3ページ目 - 「対象を透明なビニールに刷ることで、『透明化できないよ』ということを示したかった」|アーティスト・大岩美葉

──版を作るときは、木目がどのように出るかも想定しているのでしょうか?

そうですね。木の年輪を見ながら作っていきます。この年輪がいいから使おうとか。でも、それでもやっぱり板によって木目の出方が全然違って、面白いけど大変でした。燃やして削ってから初めて、木目が出るかどうかわかるんです。なので、まず版全部に下絵を書いて、残したい木目にガスバーナーを当てて、その部分を削るんですけど、その時にまったく木目の出ない版もあって。でもそれはそれでいいかなって。自分の意思が介入しない自然のものに、気付かされることもあります。

──今後の展望を教えてください。

6月からオランダに滞在します。ストリートアート的に、街に作品を置いていくようなこともしてみたいです。透明のシートに刷った作品は、都市の背景と混ざり合いながら存在できるので、生活の中にそっと入り込むような表現を模索していきたいです。作品を展示するだけじゃなく、日常の中に「置く」という形にも、もっと挑戦していきたいですね。

MIYOU|母のポートレートと対になっている、制作時の作者と自身を産んだ母の年齢を重ね合わせたリトグラフ作品

背中/手/足|2022年に制作された、祖父をモデルにした木版作品。老いを恐れず学ぶことを続け、いくつになってもそれを成長と呼び、皺さえも美しく見えたという晩年の祖父。その身体に刻まれ日々増えていく皺を、木の年輪と重ね合わせて木版で表現した。版画でインスタレーションを作りたいと考えていたという大岩さんは、この作品以降ブルーシートや透明シートに刷っている。それらは隠されているものを可視化し、社会で見えないことにされているものから目を逸らさせないことを表している
刻をまとう、或る日 |「オープンレター」(上北沢)で今年4月に開催された個展「刻をまとう、或る日」。一軒家を改装したこのギャラリーでの展示が念願だったという大岩さん。家をテーマに、祖母が胎児のように丸くなっている姿を、横6メートルの木版画で表現した
すくう手|水をすくう祖母の手をモデルにした作品。2枚の透明シートを重ねている。背景は青で木目を刷り、流れる水と手に浮かぶ血管を表現。天気の良い日には屋外に展示するなど、日によって見せ方を変えたそう

(出典/「2nd 2025年7月号 Vol.213」)

この記事を書いた人
2nd 編集部
この記事を書いた人

2nd 編集部

休日服を楽しむためのマガジン

もっと休日服を楽しみたい! そんなコンセプトをもとに身近でリアルなオトナのファッションを提案しています。トラッド、アイビー、アメカジ、ミリタリー、古着にアウトドア、カジュアルスタイルの楽しみ方をウンチクたっぷりにお届けします。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

奈良の名セレクトショップ「アンボイ」代表がおすすめする『ファインクリーク』のレザージャケット4選

  • 2026.03.06

奈良県にある名セレクトショップ、アンボイ。今回はその代表である今西さんに登場していただいた。ファインクリークのレザーウエアを扱い、シンプルながら奥深い着こなしを提案する今西さんのセンスは、多くのレザーファンに支持され、奈良以外の関西近県からも大勢のお客がアンボイに足を運ぶ。今西さんのファッション哲学...

101周年を迎えた「Lee」、受け継がれし伝統の『COWBOY 101』『RIDERS 101』を継承する逸品が登場。

  • 2026.03.05

1925年に生まれた「Lee COWBOY 101」は、48年に「Lee RIDERS 101」としてリニュアールを遂げ、その後も進化を遂げながら時代を超えて愛され続け、今年“101周年”という節目を迎えた。そして、この名作のまたとないアニバーサリーを記念して特別なコレクションが登場。「Past&F...

【Tricker’s × 2nd別注】英国の伝統と歴史が宿る質実剛健なカントリーブーツをネイビーで

  • 2026.03.18

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 革靴の名門「トリッカーズ」とのコラボが実現。ストウ ネイビーカーフ 革靴の聖地として名高い英国・ノーサンプトンにて1...

ヘビーデューティど真ん中! レトロなデイパックに注目。

  • 2026.01.26

1977年に発売された『ヘビーデューティの本』という名著をご存知だろうか。当時数々の雑誌で、イラスト・ルポ(自ら現地に赴いて取材した内容をイラストを用いながら報告すること)を描いていた小林泰彦さんが手掛けた1冊で、いまだファッション好きにとってのバイブルとなっている。ヘビーデューティとは、「耐久性が...

Pick Up おすすめ記事

奈良の名セレクトショップ「アンボイ」代表がおすすめする『ファインクリーク』のレザージャケット4選

  • 2026.03.06

奈良県にある名セレクトショップ、アンボイ。今回はその代表である今西さんに登場していただいた。ファインクリークのレザーウエアを扱い、シンプルながら奥深い着こなしを提案する今西さんのセンスは、多くのレザーファンに支持され、奈良以外の関西近県からも大勢のお客がアンボイに足を運ぶ。今西さんのファッション哲学...

【SETTLEMIER’S×2nd別注】メイドインポートランドの王道スタジャン登場

  • 2026.02.11

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! SETTLEMIER’S×2nd AWARD JACKET  1990年の創業以来、ポートランドの工場で今もなお地元...

【VAN×2nd別注】スポーティなレタードカーティガンでひと味違うアイビースタイルを。

  • 2026.02.03

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【VAN×2nd】トラックカーディガン[レタードワッペンセット] 日本にアイビーの礎を築いたブランド、「VAN(ヴァ...

【連載】ビートルズのことを考えない日は一日もなかった

  • 2024.02.05

80年代、私的ビートルズ物語。 ビートルズ研究と収集に勤しむビートルデイズを始めて早44年(Since1980)。 なにをするにもビートルズが基準だった『昭和40年男』編集長のビートルズ史を、 当時の出来事とともに振り返ります。

101周年を迎えた「Lee」、受け継がれし伝統の『COWBOY 101』『RIDERS 101』を継承する逸品が登場。

  • 2026.03.05

1925年に生まれた「Lee COWBOY 101」は、48年に「Lee RIDERS 101」としてリニュアールを遂げ、その後も進化を遂げながら時代を超えて愛され続け、今年“101周年”という節目を迎えた。そして、この名作のまたとないアニバーサリーを記念して特別なコレクションが登場。「Past&F...