サインペインティングユニット「J&Sサインズ」としても注目された2人が来日!

2014年より活動を行っていたサインペインティングユニット「J&Sサインズ」としても注目されたアーティスト、ジェフリー・シンチチとジョシュ・ストーバーの2人がアメリカから展示のために初来日を果たした。現在はポートランドとサンフランシスコにそれぞれ拠点を置いて行う創作活動とは。

アーティスト、サインペインター ジェフリー・シンチチ|1990年生まれ、アメリカ・フロリダ州べレル出身。ジョシュ・ストーバーと同じくフロリダ大学の陶磁を専攻、美術学士号を取得する。2012年にレジーナブラウン研究奨励金を取得し、現在はポートランドからサンフランシスコへ移住。キルティング技法を用いて身の回りにある看板や日用品などをモチーフに作品制作を行う
アーティスト、サインペインター ジョシュ・ストーバー|1988年生まれ、アメリカ・フロリダ州セイントピーターズバーグ出身。2012年にフロリダ大学の美術学士号取得。専攻は陶磁。卒業後はジェフリー・シンチチとサインペインテイングユニット「J&S Signs」を2014年に結成。現在はポートランドで妻のレイチェルと看板ペイント&デザインのスタジオ「Variety Shop」を経営

「身の回りにあるものや日頃見ているものから作品に繋げていくのが好きなんだ」

東京では2度目となったパシフィカコレクティブス主催の2人展『Thank you for shopping』が6月に開催された。空間を活かした遊び心のあるレイアウトが印象的

去る6月9日から、約2週間にわたって東京で開催された、アメリカのアーティスト、ジェフリー・シンチチとジョシュ・ストーバーの2人展『Thank you for shopping』。大学のクラスメイトであり、サインペインティングアーティストとしても、ともに活動した両名が現在行うそれぞれの制作活動とは。初来日を果たした2人に直接伺うことができた。

——日本には初めてあなた方を知る人も多いと思います。まずはじめに軽く自己紹介を。

ジョシュ・ストーバー(以下ジョシュ) オレゴン州のポートランドで、ペインターやサインペインターとして活動しています。

ジェフリー・シンチチ(以下、ジェフリー) アーティストとしてサンフランシスコで活動しています。あとジョシュと同じくサインペインターとしても。

「手作りの看板、歴史ある建築、何気ない風景すべて僕にとって興味をそそるもの」

——自身の作品のスタイルを教えてください。

ジョシュ 静物画をメインに描いているんだけど、ただ単にその場の風景を描くんじゃなくて、遊び心やユーモアたっぷりに抽象的に見せるのが好きかな。曲線の形やその反復はヴィンテージサインからの影響が大きいと思うし、グラフィックの陰影や線は大好きなミッドセンチュリーの雰囲気を持っていると思う。とにかく、あるものを異なる形や違った視点で見せることが好きなんだ。

ジェフリー 僕は街で何気なく見かけるものや自分の生活と切っても切り離せない風景に目を向けて、それをアイデアソースにキルティングを使って抽象的な作品を作っている。手作りの看板、建築物、長い歴史を持つ店構え、その他、人間が手を加えた場所などは、すべて僕にとって興味をそそるものなんだ。キルトには、それを作った人の痕跡があり、それぞれにユニークなもの。キルティングの技法は、そこに制限が生まれてくるから、デザインをする時にどれだけモチーフを単純化できるかが重要なんだ。

ジョシュ お互いの作品に共通して言えることは、身の回りにあるものや日頃から見ているもので、作品に繋がってくるものを、出来るだけ単純化するところだと思う。その共通点があるから、このように2人の作品を並べても、ある程度の統一感が保てている。

——どういった経緯で今のスタイルに辿り着いた?

ジェフリー 僕らは同じ学校に通っていたんだ。当時は2人とも陶磁を専攻していて。その頃から同じものに興味があったし、2人ともフォークアートに影響を受けて、そんなものばっかり作っていたよ。フォークアートはとてもシンプルで単純化されたものが多いんだ。

ジョシュ 当時はお互いレタリングや文字を主に描いていたよね。

ジェフリー あと陶器にキルトを貼ってみたりね! “セラミックキルト”って勝手に呼んでたり。

ジョシュ 大学に入ってからは、バリー・マギーやマーガレット・キルガレンの作品と出会って、大きな影響を受けた。それからスティーブ・パワーズにも。それもあって、壁に絵を描くことやサインペインティングにも興味を持って、今の作風に繋がると思う。

ジェフリー 僕は単純にレタリングの勉強をしたかったのが大きいかな。それも2人で一緒に勉強してたよね。ジョシュはイラストレーションを得意としていたし、僕はレタリングが得意だったから、それぞれの強みが違うというところも、お互い高め合いながら制作ができた、いい要因になったんだと思うんだ。

ジョシュ 大学を卒業して、一緒に地元のフロリダに戻ったんだけど、そこに自分たちの陶芸スタジオを持つことは難しかった。どうしたら自分たちの制作意欲を満たせるかと考えていたら、ジェフリーから「コンビニの壁に無償で絵を描かせてもらえないか」って聞いてみるのはどうかという提案があって、最初は何軒か無償で壁に絵を描き始めたんだ。ただただ、2人の溢れる制作意欲を満たすためにね。壁にはポジティブな言葉を使って、サインペインティングをした。そんなことをしていたら、仕事として依頼が入るようになったんだ。

