Mister FreedomとSugar Caneの出逢いから17年。Mister Freedomオーナーの クリストフ・ルアロンにその道のりを聞いた。

ロサンジェルスに拠点を置く、Mister FreedomとSugar Caneの出逢いは2005年。この両者のコラボレーションは今年で17年になる。信頼と尊敬で結ばれた両者が、いかにして出逢い、そしてお互いを高めあってきたかMister Freedomオーナーのクリストフ・ルアロンに回想を交えて語ってもらった。

Christophe Loiron

フランス生まれ、アメリカ在住。ハリウッドを代表するヴィンテージディーラーとしてMister Freedomを設立。ヴィンテージクロージングの販売だけでなく、ヴィンテージにアレンジを加えたオリジナルを展開した。2005年からスタートしたSugar Caneとのコラボレーション企画は、もはやMFSCとして確固たるブランドに成長を遂げた。英語、フランス語、日本語、スペイン語を流暢に使いこなすコミュニケーション力で、世界中に多くのファンを持つ。

リスペクトがすべて。

MFSCがブランドとしてすっかり定着した。MisterFreedom×SugarCaneのコラボレーションは、2007年の春夏コレクションで登場し、ヘリテージファッション業界で大きな話題となった。通常、コラボレーションというのは、単一のアイテムや、わずかなコレクションをダブルネームで展開する一過性のものが多い。しかし、この両者は期限のある展開ではなく、もう17年もこの取り組みを続けてきた。そこまで続けばコラボレーションというよりもブランドとして確立された。

「2005年だった。Sugar Caneの福富さんとトムさん(田中さん)が店にやってきて、少し話をしたね。もちろん、Sugar Caneは知っていたよ。その時、福富さんが着ていたワークコート、もちろんSugar Caneのワークコートだったね。それが素晴らしかった。すごく印象に残っている。それで、何か一緒に作ってみないか? って話になった。私はそのワークコートに心を奪わていたから、すぐ決めたんだよ」

Mister Freedomの名前でハリウッドにヴィンテージショップを持つ、アメリカ西海岸の有名ヴィンテージディーラー、クリストフ・ルアロンはSugar Caneとの出逢いをよく覚えていた。

「私はその当時、自分でプロダクツを作ることはしていなかった。ただし、ヴィンテージを自分でカスタムした商品を店では販売していた。全部自分でやっていたから、工場で生産するとか、パターンを引くとか、そういうことはなかった。それはSugar Caneがやってくれるのだから、私はデザインを考えることに徹することができた。お互いのリスペクト」

MFSC最初のシーズンとなった2007年春夏はデニムを1型。「7161 TYPE 1」と名付けられた、腿の外側にパッチポケットの付いた太めのアメリカ製デニムワークパンツだった。

「せっかくやるなら、なにか特別なデニムパンツにしたかった。誰も見たことがないような、でも、ヘリテージスタイルははずれないパンツを。ファーストシーズンは、話題にはしてもらえたけど、全てに手作業でステンシルしたのが大変だったね。でも、自分でデザインしたデニムだったから、出来上がったときは嬉しかった。そして、迎えた2008年春夏のセカンドシーズンは、ジャケット、パンツ、シャツとミリタリーテイストのコレクション」

いまでこそ、「パスポートもアメリカン(本人談)」となったクリストフだが、生まれも育ちもフランスだった。セカンドシーズンはフランス海軍のユニフォームをアイデアソースとした、アメリカンクラシックミリタリーを提案。このコレクションのインパクトは大きかった。MFSCの命運はセカンドコレクションで早くも決まったのかもしれない。

ただ、自分の着たいものを作り続けたい。

「日本で売れそうな、とか、アメリカで人気が出そうな、とか、そういうことは考えたことはない。決め手はひとつ。自分が着たいものを作る」

きっぱりと言い切るクリストフ。ヴィンテージやスタイルについては知っているけど、マーケティングの知識や経験はない。そんなことを考えるよりも、自分がいま、何を着たいかだけを純粋に考えるのがクリストフのポリシーだ。

「初期は私がデザインしたものをSugar Caneが日本で生産していた。最近は、ヴィンテージの生地や部材をアメリカで見つけて、提案することも多いし、アメリカの工場で作るアイテムも増えてきた。でも、ヴィンテージの生地を使うと、作れる量に制限が出てくる。マテリアルの数で生産できる数が決まってしまうから。それでいいと思う。Sugar Caneもそれでいいと言ってくれるよ」

確かに近年のMFSCはアメリカ製のプロダクツが多い。秋冬の代表的アイテムのひとつ、レザージャケットもアメリカ製。時には日本の生地をわざわざアメリカに送ってアメリカの工場で生産するものもある。

「私は、トレンドにはまったく興味がない。ヴィンテージやクラシックなスタイルだけ。そこは一貫している。ミリタリー、モーターサイクル、ワークとか、トレンドに惑わされることのないプロダクツ。それだけで17年続いているし、これからもそれは同じ。自分の中でも昔の映画を観たり、ヴィンテージに触れていると、着たいもの、作りたいもののアイデアがどんどん湧いてくる」

日本でローンチされたMFSCが世界中に広がっていくのに長い時間は必要なかった。もちろんそれはクリストフのお膝元、ハリウッドでも同じ。Mister Freedomにはハリウッドセレブも立ち寄る。そこでMFSCと出逢ったセレブたちが愛用しているのもこのブランドの特徴である。世界中のヘリテージファッション業界では知らない人がいないMFSCだが、コラボレーションという特殊なブランドである。いつまでの契約なのかが気になってしまった。

