2ページ目 - 実走テストも敢行! ショベルヘッド・キャブレターテスト

【S&S Cycle Inc.】Super E Carburetor

アクセルを捻るとややタイムラグが生じることが要因で荒っぽい加速フィーリングに感じさせるS&SスーパーE。数値上では最大出力60.4㎰、トルク9.8㎏-mとなっているのだが、低回転域でのもたつきやツキの悪さ、トルクの細さが気になったのも正直なところ。ケーヒン・バタフライと似たような構造の固定ベンチュリーと加速ポンプを備えているゆえ、大きく劣るような箇所が見当たらないこのキャブだが、そのフィーリングの違いを感じさせる要因となったのは、やはりその口径の大きさの違いだろう。

90年に市販化が開始されたこのキャブは、もともとの開発コンセプトも「Bキャブ」と同じく1500~1600㏄以上の大排気量エンジンを想定しており、しかも、そもそもの設計がバキューム(エンジンが空気を吸う力)の強いチューン・ド・エボなどのハイレスポンスなマシンとの相性を考えたもの。ゆえにストック排気量のショベルのようにバキュームが弱いエンジンとのマッチングが劣るのは致し方ないだろう。

またこのキャブに起こる欠点のひとつに加速ポンプから噴射されたガソリンが霧化されにくいという点もあるのだが、これは47.6㎜という大口径ゆえの流速の低さが原因。しかもベンチュリー内でガソリンと空気がよく混ざる箇所とそうでない箇所があり、それが燃焼効率の低下を招いてしまうのも問題点。こうした点はキャブボディが長いスーパーBや、38㎜と口径の小さいケーヒン・バタフライだとショベルとよい相性となっている結果からも分かるだろう。バキュームの弱いストック排気量のショベルでは、スーパーEの構造だと、本来の性能を発揮できないのは明白である。あくまでも大排気量車向けに開発されたキャブレターということを認識した方が無難だ。

車体からキャブボディが飛び出すスーパーBに対して「ショーティ」の名前のとおり、短いバレルのダイキャストボディが特徴のスーパーEは、84年にプロトタイプが登場し、90年に市販化された。最高出力60.4㎰、トルク9.8㎏-mを誇るのだが、低回転域が弱点か。

【SUNDANCE ENTERPRISE INC.】Hi-Velocity Inner Venturi for S&S Super E

ノーマル排気量では吸気流速が遅く、アイドリングや低速時に不満が残るS&Sのショーティキャブに装着するために開発されたサンダンス製インナーベンチュリーは、シャシダイ上のデータでは最大出力で59.4ps、トルクで9.8kg-mという結果になったのだが、実際の乗り味はというと低中速域の安定性、加速性が明らかに向上。数値以上の吹きあがりのよさを感じることができた。

先に述べたとおり大口径のバタフライキャブは、バキュームの弱いストック排気量のショベルには不向き。しかし、これを少しでも補正し、口径を絞ることでバレル内のバキュームを安定させ、霧化を促進するこのパーツは、おそらく日本の市場の中で最も多く流通する社外キャブであろうスーパーEに対してかなり効果が高いといえるだろう。税込みで1万6500円という価格も魅力である。

RIVERA EngineeringSU Eliminator Ⅱ

キックでの始動性のよさや扱いやすさなど、一部で神話的にショベルとのマッチングのよさが語られるSUキャブだが、乗ったフィーリングは負圧キャブゆえのダルさが印象に残ったのが正直なところ。現存しない「リベラ」というメーカーだから酷評するわけではないのだが、ほかのキャブに比べてアドバンテージを感じないのも乗ってみて沸き起こった本音である。

実際、今回のテストでは数値的にも最大出力で58.5ps、トルク9.5kg-mというもので、スペック以上にレスポンスの悪さを感じたのだが、それをポジティブに表現すればジェントルな乗り心地といえばいいだろうか。負圧キャブゆえに期待できる燃費のよさや、多くの自動車メーカーが純正採用した扱いやすさが利点だろう。マイルドな吹け上がりを求めるなら、この選択はアリかもしれない。

(出典/「CLUB HARLEY 2025年6月号」)

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