野暮ったくて素敵なレギュラー古着的メガネ
昨今のメガネトレンドのキーワードはナード感のあるメガネ。「ダブルブリッジ」や「ティアドロップ」、「オーバル」などがその代表格とされ、いずれにも共通しているのは70〜90年代をルーツに持つシェイプだということだ。
我々にとって普段から馴染みのある古着で言い換えれば、ヴィンテージというよりもレギュラー古着みたいなもの。ゴリゴリのヴィンテージに比べて価格も手頃だし、よりデザイン性も高いし、トレンドとして挙げたようなイナたいメガネも多い。
そんな近年もののメガネを中心にヴィンテージアイウエアを多く取り扱っている横浜の隠れ家的名店「素敵眼鏡MICHIO」のミチオさんに、どんなメガネがトレンドのルーツになっているのか話を聞いたところ、どうやらふたつほどキーワードがありそうだ。伝わってくる当時のトレンド感、そしてメガネがファッションとして花開く黎明期のロマンに思いを馳せながらご覧あれ。
【教えてくれた人】素敵眼鏡MICHIOミチオさん
古着店に18年勤務後、「素敵眼鏡MICHIO」をオープン。アーティストをはじめ、コラボにも精力的に取り組む。好きな食べ物は「黄色いカレー」
70〜80年代のドイツヴィンテージ
ドイツのメガネと聞いて、どんなブランドを思い浮かべるだろうか。知名度の高い「カールツァイス」? メガネが好きな人なら「カザール」はご存知だろうか。ほかにも「マルヴィッツ」、「メッツラー」、「ローデンストック」など。これらは70〜80年代に日本に入ってきたドイツブランドだ。ドイツには光学ブランドも多く、「いいものを作る」というイメージもあった。MICHIOさん曰く「当時は『高級メガネ』とか『あつらえるもの』という立ち位置でした。政治家や作家がかけているような堅いイメージ。たとえば松本清張みたいな。雰囲気としては野暮ったいですよね」
(上から)Late 80s カールツァイス
テンプルに誇らしく“TITAN”と書いてあるが、80年代初期に日本がチタンフレームの製造に成功した直後のモデルで日本製。トップバーの独特な作りがクラシックな印象の「カールツァイス」。2万7500円
70s メッツラー
眉部分が平行で一層イナたい印象のブロウ型。当時主流であった新鋭のプラ素材“オプチル”ではなく、あえてアセテートを採用した「メッツラー」製。2万7500円
80s カールツァイス
「カールツァイス」のティアドロップ型。フロントはプラスチック、テンプルはメタルのコンビデザインも特徴。2万2000円
80s マルヴィッツ
メタルブロウタイプの「マルヴィッツ」は、眉部分はマットに、それ以外の箇所は光沢のある仕上がりで、こだわりが感じられる1本(参考商品)
高級ファッションブランドもの
おもに80年代、ドイツヴィンテージと並行して百貨店に並んでいたのは、高級なファッションブランドが手がけたメガネ。その先駆けであったのが「クリスチャン・ディオール」。そのほか「アルマーニ」、「ヴェルサーチ」、そして「ダンヒル」などが挙げられる。「見るからにドイツものよりもファッションっぽい雰囲気ですよね。2000年代ごろの話ですが、ヒップホップシーンを中心に、西洋文化に憧れた黒人たちが好んでいたイメージがあります。18金やバーレイと呼ばれる煌びやかな装飾が入るなど、ファッションブランドのメガネだけあって、華やかで魅力的ですよね」
(上から)Late 80s クリスチャンディオール
「クリスチャン・ディオール ムッシュ」というメンズラインよりレンズ横幅59mmの大ぶりなティアドロップ型。ブリッジのカッティングや、智の“CD”マークなど細かなデザインが効いた1本。3万3000円
90s ダンヒル
「ダンヒル」を象徴する飾り、バーレイがブリッジに配される。当時各ファッションブランドが新素材として打ち出していた“オプチル”を採用。4万4000円
Late 90s エンポリオ アルマーニ
オーバルの両端を縦にカットしたようなバレル(樽)型。「エンポリオ アルマーニ」のイタリア製。2万2000円
80s ダンヒル
ややスクエアなティアドロップは知的な印象も漂う。もちろん「ダンヒル」ならではのバーレイも、ブリッジとテンプル外側に大胆にあしらわれる。4万4000円
“バースコントロールグラス”を知っているか?
米国の近代ものに目を向けよう。「レイバン」以外で注目したいのが、「バースコントロールグラス(避妊グラス)」だ。米軍の官給品だが、ダサくてモテないという揶揄からそう呼ばれた。しかしこのイナたさ、まさに今かけたい風貌だ。
近年ものがたくさんある店!
1930年に建てられた横浜・日本大通りの「ジャパンエキスプレスビル」にあるメガネ店。年代不問のヴィンテージから新品まで幅広くセレクト。
【DATA】
素敵眼鏡MICHIO
神奈川県横浜市中区海岸通1-1-1
ジャパンエキスプレスビル 2F
TEL070-1430-3003
13:00〜19:00 水曜定休
(出典/「2nd 2025年7月号 Vol.213」)
Photo/Norihito Suzuki Text/Shuhei Takano
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