
コラボの起こりと真髄についての考察

日本におけるコラボレーションの歴史を紐解きたいと考えた時―—。そもそもコラボレーションアイテムとは何であるかと改めて哲学してみる時―—。そのよすがとなるのはセレクトショップの存在である。
日本のセレクトショップ界の先陣を切ってきたシップスは、有限会社ミウラとして法人化し、シップスの前身となる「ミウラ&サンズ 渋谷店」をオープンした1975年から数えて、今年で50周年の節目を迎えている。さらなる起源を深掘ると、52年に東京・上野のアメ横で創業した「三浦商店」に行き着く。その後、70年には「ミウラ」と改名し、輸入カジュアル衣料の販売を開始している。アメカジやアメトラに代表される数々のインポートアイテムに身を焦がし、服への愛を貫いてきた人間からしてみれば、まさにレジェンダリーなポジションに位置づけられるのがシップスなのである。
そのシップスで社長を務めている原裕章さんに、ご自身がこれまでに体感してきたコラボレーション史を語っていただいた。
「大学1年生だった私は、79年に渋谷の「ミウラ&サンズ」でアルバイトとして働き始めました。なるべく午前中で授業は終わらせて(笑)、午後から毎日のようにお店に行っていましたね。当時は毎日商品の入荷があり、お店に届いた箱を開けるのが本当に楽しみで……。先輩たちも含めたスタッフの(未知なる服と触れる)高揚感。それをお客さんと直に熱く共有することができた時代です。その熱気がすごかったように思います。
まだまだインポートアイテム自体が珍しいものだった70年代末までは、海を越えて届いてくるシャツやパンツなどをそのまま着用するのが当たり前という風潮でした。それが80年代の初頭にもなってくると、日本の輸入代理店を通じたサイズ別注という流れが顕著になってきます。例えば、シャツの袖丈やパンツの裾丈をあらかじめ日本人仕様に変更してもらうといった感じです。
しかし、こうした仕様変更はコラボレーションというよりも別注というイメージが濃厚でしょう。『これこそ、コラボレーション!』といえるアイテムが登場してきたのは、時期的には80年代の中盤くらいからではないでしょうか。
『シップス』で例を挙げるなら、『コーギー』と組んでリリースしたニットが代表的です。これには前段があります。79年に“SHPS”のロゴが入ったオリジナルスウェットをリリースしていて、80〜81年にかけて爆発的に売れていました。その資産を活かすという発想のもと、私たちならではのインポートアイテムを提案しようと考えたのです。つまり、発想の時代順としては“インポートアイテムをそのまま提案する時代”から“サイズスペック”を別注する時代〟と続いて、次に訪れたのが“他では手に入らないコラボレーションアイテムで差異を表現する時代”です。
コラボレーションアイテムが生まれるようになったことで、ファッションの愉しみ方の幅が拡がり、奥行きが深くなったともいえるでしょう。セレクトショップは、そうした役割を果たしてきたと自負しています」。
確かに、時を経てセレクトショップの役割は深化を遂げたといえるだろう。想いが深くなっていったというべきか。自分たちがセレクトするブランドに対して、自分たちならではの熱い想いをぶつけるようになっていったのだ。その共演の舞台としてコラボレーションという枠組みが使われるようになっていった。
「私たちがセレクトしているブランドには、それぞれに歴史や生産背景、受け継がれてきた誇りや想いがあります。そうした想いに敬意を払いながら、私たちは私たちの想いをコラボレーションアイテムに注いでいくようになりました。そのようにして想いと想いが他では見られない特別な交わりを遂げているところに、コラボレーションアイテムならではの尽きない魅力があるのではないでしょうか」。
歴史ある英国製ニットとシップスの人気アイテムが見事に融合したように、コラボレーションアイテムにおいては通常ではありえないような革新性がもたらされる。この未知との遭遇がコラボレーションの真髄なのである。
【1970~80年代コラボ】コーギー × シップス
1893年に英国サウス・ウェールズで創業した歴史あるニットメーカー『コーギー』とのコラボが、シップスが手がけてきたコラボの最初期作だ。シップス50周年を迎えた今年、このアイテムは復刻を遂げている。
(出典/2nd 2025年11月号 Vol.214」)
Photo / Nanako Hidaka Text / KIyoto Kuniryo
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