(左)「PORTER CLASSIC」President・吉田玲雄さん、(右)美術監督・種田陽平さん
(吉田玲雄さん)1975年生まれ。東京都出身。高校を卒業後に渡米し、ロサンゼルスの大学で映画と写真を専攻。2006年にはハワイ島ホノカアで過ごした自身の経験談『ホノカアボーイ』を刊行。2007年にPORTER CLASSICを設立。
(種田陽平さん)日本を代表する美術監督。日本、中国、台湾、米国映画の他、展覧会、舞台などで活躍。作品固有の世界観の創造に定評があり、その活動より、2010年、芸術選奨文部科学大臣賞を、2011年には紫綬褒章を受けた。
わざわざ訪れる価値のあるレジェンドのフラッグシップストア。
数々の傑作バッグを輩出し、世界でのメイドインジャパンの価値を上げた功労者と言っても過言ではない吉田克幸氏。その集大成として、映画「ホノカアボーイ」の原作者でもあり、多岐に活躍する、息子の玲雄氏とともに07年にスタートしたのが、PORTER CLASSICだ。創業時より、克幸氏の思い入れの強い銀座に店舗を構えている。
そんな旗艦店が、昨年の12月にリニューアル。店内に入るとまるで映画の世界に踏み入れたような感覚を覚えた。それもそのはず、この店舗を手掛けたのは、日本屈指の美術監督である種田陽平氏。1996年に『スワロウテイル』(岩井俊二監督)で第20回日本アカデミー賞優秀美術賞を受賞し、2003年にハリウッド映画『キル・ビルVol.1』(クエンティン・タランティーノ監督)で米国美術監督協会の最優秀美術賞にノミネートされるなど、レジェンド的な人物。そんなレジェンドたちが組んだとなれば、普通の店舗デザインに終わるわけがないのである。この空間を作り上げた吉田玲雄氏と種田陽平氏にその秘話を聞いてみよう。
― お二人が知り合ったきっかけはなんだったのでしょうか?
玲雄/自分は映画が大好きなので種田さんの作品はもちろん知っていました。映画『キル・ビルVol.1』のクレジットで種田さんのお名を前拝見して「ハリウッドで、しかも第一線で活躍する日本人の方がいるんだ」と当時衝撃を受けました。初めてお会いしたのは、一昨年の11月ですね。
種田/今ネットフリックスで配信されている是枝裕和さんが総合演出している『舞妓さんちのまかないさん』の撮影中で、玲雄さんが京都まで来てくれたんです。
玲雄/種田さんが作る空間のクオリティに感銘を受けました。そのセットを観て、種田さんにお願いしたいと決心したんです。
― 種田さんは店舗デザインを手掛けることもあったんですか?
種田/実は経験はあまりなく、20年前に麻布のバーを、最近では友人が営む精肉店を手掛けたくらいで、アパレルは初めてでした。ただ玲雄さんも会長の克幸さんも大の映画好きだったので、イメージの共有はしやすかったですね。
玲雄/種田さんといろんな映画の話をしたり、私と父が船でヨーロッパを旅した時の映像を観てもらい、徐々にイメージを具現化して頂きました。
日本の職人技が詰まった大人のファンタジーな空間。
種田/普段の仕事でもそうなのですが、映画好きの人とやる時は、意思疎通がものすごく早いんです。逆に映画にそこまで興味がない人だと、イメージを共有するのが大変で(笑)。基本的に監督や作品の世界観に合わせて、空間を作るのですが、PORTER CLASSICというブランドは強烈な個性があるため、すぐに帆船というテーマが浮かんだんです。
― 種田さんに依頼しようと思ったきっかけは?
玲雄/コロナ禍になって、実店舗の意義を再考しました。ディスプレイの仕方に関して自分自身の力不足を感じていましたし、店舗内の表現を成長させたいという欲がありましたね。そんな時に「映画のセットを作る職人さんとPORTER CLASSIC を表現したらどうなるだろう?」と思ったのがきっかけです。出来上がったこの新店舗を見た時は、種田さんと映画界の職人さん方に作って頂けて、本当に良かったなと。
― 特に感銘を受けた部分はどこですか?
玲雄/あらためてメイドインジャパンの力強さを感じました。種田さんはじめ映画美術チームの皆さんが込めた細部へのこだわり、素晴らしいと思います。美しい技術力が結集した空間になっています。手作業で星空を描いたり、潮風を浴びたマストの経年表現や、壁色もトーンを微妙に変えることで奥行きを出したりと、語りきれないこだわりが随所につまっています。そういった部分でPCのモノ作りのコンセプトと、メイドインジャパンを含めて、非常に共鳴できる部分があったと思います。
種田/この空間を作るのにあたり、様々な映画で仕事をともにした職人さんの中から、この世界観に合う方を厳選して、チームを編成したんです。だからスタッフも楽しんで仕事をしてくれましたね。この空間を作る上でストーリー性も大切ですが、一番は服が主役であること。だから彼らにちゃんとスポットが当たるように、映画のセットとは異なるライティングにしています。
玲雄/種田さんのような巨匠の方が、どんなアイディアにも耳を向けて、そしてそれ以上のアイディアや表現で作り上げていくその過程が、とても勉強になりました。
種田/自分が洋服店に行った際に、なにか居心地が悪くて、すぐに出てしまう経験がありました。だからここは、ご来店してくれたお客様がゆっくりとできる空間にしたかったんです。大人のためのファンタジーな空間をうまく体現できたかと思います。
玲雄/今はECでどこでもいつでも買い物が楽しめる時代。だからこそ実店舗では、お客さまの心が動くような経験をして頂きたいです。店内のストーリーやこだわりを楽しんでもらいたいですね。
【DATA】
PORTER CLASSIC GINZA
Tel.03-3571-0099
https://porterclassic.com
※情報は取材当時のものです。
(出典/「CLUTCH2023年4月号 Vol.90」)
Photo by Takuya Furusue 古末拓也 Text by Shuhei Sato 佐藤周平
関連する記事
-
- 2024.11.22
宮城の名店「WOLF PACK(ウルフパック)」にファインクリーク専用フロアが登場!
-
- 2024.11.22
在庫数なんと600着!? 革ジャン買うなら、御殿場の「バーンストーマー」に決まり。