僕らに「VAN」が教えてくれたこと。「ある程度のルールが男服には不可欠な時代だった」

和製アイビーの開祖・石津謙介氏の長男にして、1960年からは自身もVANに参画した石津祥介さん。第一次アイビーブーム真っ只中の1965年には渡米して現地のリアルなアイビーライフを切り取った写真集『TAKE IVY』の監修にも携わる。和製アイビーをひとつのムーブメントまで押し上げた立役者にして、ニッポンの男服を見守り続けてきた石津さんが、いま再びVANを語る。

石津祥介|1935年生まれ。和製アイビーの開祖・石津謙介氏の長男にして、1960年からは自身もVANに参画。1965年には盟友くろすとしゆき氏らとともに渡米し、現地のリアルなアイビーライフを切り取った写真集『TAKE IVY』の監修にも携わる

服に紐づく遊びと粋な所作の実践

創設者・石津謙介さんの右腕として1960年よりVANに参画し、第一次アイビーブーム真っ只中の1965年、かの名著『TAKE IVY』を手掛けたシーンの生き字引が振り返るアイビー、そしてVANとは?

「大学を辞め、服飾専門学校を経て、後に『メンズクラブ』となる雑誌『男の服飾』の編集者となりました。慶大在学中にアイビー・リーガースというサークルを立ち上げた、くろすさんと出会ったのも同誌の取材です。その後に私はVANに入社し、先の取材をきっかけに同誌でライターをしていた、くろすさんも引き入れました。とはいえ、何か大きなムーブメントを作ろうなんて気はなく、洋服好きな仲間たちと遊んでいただけ。今はそう思いますね」

仲間遊びの延長線上にVANがあった

60年代半ば、世は空前のアイビーブームを迎えた。感度に優れた学生たちが全身VANで身を固め、銀座の街を闊歩する中、そんな気配さえもあくまで客観視していたと石津さんは言う。

「ブームになろうと、じつはあまり気にしていませんでした。そもそも男服の原点は“団体服”。軍服などの制服にはじまり、ある程度のルールやマナーがある中でいかに他人との差異を楽しむか。それはアイビーもまた同様だったと思うのです。私たちが遊びの中で見つけたルールやマナーが、当時の気運にハマったのかもしれませんね」

石津さんがVANから学んだこと、そして表現し続けたこと、それは“遊び”という名の粋な男の所作だった。

「(VANの)服自体は100年以上前から変わらない、言わば“伝統服”ですし、とりわけ目新しいことなんて何もなかった。ただ、そんな服にまつわるライフスタイルを様々なイベントや広告を通して表現したからこそ、一時代を築けたと思うのです。つまり、服を通して遊び方を提案していた。それがVANだったのではないでしょうか」

(出典/「2nd 2023年11月号 Vol.199」

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