機能にこだわり続けた先に生まれた唯一無二の1本。
万年筆と言えばモンブラン。世界中の好事家がそう認識してるはずだ。持ちやすく、威厳に満ちたペンは、じつに100年以上に渡って各国の要人や文化人たちを魅了してきた。ただその理由は造形的な美しさに起因する、プレステージ性の高さだけによるものではない。純粋に万年筆としての機能、つまり“書きやすさ”に並々ならぬこだわりを持っているのだ。
その結実とも言えるのがこの“ビスポークニブ”サービス。ニブとはペン先のこと。そしてこのニブこそが書き心地を左右する要となる。実は人には固有の書きグセが存在する。つまり最適なニブの形状は一人一人異なるのだ。
そこで同社は書きグセを診断する独自のシステムを開発。各人の最適なニブ形状を診断した上で、好みの書き味や使用用途などに合わせて、本国ドイツの職人が一点一点手作業で、自分だけのニブを創り出してくれるサービスを展開しているのだ。生涯愛せる筆記具を探し求める人は、ぜひ体感してもらいたい。
固有のクセ、「フィフス・エレメント」を測定し、最適なペン先を診断。
日本で同サービスを常時実施しているのは 銀座本店のみ。まずは同店のスタッフが各人の万年筆の愛用歴や好みの書き味、用途などをヒヤリング(ビスポークニブを搭載するベースモデルを選んでからでもOK)。
それを踏まえて独自開発したソフトウェアと、トランスミッター付きの特殊な万年筆を使って例文を書き、固有の書きグセ“フィフス・エレメント(筆圧、筆記速度、傾斜角度、回転角度、振幅角度)”を解析。
既存の8種類のニブから(E=極細、F=細字、M=中字、B=太字、BB=極太、OM=傾斜中字、OB=傾斜太字、OBB=傾斜極太)、最適なニブを診断してくれる。さらにその診断結果をもとに、スタッフが目を光らせるなかで様々なニブの試し書きを繰り返し、システムでは判別できないクセも見抜きつつ、ユーザーの好みも加味して、本国ドイツの職人の元に送る仕様書が作成される。
独自の筆記診断システムと熟練マイスターの至高の技で創り上げる。
先端技術と専門スタッフが共同で導き出した最適なニブ形状が、仕様書となって本国に届いた後は、熟練マイスターたちの出番。わずかな形の変化で書き味がまったく異なってしまう極小のニブを、オーダー通りに仕上げるためには、とてつもない技量が求められる。
とくに高速回転する研磨機にあてがう工程は至難の業。相応のノウハウを有した職人しか担当することができない。成形し、磨き上げた後もテスターが幾度も試し書きし、綿密にチェックが行われ、ようやく完成となる。
納期は大体約3か月。下の写真で“Bespoke nib”と記されている通り、ペン先の側面に任意の文字を刻印できるのは同サービスの特権だ。書き味に満足できない場合もニブの再調整が可能。
万年筆の本体価格は上/15万2900円、下/12万6500円。ビスポークニブの費用は万年筆の本体価格にプラスして20万1300円。
【DATA】
モンブラン 銀座本店
東京都中央区銀座7-9-11 モンブランGINZA Bldg1F~3F
TEL03-5568-8881
営業/10:00~20:00
休み/不定休
※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。
(出典/「2nd 2023年2月号 Vol.191」)
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