元田敬三|1995年、路上(street)にて話しかけて撮らせてもらうスタイルで撮影をスタート。いまだ変わらず、主にフィルムカメラで撮影中。近年、ハーレーに乗りながら路上(road)にて気になる人や風景を発見したら急停車! カメラは人と出会うためのパスポートなのだ。
桐生は第2の故郷となった。
会いたい人に会うためにソフテイルに乗ることができるという幸せ。我が逗子市から群馬県桐生市までは200キロ程。目指すは「フリーライド」の二渡さんのところだ。茅ヶ崎から湘南バイパス〜圏央道〜東北道へと乗り継いで、3時間程で桐生に到着した。
桐生駅から続く商店街にフリーライドはある。ショップに到着すると、奥様が温かい珈琲で迎えてくださった。二渡さんと再会し、立ち話をしてワクワクしながら店内を物色。バイカーのために考え抜いて作られた洋服の数々。一点一点想いが込められていることがわかる。程なくして店内にディスプレイされていたショベルを店の外へ出してもらい撮影タイム。
アメリカからやって来たナローなショベルは文句なしの研ぎ澄まされた鉄の芸術だ。なんて美しいのだろうか! 人で例えるならスーパーモデルのよう! こんなのに乗ったら昇天してしまいそうだ。
撮影後、桐生の街をぶらぶら徒歩で散歩。若い子たちが営んでいる古着屋を数件回る。ここ数年、桐生はオシャレな若者に人気があるそうだ。
その後、サバゲーの銃を扱うお店、マウンテンパークを運営するお店。刺しゅう職人のお店とすべて二渡さんの知り合いばかり。日が沈むころ、後輩が経営するという珈琲屋さんでフルーティな珈琲をいただいた。2軒目は自社で製造するクラフトビールを。これが抜群に美味い! 3軒目の焼き鳥屋さんではゆっくりと話す。二渡さんがまだヤンチャだった若いころに警察にお世話になったことがあり、迎えに来てくれた親父さんがいっさい叱らずに黙ってお風呂を入れてくれた話がとても印象に残った。人を信用して許してあげることで、人は人を信用するようになるんだなぁ。これが二渡さんの真っ直ぐな人柄の原点なんだな、きっと。
お店を始めたころの貧乏時代の話や職人さんと出会ったころの話など、どれもワクワクして聞き入ってしまう話ばかり。少し酔ってきてさてそろそろ宿へ帰ろうかな、と思ったのだがそう簡単にはいかなかった!
4軒目は駄菓子BARでウィスキーのロックと駄菓子。5軒目は強風吹き荒れる中で温かいお酒を立ち飲み。どれも文句なしに美味しくて、店主が底抜けに明るい。なんて奥深いんだ桐生!
そろそろ泥酔というところで、最後はその日の宿「OKIYA」へ。夜も遅かったがオーナー夫婦が迎え入れてくれた。白ワインに〆のパスタが絶品だった! オーナーでアルゼンチン人のガブリエルさんがピアノを弾いてくれた。なんとも素敵すぎる夜をさらに盛り上げてくれた。
もとは芸者の置屋だったというOKIYAはとても落ち着いた雰囲気で歴史に想いを馳せることができる宿だ。結局、二渡さんもOKIYAに宿泊し、翌朝、ふたりで朝食をいただいて別れた。私にとって桐生は第2の故郷となり、二渡さんは憧れのお兄さんとなったのだった。
(出典/「CLUB HARLEY 2025年6月号」)
text&photo/K.Motoda 元田敬三
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