ジェフリー その頃(2013〜2014年)、アメリカではサインペインティングがまた脚光を浴びるようになっていたからね。

身の回りの風景や看板、日用品などをモチーフにしてキルティング技法を取り入れたジェフリー・シンチチの作品はどこかフォークアートのようなぬくもりを感じる。「キルトには、それを作った人の痕跡があり、それぞれにユニークなもの。どれだけモチーフを単純化できるかが重要なんだ」

「ただ単にその場の風景を描くんじゃなくて、違った目線で見せることが好き」

——2人でサインペインティングのユニット「J&Sサインズ」を始めたのもこの頃ですよね。

ジョシュ 2014年だね。ビジネスとしてもすごく良かった。それにサインペインティングは公共の場に存在するという前提があるから、いつでも自分の作品を見ることができる。陶器だと作って販売したら、なかなか自分の作品を見ることはできないからね。

ジェフリー 単純に屋外で制作するというところも良かったと思うんだ。当初からメニューボードなど室内で制作するんじゃなくて、外壁に描いていたから、常に屋外で制作をする。その環境がすごく良かった。

ジョシュ すごく楽しかったよね! アーティストとして活動を始めた頃は何もかもが新鮮で楽しいけど、それがクリエイティブなものではなくて、仕事になってしまうことが多い。だから、僕らもサインペンティング以外で制作意欲を満たすために、それぞれが別の方法で作品を作り始めるようになったんだと思う。

ジョシュ ジェフリーはすでに2020年頃からキルトを使った作品の展示をしていたよね。

ジェフリー 最初は本当に趣味だったんだけどね。

ジョシュ 僕は全くペインティングといったものをやったことがなかった。パンデミック中に、サインペインティングの仕事がほぼなくなって、なんとかして自分の制作意欲を満たしたかった。ちょうど妻が絵の具や筆を持っていたということもあって、絵を描き始めたんだ。そんなとき、ジェフリーはキルトの作品を作り続けていた。出来上がった作品をインスタグラムに投稿してみたら、ポートランドにあるギャラリーから連絡が入ったんだ。それが、2人で初めて行う展示のきっかけになったんだ。それから、2022年には日本のパシフィカコレクティブスの貴島さんから連絡をもらって、初めて日本で2人展を開催した。今年も貴島さんが主催で2度目の展示と初来日もすることができたんだ。

——最後に、今後の活動予定やアーティストとしてのこれからの展望を教えてください。

ジョシュ 僕は妻と一緒にサインペンティングの仕事をやっているけど、アーティストとしてもっと展示やプロジェクトに関わっていきたいと思っている。特に、自分がワクワクするものをどんどんやっていきたい。サインペインターとしてではなく、これからはアーティストとしての仕事にもっとトライしていきたいね。

ジェフリー ここ数年、やりたいと思っていることを制作できる環境があることにとても感謝している。そして、それを今も続けていられるという現状にもね。ただ、まだアーティストとして、入ってくる仕事に全てイエスと言わなければならない状況だから、もう少し余裕のある形でやっていきたいな。でも、このような展示が行えることが夢だったんだよね。だから、これが続いていくことが自分にとってはゴール!

アールデコデザインやヴィンテージの看板などに影響を受けたというジョシュ・ストーバのペインティングはどこか小さな喫茶店の壁に飾ってありそうなノスタルジックさがある。「お互いの作品に共通して言えることは、身の回りにあるものや日頃から見ているもので、作品に繋がってくるものを、出来るだけ単純化するところだと思う」

ジョシュ もっと海外で展示ができたらいいよね。旅をすることがこんなに楽しんだって、初めて日本に来て思った。人や作品との新しい出会いが嬉しいんだ。次回は、サンフランシスコにあるパークライフっていうギャラリー兼ショップで個展をやるよ。今のところ、8月か9月の予定。

ジェフリー 僕はサンフランシスコにある小さいコーヒーショップで個展をやる予定。昔からあるコーヒーショップだから、雰囲気も含めてすごく楽しみにしている。

『Thank you for shopping』終始ハッピーな空気に包まれた、初来日の2人展。

日本では約2年ぶり、2度目の開催となった2人展。パンデミックも終息した今回はついにアーティスト本人も初来日を果たし、インディペンデントなフードショップが出店するなど、会期中は和やかなムードが流れた。

イベントを彩ったフードショップには、下北沢の大人気パン屋「カイソ」やタコス屋「タンゴ」が出店。アメリカンインディー感満点のフードも展示の雰囲気にピタリとマッチ。

展示の主催である九段下のインテリアショップ「パシフィカコレクティブス」謹製のオリジナルラグ(各1万9800円)やプリントTシャツ(各5500円) は現在もウエブで販売中!https://pacificacollectives.shop/

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/「2nd 2023年9月号 Vol.198」

この記事を書いた人
2nd 編集部
この記事を書いた人

2nd 編集部

休日服を楽しむためのマガジン

もっと休日服を楽しみたい! そんなコンセプトをもとに身近でリアルなオトナのファッションを提案しています。トラッド、アイビー、アメカジ、ミリタリー、古着にアウトドア、カジュアルスタイルの楽しみ方をウンチクたっぷりにお届けします。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

映画で観た欧米のクラシックな世界観をモダンに昇華。“好き”が詰まった空間で暮らす!

