ハーレーの命運を背負って誕生したソフテイル
1984年、新開発のOHVエンジン「エボリューション」を搭載し、まったく新しいモデルとして「FXSTソフテイル」がデビューした。これはハーレー社にとって、とても大きな挑戦だった。というのも、大資本であったAMF傘下から離れたばかりのハーレー社は経営破綻寸前の状態。それまでのハーレー社であれば新型エンジンだけでも十分な起爆剤といえたが、これをさらに新型モデルに搭載しようというのだからかなりのチャレンジだ。しかし、ソフテイルの開発チームは少人数で、わずかな予算しか与えられなかった。当時のハーレー社はそれだけひっ迫した状態だったのだろう。
このプロジェクトにあたって白羽の矢が立ったのが、カスタムビルダー、ビル・デイビスが1970年代に開発した「サブショック」。これはリアサスペンションのないリジッドフレーム時代のシンプルな造形を、リアショックを備えたうえで再現したもの。1957年に絶版となったため、80年代当時はすでにかなり旧いものだったが、カスタムシーンではシンプルな造形から重宝されていたのだ。とはいえリアショックがないために乗り心地は悪く、ソフテイルフレームはまさに当時のカスタム好きが熱望していたものだった。このライセンスを買い上げて誕生したのが、FXSTソフテイルというワケだ。
もともとカスタムシーンから誕生したフレームだけに、第1号車には本格チョッパーのスタイルが与えられた。するとコレが大ヒット。以降、ハーレー社はこのフレームを使ったバリエーションモデルを次々に発表し、現在へと続く基盤を築いた。いわばハーレー社の救った救世主なのである。
“チョッパー=リジッドフレーム”という概念をブチ壊した

1950年代から1970年代にかけて流行した「チョッパー」は、たいてい旧式で価格が安く、構造的にもカスタムしやすいリジッドフレーム車がベース。しかし、そのシンプル極まりないスタイルこそが美しいと評価は高かった。だが、リアショックをもたないため乗り心地が悪く、見た目と乗り味を両立したモデルが求められていた。そうして誕生したのがビル・デイビス氏による「サブショック(写真)」というワケだ。
1960年代のチョッパー

1984 FXSTソフテイル

サスペンションのないシンプルなリジッドフレームのシルエットを、リアショックを備えたうえで実現したのがカスタムビルダー、ビル・デイビス氏が開発し販売していたサブショックという社外フレーム。これに目をつけたハーレー社が、後にライセンスごと買い取って誕生したのが「FXSTソフテイル」というワケだ。1984年にチョッパーさながらのスタイルで登場するや、瞬く間に大ヒットした。
試作ソフテイルはサスがシート下に!!

ハーレー社はソフテイルを開発する際、およそ12種のプロトタイプを製作した。これはミルウォーキーにあるH-Dミュージアムに展示されているそのうちの1台で、シート下にリアショックを備えているのが特徴。外部からリアショックが見えてしまっている点や、シート下の馬蹄型のオイルタンク形状など、より“らしく見せる”うえでビル・デイビスが考案したサブショックは優れていたのだろう。

ソフテイルフレームは何が違う!?
リジッドフレーム風ながらサスペンションを備えているのが特徴で、“リジッド=ハードテイル”に対し、サスを備えて“ソフトなテイル”ということで「ソフテイル」の名がつけられた。リアショックを外側からまったく見えない位置に“隠す”ように配置し、スプリングが主張しないようフルカバードされている。


さまざまなバリエーションを追加し、さらに大ヒット!!
1984 FLSTヘリテイジ ソフテイル

ソフテイルフレームのシルエットを生かし、1950年代のハーレーを再現。チョッパーだけでなく純正スタイルにも違和感ないことを証明した。
1988 FXSTSスプリンガー ソフテイル

CADを駆使してスプリンガーフォークを再設計。油圧式ダンパーも備え、乗り心地まで追求しつつ、本格的チョッパースタイルを実現した。
1990 FLSTFファットボーイ

往年のハーレーらしいスタイルながらディッシュホイールなど、最新装備を組み合わせたカスタムモデル。初期型は爆撃機をイメージしていた。
2000 FXSTDソフテイル デュース

「ツインカム88B」エンジンに合わせて投入された新型。ストレッチタンクや丸みを帯びたフォークのアウターチューブなどで野暮ったさを排除。
(出典/「
text/T,Amemiya 雨宮武
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