ヴィンテージという伝統を継承する新基軸
そもそも“ヴィンテージ”とは、当たり前だが一朝一夕で完成するものではない。旧くから現在に至るまで受け継がれてきた技術や様式、つまりは“伝統”が詰まっており、かつそれが形として残っている貴重なもの。本当に価値のあるヴィンテージは、最新鋭のプロダクツよりも、ともすれば高品質だ。それゆえ永い時を経た今でも、もとい今だからこそ、ひときわ輝いて見える。その価値を信じる現代の作り手たちの一部は、いかにヴィンテージを「再現するか」によって、伝統の魅力を世に伝えようと尽力している。
一方で「ブラザーブリッジ」はまた少し違ったアプローチで伝統の継承を試みており、そのひとつが「モダンヴィンテージ」という同ブランドのコンセプトに表れている。
ヴィンテージシューズを知り尽くすディレクターの鈴木英明氏が生み出す革靴は、ヴィンテージの匂いが強く残っているものが多い。「ブラザーブリッジ」の主要モデルは、ほとんどがブーツであることも相まって、武骨なイメージを持つ人もいるだろう。
しかし、鈴木氏自身が上品なスタイルを好んでいることもあってか、ヴィンテージをそのままヴィンテージ然と作ることはほぼないと言っていい。その匂いは残しつつ、現代的なエレガンスも持ち合わせており、どのモデルも絶妙な塩梅が見事。ディレクターの鈴木氏に直接解説をいただいた。
「英国的なスノッブさを感じる[JUDSON]、同じく英国トラッドを地でいく[WINSTON]、『ブラザーブリッジ』のフラッグシップモデル[HENRY]、その兄弟モデルである短丈の[ALI]、そして1920年代ごろの競技用アスレチックシューズのユニークな仕様を搭載した新作[SPALDING]。これら5型は『クラフテッド アイコンズ』という『ブラザーブリッジ』の新たなコレクションに属しています。
素材に関しては、オランダのダッチカーフ。姫路にある老舗タンナーでクラシックな手法であるタンニン鞣しを行い、あえてオイルと染料のみで仕上げることで、ヴィンテージさながらの美しい経年変化を楽しむことができる素材となっています。これに加えて今後は、ピレネー山脈原産のカーフも混ぜていこうと考えているところです。過去から受け継がれてきた確かな技術を、今の暮らしに自然と溶け込む形で再構築する。そんな思いで生み出した新たなコレクションなんです」。
“モダンヴィンテージ”をコンセプトに作られた「クラフテッド アイコンズ」。未来のヴィンテージとなりうるこれらのプロダクツを介して、“伝統”を未来へと継承するのは、紛れもなく履き手となる我々である。



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(出典/2nd 2025年11月号 Vol.214」)
Photo/Kenichiro Higa Text/Shuhei Takano
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