  • 2025.12.30

衣食住は、私たちが生活するうえで必要不可欠な要素である。なかでも日々の生活と最も密接に結びつく住居には、ひと際こだわりたいもの。自分のお気に入りの空間を作るための選択肢のひとつに、リノベーションがある。 “三人四脚”で作り上げた理想の居住空間 兵庫県芦屋市。豊かな自然と落ち着きのある街並みから関西で...

オリジナル建材で古民家をスタイリッシュにリニューアル! ビフォーアフターを大公開!!

  • 2025.12.28

2025 年の夏の時点では床だけが施工されただけの古民家を再び訪れると、当時とはまったく違う姿になっていた。カントリーベースはこの家にどんな魔法をかけたのか? 何でもない空き家が宝物なる材料と技術 [caption id="attachment_887933" align="alignnone" w...

こんなコスパのライダース、見たことある? 「中田商店」のオリジナルブランドのライダースを侮るなかれ!

  • 2025.12.29

東京・上野にある老舗ショップ、中田商店。そのオリジナルブランドが「モーガン・メンフィスベル」だ。中田商店というと、ミリタリーのイメージが強いが、モーガン・メンフィスベルでは、ミリタリーをはじめ、様々なレザーウエアを展開している。もちろん、ライダースのラインナップも豊富。今回は珠玉のライダースを紹介す...

「ORGUEIL」が提案する、凛冬を彩る大人のガーメンツ。

  • 2025.12.26

凛とした寒さが日に日に増し、コーディネートが重くなりがちな季節。クラシックなデザインと丁寧な作り込みのORGUEILのクロージングが、いつものスタイルを格上げしてくれる。さりげなく上質で存在感のある一着が、冬の日々を彩ってくれるはずだ。 Aniline Steer Oil A-1 Jacket 19...

上質な馬革をシンプルに愉しむ。石炭(COAL)を運ぶために使われていたコールバッグという選択肢

  • 2025.12.27

きめ細かく美しい銀面を持つことで知られる馬革。軽くて強靭、上品な質感、そして使うほどに味わい深い経年変化で、多くのレザーファンたちを魅了し続けてきた。そんな馬革をシンプルに愉しませてくれるのがINCEPTIONのコールバッグだ。 ヴィンテージをベースに、実用性を加味し再構築。 19世紀末から20世紀...

Pick Up おすすめ記事

「ORGUEIL」が提案する、凛冬を彩る大人のガーメンツ。

  • 2025.12.26

凛とした寒さが日に日に増し、コーディネートが重くなりがちな季節。クラシックなデザインと丁寧な作り込みのORGUEILのクロージングが、いつものスタイルを格上げしてくれる。さりげなく上質で存在感のある一着が、冬の日々を彩ってくれるはずだ。 Aniline Steer Oil A-1 Jacket 19...

デニム界の異端児・ラングラー、製造期間は約1年のみの“幻の名作”がついに復刻

  • 2025.12.27

ロデオ・ベンをデザイナーに迎えてカジュアルウエアに参入したという歴史やカウボーイカルチャーとの結びつきなど、独自の発展を遂げてきたラングラー。膨大なアーカイブの中から、王道から希少な隠れ名作まで全6型が復刻を果たした。 幻の名作が華麗なる復刻を遂げた。 アメリカ三大デニムブランドのなかでも特異な歴史...

アメリカンヴィンテージやヨーロッパのアンティーク品や建築物からインスパイアされた「ホリゾンブルー」のジュエリー

  • 2025.12.28

宝飾品と呼ぶべき繊細で美しいジュエリーを世に送り出し、国内外で人気を集めるHorizon Blue Jewelry。アメリカンヴィンテージだけでなく、ヨーロッパのアンティーク品や建築物など様々なものからインスパイアされた逸品は、大量生産できないため入手機会の少ない希少な存在だが、ここでは今後発売する...

【UNIVERSAL OVERALL × 2nd別注】ワークとトラッドが融合した唯一無二のカバーオール登場

  • 2025.11.25

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【UNIVERSAL OVERALL × 2nd】パッチワークマドラスカバーオール アメリカ・シカゴ発のリアルワーク...

映画で観た欧米のクラシックな世界観をモダンに昇華。“好き”が詰まった空間で暮らす!

  • 2025.12.30

衣食住は、私たちが生活するうえで必要不可欠な要素である。なかでも日々の生活と最も密接に結びつく住居には、ひと際こだわりたいもの。自分のお気に入りの空間を作るための選択肢のひとつに、リノベーションがある。 “三人四脚”で作り上げた理想の居住空間 兵庫県芦屋市。豊かな自然と落ち着きのある街並みから関西で...