老舗ブランドのマフラーは、なぜこんなにも高いのか。

  • 2023.12.20

冬の防寒用としてだけではなく、カントリージェントルマンらしい風格を演出するアイテムでもあるマフラーやストール。かたや税込で5000円を切るものもあるなか、英国の老舗ブランド製だと7万円を超えるものもあり、どうやら価格とクオリティはピンキリのようだ。果たしてその違いはどこにあるのだろうか。1767年に創業し、ウールやカシミアに特化したテキスタイルを世界に輸出する〈ジョシュアエリス〉のCEOオリバー・プラッツ氏にその秘密を聞いた。

「柄出しの美しさこそが、ジョシュアエリスがもっとも得意とする技です」

マネジメントディレクターのオリバー・プラッツ氏。ロンドンにある老舗マフラーメーカーに、セールスマネージャーとして6年間在籍したのち、ヨークシャーにて〈ジョシュアエリス〉のディレクターに就任。2023年で7年目を迎える。

――まず、ジョシュアエリスはどんなブランドか教えてください。

1767年にイギリスのヨークシャーで創業した、英国最古の歴史を持つテキスタイル(繊維)メーカーです。イタリアやスコットランドに比べると小さなビジネスではありますが、歴史の深さとクオリティの高さでは世界トップクラスと言えるでしょう。数多くのビッグメゾンに生地を提供してきました。6〜7年前に、これまでのノウハウを活かし〈ジョシュアエリス〉ブランドとしてのスカーフコレクションを正式にスタートさせました。

――ずばり、ジョシュアエリスのマフラーは、なぜここまで高価なのですか? ほかのブランドとは違う特別な点があるのですか?

まず大前提として、先ほど言ったように〈ジョシュアエリス〉はテキスタイルメーカーです。もともとコートなど衣服の生地を作っていて、その延長線上としてマフラーを作り始めているのでマフラーの専業ブランドではありません。そんななか、世のマフラー需要が増えたことにより、マフラー専業ブランドが登場しはじめました。マフラー専業ブランドは、より多くの人に買ってもらうために「できるだけ軽く、柔らかくしてほしい」という顧客からの要望に応えようとします。

ここでちょっと専門的な「作り」の話になるのですが、マフラーにおいて柔らかさのカギを握るのは起毛感です。マフラーをはじめとして全ての織物は経糸(たていと)と緯糸(よこいと)から成っていますが、起毛しやすいのは緯糸で、マフラーにおいても起毛している糸の70%は緯糸なんです。だからこそ、「柔らかくしてほしい」という要望に応えるために、多くのメーカーはいかに緯糸に気を遣うかを考えます。さらに、「軽くしてほしい」という要望に応えようとすると、糸の織り具合を緩くしていくほかありません。しかし、そうすることによって、生地が伸びやすくなり、柄がブレてしまうのです。場合によっては、チェック柄なのにボーダー柄に見えてしまうことも……。特にチェック柄を得意とする我々にとって、それは御法度。ファッションとしての服地を作り続けているからこそ、見栄えに関するノウハウを我々は心得ていますし、代々守り続けてきたレシピもあります。我々は起毛させた時の柄の見え方まで考えて、起毛前の縮絨(しゅくじゅう)、つまり生地を縮める工程を行っているんです。

――なるほど。柔らかさや軽さを重視すると緯糸だけに気を配りがちだけど、柄のことを考えるなら、経糸にも気を使わないといけないんですね。

軽量化を否定しているわけではなく、それがなぜ重いのか、そのベースをしっかり分かっていないと軽量化したところで意味がないのです。きちんとしたベースがあってこその、軽量化ですから。〈ジョシュアエリス〉が特別な理由は、ほかにも様々な要因がありますが、他所と違ってずば抜けているのは、この「柄出しの美しさ」にあると思っています。実は僕は〈ジョシュアエリス〉に勤める前、有名なマフラーブランドに6年間いたのですが、そこでは「マフラーを軽くするなら、柄をある程度犠牲にしなくてはいけない」と思っていたんです。それが、〈ジョシュアエリス〉のマフラーを見て驚きました。こんなにも美しく柄を仕上げられるんだって。

