ジッパーフライを用いた歴史的なカウボーイジーンズ
今回ピックアップするのは、「リーバイス」の“501XX”、「ラングラー」の“11MWZ”と並び、名作アメリカンジーンズのひとつに挙げられる「リー」の“101Z”。“101ライダース”は、第2次世界大戦後にリリースされ、1970年代初頭に後継の“20
0”にバトンタッチするまで、主力ジーンズとして活躍した。50年代に俳優ジェームス・ディーンがプライベートで愛用していたこともあり、スタイリッシュなシルエットとジッパーフライの仕様が東海岸を中心に大ヒットし、大きなシェアを獲得した。
101は、よく比較される501XXのようにシルエットやディテールで製造された年代を見定めるのではなく内側のタグで判別する。大別すると、最初期の40年代は通称「センター赤」と呼ばれる赤いタグ、50年代前半は「センター黒」と呼ばれる黒ベースのタグ。その後、50年代後半からは「サイド黒」と呼ばれる、タグが縫い付けられた位置がセンターではなく、サイドにあるものだ。サイド黒は70年代初頭まで使われていたのだが、タグのデザインが異なり、「レジスターマーク」や「MR」の表記などでさらに細かい年代を判別することができる。
101ライダースといえば、前述したように戦後のイメージが強いが、実は1925年に発売された“101カウボーイ”から付けられた品番であり、今年で100周年を迎えた。ジーンズメーカーのイメージが強いリーだが、もともとは食品関係の卸売業からスタート。11年ごろよりワークウエアの自社製造をスタートし、“ユニオンオールズ”や“ウィジット”などのヒット作を輩出。ワークウエア市場で確固たる地位を築くと、次にカジュアルウエアへの進出を狙い、当時から西部劇などで人気を博し、いまも強きアメリカンアイコンのひとつである“カウボーイ”に特化したジーンズをリリースしたというわけだ。
リーはワークウエアとジーンズにいち早くジッパーを用いたメーカーでもあり、101においては27年ごろにジッパーフライ仕様をリリースしている。ジーンズがファッションとして定着した50年代の東海岸では、ジーンズならではのボタンフライに関して苦手意識をもつユーザーが多く、ジッパーフライを用いた101が若者たちから支持されたのだ。
カウボーイジーンズと銘打っているだけに、馬に乗ったときのことを考慮したディテールが数多く、それがバイク乗りにも便利だと旧くから愛用されてきた。まずは特徴的なバックポケット。馬の鞍に座っている状態でもアクセスしやすいように両端にポケットを配置している。他社製品はウエストサイズによってポケットの大きさも変えるが、リーは変更されないため、ウエストが大きくなればなるほどバックポケットが離れていき、個性的なバックスタイルとなる。ブーツを合わせることを前提したストレートシルエットに加えて、腰が露出しないように深めの股上になっているのも、ハーレー乗りと相性がよいところ。防縮加工を施した左綾デニムであることも大きな特徴であり、はけばはくほど柔らかくなり、縦落ちの強いエイジングが味わえるも醍醐味だ。一度でもはけば、名作と呼ばれる理由がよくわかるだろう。
Lee 101Z/77万円
名作101Zの貴重なデッドストック。サイズ表記の入らないタグのデザインから1960年代前半の個体だと判別できる。1940年代後半に101カウボーイから101ライダースに変更され、後継となる200が登場するまでフラッグシップモデルとして君臨。深めの股上でヒザ下からほとんど絞りがないストレートシルエットは、ブーツとの相性が抜群だ。
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