「じつはSugar Caneとはきちんとした契約なんてしてないんだ。期限もなければ、契約更新もない。そういう話もしたことがない。あるのは、Sugar Caneの福富さんとトムさんとの友情と信頼、それとリスペクトだけ。とてもいい仲間だよ。だって、契約に縛られたら、Mister Freedomじゃないだろ。尊敬できる仲間といろいろ話し合い、確かめ合いながら、最高のものづくりを楽しんでいるよ、今シーズンも大満足」

【DATA】
Mister Freedom
https://misterfreedom.com/

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/「CLUTCH2022年10月号 Vol.87」)

この記事を書いた人
CLUTCH Magazine 編集部
この記事を書いた人

CLUTCH Magazine 編集部

世界基準のカルチャーマガジン

日本と世界の架け橋として、国外での販路ももつスタイルカルチャーマガジン。本当に価値のあるモノ、海外記事を世界中から集めた、世界基準の魅力的コンテンツをお届けする。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

世界最高峰のニットメーカー「JOHN SMEDLEY」が編むもの。

  • 2026.10.20

イングランド中部、リーミルズの自社工場で240年以上前からニットウエアを作り続ける〈ジョン スメドレー〉。1784年に創業した同ブランドが編んできた歴史と伝統が息づく場所で彼らが編むものとは。 240年の伝統と魂が息づくファクトリー 英国のトラッドブランドとして群を抜く歴史を持つのが〈ジョン スメド...

ガレージ、インテリア、リフォームまで! 趣味人のための、物件案内。

  • 2020.01.20

好きなものと暮らす、理想の城を手に入れよう。 家は、ただ暮らすためだけの場所じゃない。 どこに住むか、どんな空間にするか、そこで何を楽しむか。 ガレージハウスやアメリカンハウス、趣味部屋、インテリア、リノベーションまで、 「Lightning」ならではの視点で趣味人の理想の住まいを紹介する。

#PR

「BEORMA」140年の伝統を受け継ぐ、英国屈指のレザークラフト

  • 2026.10.21

英国トラッドを語るうえで欠かすことのできない存在がレザークラフトだ。140年の歴史とクラフトマンシップを受け継ぎ、現代のスタイルにも馴染む唯一無二のプロダクトを生み出す〈べオーマ〉は、その筆頭となりうる存在だ。 熟練職人の魂宿る伝統のレザークラフト 英国中部の小さな町・ウォルソール。革加工・馬具産業...

HISTORY OF B.V.D. 着心地を追求した150年

  • 2026.10.20

1876年、ニューヨークで誕生したB.V.D.。風を通すゆったりとした肌着から、水着、街や休日を彩るシャツまで。その歩みを貫くのは、日々を心地よく過ごすための工夫だ。時代ごとの広告や製品を手がかりに、着心地を追求してきた150年をたどる。 HISTORY OF B.V.D. 1876年 ニューヨーク...

原毛から生地まで。一貫生産を守る英国生地の名門「ムーン」とは?

  • 2026.10.19

服を突き詰めていくと辿り着くのが生地。トラッド好きなら一度は耳にしたことがあるであろう英国の名門が「ムーン」だ。羊毛から紡績、染色、織布を一貫して行う英国最後の生地メーカーが誇る伝統のモノづくりに迫る。(写真は、生地の製造において重要な“織り”の工程。タテ糸とヨコ糸をゆっくりと交差させ、チェック柄が...

Pick Up おすすめ記事

【連載】ビートルズのことを考えない日は一日もなかった

  • 2024.02.05

80年代、私的ビートルズ物語。 ビートルズ研究と収集に勤しむビートルデイズを始めて早44年(Since1980)。 なにをするにもビートルズが基準だった『昭和40年男』編集長のビートルズ史を、 当時の出来事とともに振り返ります。

遊び心とヘビーデューティ! 「ジムマスター」のアウトドア&ミリタリー

  • 2026.10.18

ほどよく力の抜けたカジュアルウエアを展開するカナダ生まれの「ジムマスター」。その真骨頂は、実は骨太なアウトドア&ミリタリーにある。ヘビーデューティな機能美を日常着へと昇華させる秘訣は、「ジムマスター」らしいほんのすこしの遊び心! カラフルな配色の裏に確かな実用性あり! 【右】主役は厚手のボアジャケッ...

19世紀から英国紳士に愛され続ける世界最高峰のハンドメイド傘

  • 2026.10.19

年間を通じて降水頻度が高い英国において傘は必需品。ひいては英国紳士を象徴するプロダクトのひとつだ。その中でも、旧くから英国王室や上流階級の紳士たちに愛されてきたFOX UMBRELLAS(フォックス アンブレラズ)は最上級の存在である。 手作業から生まれる圧倒的な造形美 真のトラッド好きは服だけでな...

ガレージ、インテリア、リフォームまで! 趣味人のための、物件案内。

  • 2020.01.20

好きなものと暮らす、理想の城を手に入れよう。 家は、ただ暮らすためだけの場所じゃない。 どこに住むか、どんな空間にするか、そこで何を楽しむか。 ガレージハウスやアメリカンハウス、趣味部屋、インテリア、リノベーションまで、 「Lightning」ならではの視点で趣味人の理想の住まいを紹介する。

#PR

世界最高峰のニットメーカー「JOHN SMEDLEY」が編むもの。

  • 2026.10.20

イングランド中部、リーミルズの自社工場で240年以上前からニットウエアを作り続ける〈ジョン スメドレー〉。1784年に創業した同ブランドが編んできた歴史と伝統が息づく場所で彼らが編むものとは。 240年の伝統と魂が息づくファクトリー 英国のトラッドブランドとして群を抜く歴史を持つのが〈ジョン スメド...