――ウールやカシミアなどの素材が優れているのだとばかり思っていましたが、そんな裏の努力があったんですね。

そうは言っても、マフラーの仕上がりにおいて、ヤーン(糸)やフィニッシング(仕上げ)のクオリティも、先ほど説明した縮絨や起毛の話と同等かそれ以上に重要なことですし、もちろん我々も最古のテキスタイルメーカーとして気を配っているところです。最後になりますが、〈ジョシュアエリス〉は長い歴史に裏付けられた、しっかりとしたベースがあるからこそ、それらを崩さないこと、そして我々の魅力を分かっていただける方々に、地道にそのブランドの礎となるコンテンツを発信し続けることが重要だと思っています。コロナ以前は、なんとなく一生懸命やっていれば乗り越えられた時代でしたが、コロナ後は「どういうものづくりをしているか」以上に、「どういう考え方のもとでものづくりをしているか」を問われているように思います。基礎を崩さない範疇で、どれだけ幅を利かせられるか。それがこれからの課題ですね。

ジョシュアエリスの「特別な」マフラー3選

カシミヤストール チェック(グリーン)

ブラックウォッチを彷彿とさせるグリーン、チョコレートブラウンの配色にブラックを取り入れることで、ややモードな印象も受けるカシミア100%製ストール。シックなエレガンスの演出に最適。35×190cm42900

カシミヤストール ツイードチェック

あえて起毛を施さないことで柄を緻密に表現した、〈ジョシュアエリス〉らしいデザイン製に優れるVCシリーズ。使い始めは「ざらり」とした質感だが、使いこむうちに肌馴染みよく、柔らかくなっていくことから「育てる」感覚も味わえる。マニアックなマフラー好きからの評価が特に高い。30×180cm42900

カシミヤストール ヴァリアスチェック

同じくVCシリーズより、ベーシックなスタイリングに華やかさをプラスしてくれる一枚。ともすれば子供っぽく見えてしまう細かなタータン柄だが、ベースカラーをサファイアブルーとアクアという2色の組み合わせで作ることにより、単色よりも立体的で高級感が生まれる。デザイン性を重視する〈ジョシュアエリス〉ならではのこだわり。50×190cm68200

【DATA】
グリニッジ ショールーム
TEL03-57741662
https://showtell-online.com/collections/joshuaellis

LiLiCo

昭和45年女

人生を自分から楽しくするプロフェッショナル

LiLiCo

松島親方

CLUTCH Magazine, Lightning, 2nd(セカンド)

買い物番長

松島親方

モヒカン小川

Lightning, CLUTCH Magazine

革ジャンの伝道師

モヒカン小川

ランボルギーニ三浦

Lightning, CLUTCH Magazine

ヴィンテージ古着の目利き

ランボルギーニ三浦

ラーメン小池

Lightning

アメリカンカルチャー仕事人

ラーメン小池

上田カズキ

2nd(セカンド)

アメリカントラッド命

上田カズキ

パピー高野

2nd(セカンド)

断然革靴派

パピー高野

村上タクタ

ThunderVolt

おせっかいデジタル案内人

村上タクタ

竹部吉晃

昭和40年男, 昭和45年女

ビートルデイズな編集長

竹部吉晃

清水茂樹

趣味の文具箱

編集長兼文具バカ

清水茂樹

中川原 勝也

Dig-it

民俗と地域文化の案内人

中川原 勝也

金丸公貴

昭和50年男

スタンダードな昭和49年男

金丸公貴

岡部隆志

英国在住ファッション特派員

岡部隆志

おすぎ村

2nd(セカンド), Lightning, CLUTCH Magazine

ブランドディレクター

おすぎ村

2nd 編集部

2nd(セカンド)

休日服を楽しむためのマガジン

2nd 編集部

CLUTCH Magazine 編集部

CLUTCH Magazine

世界基準のカルチャーマガジン

CLUTCH Magazine 編集部

趣味の文具箱 編集部

趣味の文具箱

文房具の魅力を伝える季刊誌

趣味の文具箱 編集部

タンデムスタイル編集部

Dig-it

初心者にも優しいバイクの指南書

タンデムスタイル編集部

CLUB HARLEY 編集部

Dig-it, CLUB HARLEY

ハーレー好きのためのマガジン

CLUB HARLEY 編集部

昭和40年男 編集部

昭和40年男

1965年生まれの男たちのバイブル

昭和40年男 編集部

昭和45年女 編集部

昭和45年女

“昭和カルチャー”偏愛雑誌女子版

昭和45年女 編集部

昭和50年男 編集部

昭和50年男

昭和50年生まれの男性向け年齢限定マガジン

昭和50年男 編集部