネイティブアメリカンにヒッピー、さらにはベースボールなどアメリカンスタイルに強く惹かれた。一番の理想はフランス映画『ライオンと呼ばれた男』のジャン・ポール・ベルモンドのスタイルに感銘を受けた。
ヘリテージスタイルのアイテムを巧みなディスプレイで提案。
パリの中心地、リュクサンブール宮殿やパンテオン、オルセー美術館など、観光客に人気スポットの多いエリアの小径沿いにあるJINJIは、パリジャンたちに人気のマルチブランド・ブティックだ。
最近では「JINJI」ラベルの付いた自社商品も増えてきたが、日本やアメリカ、イギリス、ドイツなど、世界中のこだわりの強いブランドを揃えている。The REAL McCOY’SやKAPITALが主力ブランドで、フランスでも絶大な人気を誇る。
INVERALANのニットも充実。フットウエアはドイツのBIRKENSTOCKにアメリカンヘリテージブランドのAldenやWESCO。いずれもオーナーであるジュリアンの好みがかなり強い。当然バイイングはすべてオーナーのジュリアンが行う。
「歴史と伝統を持ち、美しい仕上がりを誇る、非常に強い想像力と比類のないノウハウを持つブランドの服、靴、アクセサリーをセレクトしてます。中には希少で象徴的なヴィンテージピースも含まれています」
こだわりの強さが感じられる言葉だが、それを陽気に、時折ウインクをしながら話すジュリアンは、さすが生粋のパリジャン。自分で手に取り、吟味してセレクトしているだけに、顧客への説明も的確だが、このブティックの素晴らしさはディスプレイがじつに巧みだ。
トルソーに着せたコーディネイトは、プロダクツが持つ質実剛健さよりも、組み合わせの意外性が顧客を引き付ける。ジュリアンの普段の着こなしを提案しているかのようだ。2008年にオープンしてから、短期間で人気有名店となった最大の要因は、この店づくりの巧さだと想像する。
デニム、レザージャケット、ミリタリー系ガーメンツとヘリテージファッションの王道が揃うと、どうしても店内は重厚な雰囲気になってしまうはず。しかし、JINJIは明るく、人当たりのよい雰囲気を欠かさない。
カラフルなセレクトのINVERALANのニットは外からでもよく見える位置にディスプレイされている。重厚なブーツもあるが、ショーウインドーにはスニーカーがセットされる。カラフルなビーズアクセサリーの量も、店の雰囲気づくりに欠かせない。
「素材や製造のクオリティも、JINJIが選択する基準の一つ」
と頑なに誠実で生真面目な話を続け、その言葉に納得もするのだが、店もジュリアン自身もとても和やかなムードなのだ。他のヘリテージ系のストアとは一線を画す。ひと言でいえば「センスがいい」、それに尽きるのかもしれない。
JINJIおすすめの注目アイテムをピックアップ。
2023年春夏の目玉商品はオリジナルブランド「JINJI」のカスタムシャンブレーシャツ。1960年代のアメリカン・ヒッピーカルチャーをイメージしているが、すべて日本で作られているこだわりのクオリティ。各€270_
BIRKENSTOCKのスタンダードモデルBOSTONにビーズカスタムでカラフルなアクセントを加えた特別仕様。BIRKENSTOCKを購入すると、€35_の追加料金でこのスペシャルモデルに変身させてくれるのだ。
自社オリジナルブランドでは世界を快適に旅するための機能的でベーシックなアイテムを揃える。カラフルなイージーパンツはその代表。太畝のコーデュロイを使っている。フランス製。
こちらのモヘアニットもオリジナルブランド。ポップなカラーを剛健なミリタリーやレザーのジャケットに合わせるような組み合わせがJINJIらしさなのだ。その意外性がパリジャンに愛されている理由のひとつ。
【DATA】
JINJI
Tel.+33 1 42 96 92 57
https://jinji.fr
※情報は取材当時のものです。
(出典/「CLUTCH2023年4月号 Vol.90」)
Photo by Takashi Okabe 岡部隆志 Text by CLUTCH Magazine 編集部