新品の商品ではなく、実際にオーナーが履き込んだ一足を雑誌で大々的に取り上げるという手法は、CLUTCH Magazineをはじめ、私、松島が関わってきた雑誌(Lightning、別冊Lightningなど)ではお馴染み。
遡ること20年ほど前、ジーンズにしても、ブーツにしても、履き古したものを雑誌で大きく紹介するなんてことは、非常識ともいえる手法だった。しかし、長く愛されるべきプロダクツを掲載するとき、読者を唸らせるビジュアルは、誰かによって愛情を注がれたもの。それを見て、「俺も欲しい」以上の「俺も育ててみたい」という強い欲求を呼び起こすことができるはずと信じて、敢えて、使い込んだものを紹介する手法を多用してきた。
その後、他のメディアでも同様の手法が増えていったが、20年前は「誰もやっていない表現方法」として、トライした。デニムやレザーといった経年変化を語れるアイテムには最適な手法だといまでも信じている。革の表情やディテールなど見る人によって着眼点は違うかもしれないが、「俺も育てたい!」そんな気持ちになってもらえたら編集者としては狙い通りだ。
雑誌が、新しいものを紹介するだけのメディアだった時代は終わった。だからと言って雑誌の役割がなくなったとは思わない。いい意味で読者を「唆す」ことができれば、まだまだ雑誌が生きる道はある。
巻頭特集の話ばかりになってしまったが、今号は英国men’s fileとの合本特大号。2冊分の大ボリュームなので、通常号以上に楽しんでもらえるはず。
いま、この原稿をロンドンで書いているのだが、ヨーロッパでも大好評の一冊。men’s fileの編集長であるニック・クレメンツとも、刷り上がった雑誌を前に、お互いが担当したページについて、話し合ってきたところだ。今月の反省点は、「刷り部数が少なかった。もっと強気でよかったな」ということ。早くも在庫が少なくなって、海外の卸先に希望の数を供給できなくなっている。猛省。